劇場公開日 2016年5月21日

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「台湾ニューシネマの登場」恋恋風塵 バラージさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 台湾ニューシネマの登場

2025年10月5日
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鑑賞方法:映画館

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ホウ・シャオシェン監督の自伝的四部作(『風櫃(フンクイ)の少年』『冬冬(トントン)の夏休み』『童年往事 時の流れ』)の最終作となる青春映画で、1960年代に台湾の山村で育ち、共に中卒で大都会・台北に出て就職した幼なじみの少年と少女の淡い恋が切ない別れに終わるまでを描いている。初めて観たホウ・シャオシェン映画で、劇場公開時に映画館で観た。僕が大学に入り故郷を離れて一人暮らしを始め、映画館で幅広く映画を観始めた年のことです。

この頃のホウ監督の映画はいわゆる1シーン1ショットの長回しで、音楽は無く台詞も少ない上に俳優の話し声が小さいという静謐な印象の映画のため、観る側にある種の集中力を要求するタイプの映画だったが、台湾にはこういう映画もあるんだと鮮烈な印象を受けた。それまで台湾映画といえばジャッキーがゲスト出演した『ドラゴン特攻隊』とか、テンテンちゃんのキョンシー映画『幽幻道士』のイメージしかなかったもんで。当時、中国のチャン・イーモウと共に中華圏映画のニューウェーブとして非常に鮮烈な印象だった。

素人っぽく見える俳優を多く使っていたのも印象的で、今になってみるとネオ・レアリズモっぽい。特にこの頃のホウ・シャオシェン映画のミューズだったシン・シューフェン(辛樹芬)は、ホウが前作『童年往事 時の流れ』のヒロインを探してる際に街で見かけてスカウトしたという本当の素人だったんだよなあ。これが2作目ですが、まだまだ素人っぽさを良い意味で多大に残してました。

バラージ