「カタルシスを簡単には与えてくない映画」レベッカ(1940) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
カタルシスを簡単には与えてくない映画
ジョーン・フォンテインが美しい
真っ直ぐで健気でいじらしい
前半は彼女がイジメ抜かれ、彼女のその控え目な性格を強調していく
その過程が彼女に感情移入しているだけに、劇中観ていて苦しくなる
特に仮装舞踏会のドレスのシーンは辛い
1年前に亡くなった前妻レベッカが、死していながらマキシム初め屋敷の全員を支配していることを延々と描写する
終盤になり法廷劇と化す
マキシムは実は殺人を犯している
それが露見してしまい証拠も上がるのだが、結局嫌疑は晴れてしまう
レベッカの呪縛は解けてしまうのだ
しかし、そのカタルシスはマキシムのもので主人公のものではないし、観客のものでもない
主人公のカタルシスは屋敷が燃え落ちる事によって彼女のレベッカの呪縛が解ける事によって訪れる
しかし、これもまた観客のものではない
火災の映像の迫力は白黒であることを忘れるほど
ラストシーンのレベッカを示すRの刺繍の入ったシーツが敷かれたベッドが火に包まれることでレベッカが遂に本当に死んだことを明らかにする
ここで初めて観客の私達にカタルシスを監督は与えてくれるのだ
そう映画の終わり、わずか数秒前で
つまり前半のレベッカの影に怯えて抑圧を受けていたのは実は主人公だけでは無く、観客たる私達達だったのだ
監督はカタルシスを最後の最後まで我々に与えず、他者に与えてお預けまでさせて渇望させてから初めてカタルシスを私達に投げ与えてくれるのだ
この焦らしかたは本当に嫌らしい
そしてまたヒッチコックらしい嫌らしさともいえるだろう
もちろんそれは誉め言葉だ
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