劇場公開日 2020年9月11日

「エドガー・アラン・ポーの世界を彷彿とさせる世界観に取り込まれる。」レベッカ(1940) とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5エドガー・アラン・ポーの世界を彷彿とさせる世界観に取り込まれる。

2023年2月10日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

知的

フラグが一杯。
 目くらましのフラグ。
 一転目の事柄につながるフラグ。
 ラストにつながるフラグ。
 そのフラグも、結末を知らないで鑑賞するときと、知ってから鑑賞するときの意味付けが変わる。
 「ほう、職人技だのぉ」と唸りたくなる。

最初はロマンスから始まる。
 上流階級が集うゴージャスな世界。そこに紛れ込んだ庶民。
 ゴージャスな世界への憧れと皮肉。庶民がいることで共感しやすくなる。
 あれよあれよという間の、おとぎ話、ハーレクインロマンスの成就。

そして、重厚かつオドロオドロシイお屋敷。
 女フランケンシュタインが牛耳る世界。
 めでたしめでたしで終わったおとぎ話の続きが幕を開ける。
 眼前に立ちはだかる前妻レベッカ。庶民のコンプレックスを煽り、追いつめられるヒロイン。
 昼メロちっくな展開。

 前妻VS新妻の構造は決して絵空事ではない。ステップファミリーでは必ず起こること。
 ダンヴァース夫人を前妻の子や、姑等に置き換えれば、今全世界でも起こっていること。
 だから、痛々しくて見るのが辛かった。

そんな日常的な関係性を、監督はひたすらゴシックモードを始め、あたかも怪奇もののように装飾する。
 展開の早すぎるプロポーズ。しかも、ヒロインに身寄りがいないことを確かめた上で。
 名家という話なのに、披露宴もせずに一枚の紙で済まそうとする結婚証明。
 味方なのかそうでないのか判然としない使用人たちのふるまい、佇まい。
何か罠があるのではないかと勘繰りたくなる。
 青髭、美女と野獣…幾多のおとぎ話が頭をかすめ・・・。
 ダンヴァース夫人の狂気が際立ち始め・・・。

第3の幕が上がる。
 夫の秘密を共有した新妻。
 今にもボロを出しそうな夫。
 好きだったあどけなさの消えた妻と夫の関係性。
 味方になるのか、敵になるのかわからない人々。
 ハラハラドキドキ。
そしてふたたびどんでん返し。うやむやにされるもう一つの事実。
そのどんでん返しが引き起こす悲劇で幕を閉じる。

一転、二転、三転…。フラグに振り回される。
よく練られた構成・脚本にも見えるが、振り回され感があまりよくないのでつい評価が下がってしまう。
シーンシーンも切貼のようにも見え、つい評価が下がってしまう。

それでも、レベッカの部屋の調度類等、そこにいないレベッカを、でもあたかもまだ存在する人のように印象付ける圧倒的な映像。
これから始まる物語へ導く冒頭(『市民ケーン』とよく似ている)。
 映画から目が離せなくなる。

カタルシスはないのに、記憶に残る映画。

★ ★ ★
ローレンス・オリヴィエ氏が、坂上二郎氏に見えてしまってしょうがなかった。って私だけ?

ジョーン・フォンテインさんも、日本の若手女優でよく似た人いるなあ。特にしなの作り方と思うのだけれど、名前が思い出せない。若いころの沢口靖子さん?

とみいじょん