劇場公開日 1990年12月7日

「真のチャンピオンとは何か。それはこれを見ればわかる。」ロッキー5 最後のドラマ 夢見る電気羊さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5真のチャンピオンとは何か。それはこれを見ればわかる。

2018年3月11日
iPhoneアプリから投稿

3,4とエンタメ要素の強いシリーズが来て、最後の締めはやはり原点回帰のドラマ中心である。
とはいえ、過去タイトル以上にヒール役はヒールに徹していて、決してエンタメをサボっているわけではないのだが。やはり、往年の王道展開であるトレーニングして強敵と戦う、という展開ではないところに低評価が集まるのかもしれない。
しかし、この作品はシリーズとしての魅力は十分にある。まずはロッキーが本当に失ってはいけないものに気づく過程のプロセスが非常によくできている。財産も、ボクサーとしての体も、住んでいた家も街も失い、どん底の状態になる。
それを取り戻そうとトミーのマネージャーになるも、それが家族を犠牲にして獲得した自己満足に過ぎなかったことに気がつく。家族のためと言いながらも、自分のかつてと栄光を忘れられなくてやっていたのだ。
家族、そして自分を見つめなおし、彼は人生において大事なものを手に入れる。そして、真のチャンピオンとして皆に讃えられながら、この作品の幕は一旦閉じる。これ以上綺麗なラストはないと言える。
この作品のテーマは真のチャンピオンとは何かということ。これに尽きると思う。戦いに勝つことだけがチャンピオンなのではない。困難に打ち勝ち、自分の中の恐怖、未熟さ、愚かさ、その全てに打ち勝つことこそが真のチャンピオン足り得るのであり、それこそが感動を与えるチャンピオンなのだ。真のチャンピオンとは我々に戦う勇気を与えてくれ、魂を揺さぶってくれる人のことを言う。それがロッキーだ。
不屈の闘志、強敵に挑む勇気、困難に打ち勝つ努力、その様々な要素を多分に含みつつも、エンタメ的な要素が手を抜かれていない。これほどの映画は他に多くはない。シリーズ通して全て傑作であり、これからもずっと語り継がれる名作となっていくことは間違いない。

夢見る電気羊