「男のプライド、女の愛」よみがえるブルース 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 男のプライド、女の愛

2025年9月23日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1961年。ジョン・カサヴェテス監督。売れないジャズバンドを率いる男は、自身の音楽に自信とプライドをもち、妥協せずに音楽活動を続けている。マネージャーともけんか腰に交渉しているが、ある日、マネージャーが連れていたシンガーの卵の女性に惚れてしまい、、、という話。
たしかに、現代的な価値基準で見ると、冒頭から男(たち)は音楽にも人間関係にも自信満々で、女は音楽にも人間関係にもおどおどしている、という前提の描き方には問題がある。男がプライドを守るために次々に犠牲者(主に女)をつくっていったり、女が守ってくれる男を求めて身体を提供したり結婚を求めたり、という展開も大いに議論になるだろう。しかし、音楽業界や人間関係に(つまり社会に)理想を求めてもがく(そして失敗する)男の姿は素直に胸を打つし、男にすがるしかない社会で感情を失ってしまう女の(無)表情も胸を打つ。映画は価値感で判断するものではなく、胸を打つその強度で判断するものだとすれば、とてもすばらしい映画だといえる。胸を打つその強度が悲しみ(ブルース)であるとすればなおさら。

文字読み