「いじめとは。。。」リリイ・シュシュのすべて いちごだいふくもちさんの映画レビュー(感想・評価)
いじめとは。。。
賛否両論の作品なのだが、私はどちらかというと否の意見なのだ。メインテーマはいじめなのだが、妙に美化してしまっているように感じられてしまう。繰り広げられるいじめは、14歳という年齢とはかけ離れ過ぎた陰湿なもの。恐喝にレイプに売春強要…。
犯罪とまで言えるイジメを受けても、なぜか強く生きようとする少年少女。普通ではありえないのではないか?強く生き、時おり見せる綺麗な田園風景にあいまってイジメの残酷さすら消えうせてしまう。
いじめる側の星野の叫びは何だったのか?いかにもイジメ側もつらいのだといわんばかりのこぎつけたシーンとしか思えないのだ。それに、映画としては146分という長い尺にもかかわらず、登場する少年少女の境遇がほとんど見えず強引に進んでいくため、感情移入すらできないのである。
教師の無能さには腹立たしさを超えてびっくりです。生徒のことを何にも分かって無いんだね。こんだけ問題が起こっても、あのノホホンとした態度や発言は有得ない。あの先生にも責任はあるね。
沖縄のプライベートビデオなシーンは妙にいらいらするだけで、旅行を機にいじめっ子に変わってしまった星野の動機すらいまいち理解がしがたい。海でおぼれ命を救われ、なにかと関わってくる旅行者の事故。これで、彼は何が変わったのというのか!?
星野修介と蓮見雄一、彼らの唯一の救いは女性シンガー、リリイ・シュシュの歌。いじめる側いじめられる側で共通のカリスマ。ネットの書き込みで宗教のごとく崇拝し、共感を得る仲間。結局は、ネット上での仲間は現実では敵対している二人というオチにつなげるのだが、それに気づいたのは蓮見雄一だけ。もし、星野修介が気づいていれば結末は何か変わったのかもしれない。
ラストの結論を出さなかったではなく、出せなかったと疑ってしまうほど、そっけない終演を含め、好感は持てない映画でしたが、考えさせられ、いろんな意見が出て心を動かせた映画ということは、監督自身も何も隠さず、自分が表現したい映画を撮ったという証拠でしょう。こういう作品を作れる監督もなかなか居ないので、一度は見る価値ある映画かもしれない。