「エドガー・アラン・ポーの世界を彷彿とさせる世界観に取り込まれる。」レベッカ(1940) とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
エドガー・アラン・ポーの世界を彷彿とさせる世界観に取り込まれる。
フラグが一杯。
目くらましのフラグ。
一転目の事柄につながるフラグ。
ラストにつながるフラグ。
そのフラグも、結末を知らないで鑑賞するときと、知ってから鑑賞するときの意味付けが変わる。
「ほう、職人技だのぉ」と唸りたくなる。
最初はロマンスから始まる。
上流階級が集うゴージャスな世界。そこに紛れ込んだ庶民。
ゴージャスな世界への憧れと皮肉。庶民がいることで共感しやすくなる。
あれよあれよという間の、おとぎ話、ハーレクインロマンスの成就。
そして、重厚かつオドロオドロシイお屋敷。
女フランケンシュタインが牛耳る世界。
めでたしめでたしで終わったおとぎ話の続きが幕を開ける。
眼前に立ちはだかる前妻レベッカ。庶民のコンプレックスを煽り、追いつめられるヒロイン。
昼メロちっくな展開。
前妻VS新妻の構造は決して絵空事ではない。ステップファミリーでは必ず起こること。
ダンヴァース夫人を前妻の子や、姑等に置き換えれば、今全世界でも起こっていること。
だから、痛々しくて見るのが辛かった。
そんな日常的な関係性を、監督はひたすらゴシックモードを始め、あたかも怪奇もののように装飾する。
展開の早すぎるプロポーズ。しかも、ヒロインに身寄りがいないことを確かめた上で。
名家という話なのに、披露宴もせずに一枚の紙で済まそうとする結婚証明。
味方なのかそうでないのか判然としない使用人たちのふるまい、佇まい。
何か罠があるのではないかと勘繰りたくなる。
青髭、美女と野獣…幾多のおとぎ話が頭をかすめ・・・。
ダンヴァース夫人の狂気が際立ち始め・・・。
第3の幕が上がる。
夫の秘密を共有した新妻。
今にもボロを出しそうな夫。
好きだったあどけなさの消えた妻と夫の関係性。
味方になるのか、敵になるのかわからない人々。
ハラハラドキドキ。
そしてふたたびどんでん返し。うやむやにされるもう一つの事実。
そのどんでん返しが引き起こす悲劇で幕を閉じる。
一転、二転、三転…。フラグに振り回される。
よく練られた構成・脚本にも見えるが、振り回され感があまりよくないのでつい評価が下がってしまう。
シーンシーンも切貼のようにも見え、つい評価が下がってしまう。
それでも、レベッカの部屋の調度類等、そこにいないレベッカを、でもあたかもまだ存在する人のように印象付ける圧倒的な映像。
これから始まる物語へ導く冒頭(『市民ケーン』とよく似ている)。
映画から目が離せなくなる。
カタルシスはないのに、記憶に残る映画。
★ ★ ★
ローレンス・オリヴィエ氏が、坂上二郎氏に見えてしまってしょうがなかった。って私だけ?
ジョーン・フォンテインさんも、日本の若手女優でよく似た人いるなあ。特にしなの作り方と思うのだけれど、名前が思い出せない。若いころの沢口靖子さん?