「喪失。」Love Letter Noriさんの映画レビュー(感想・評価)
喪失。
前から気にはなっていたが、鑑賞することなく時は流れ。
中山美穂さんの訃報に触れ、鑑賞した次第。
私が人生で初めて目にした芸能人、美穂さんだったな。
亡くなった婚約者の3回忌からスタートする本作。最初一人二役と知らずやや混乱したが、把握してからはグイグイと引き込まれていった。
まだ個人情報保護がゆるゆるで、卒アルに住所が全て載っかっている。2024年の今では絶滅したに近いシチュエーション。卒アルの、亡くなった婚約者の旧住所地に手紙を書いたところ、同姓同名の同級生から返事が来て。
公開された1995年はまだ携帯電話もE-mailも普及していなかった。手紙でやりとりするって、その緩やかさが心地良くもある。相手を思って筆をとるって、21世紀の今、なかなかない。
見知らぬ者同士、偶然が重なり、亡き婚約者のことを少しずつ共有していく。
デジタルの画面でやりとりすることで得られたものと、失ったものと。文字の美しさや、書き出す言葉への想い、相手を待つということ。公開当時では感じることが無かったであろうことにも、今は思い至る。
一人二役であったことの意味、学生時代の淡い想い出、大切な人を失うということ。人は皆、どこかで何かを失って。人生とは、ある意味喪失の連続なのかもしれない。喪失から再生できるのかな、と思って鑑賞していたけど、本当は再生なんかすることなくて。喪失を抱えて、それでも人生は続く。そうなのかな。
クライマックス、図書カードのくだり。不器用過ぎて胸が苦しくなる。そして、実写版「君の膵臓をたべたい」が本作のオマージュで成り立っていたことを今さら知った。
人生で通り過ぎてきた幾多の切なさを胸に、今日もまた生きよう。
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