「蜜柑の汁で炙り出したような初恋」Love Letter 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
蜜柑の汁で炙り出したような初恋
「青春18×2」の2人が並んで観た映画は、
岩井俊二監督の「Love Letter」でした。
ずっと以前に観てますが、
感動したことと、
中山美穂と豊川悦司が出ていて、
豊川悦司がガラス吹きをしてたこと、
そして小樽の雪景色、
これだけしか覚えていませんでした。
名作の誉れ高いだけのことはありました。
2年前、婚約者を山でなくした中山美穂。
3回忌の法要で恋人・藤井樹(いつき)の中学の卒業アルバムを
見せられます。
咄嗟に住所を腕にメモ。
そこは小樽市色丹でした。
恋人を忘れられない博子は、小樽の住所に手紙を書き投函します。
すると藤井樹の名前の差出人から返事が来たのです。
博子は一瞬、樹から本当に返事が来たような変な嬉しさを
覚えます。
文通は続いて、秋庭(豊川悦司)が悪戯して、
「あんたは誰だ?」と書くと、同じクラスの女生徒・同姓同名の
藤井樹からだったのです。
この映画には悪意のないトリックが幾つか隠されています。
小樽に住む女の子の藤井樹の役は中山美穂です。
二役なんですよ。
そして博子は心の隙間を埋めるように、樹(中山美穂)に
樹(柏原崇)の思い出を書くように頼むのです。
★同姓同名で嫌な思いをたくさんしたこと。
★同じ図書委員をしたのに、一向に手伝わない彼のこと。
★交通事故で複雑骨折したのに、地区大会に出たこと。
★極め付けは、珍しい誰も借りていない本の図書カードに、
藤井樹の名前が最初に記される事、
彼はそこに喜びを感じていたのです。
(これは伏線でラストの落ちに繋がります)
小樽の女の子・樹は、同姓同名の彼の思いに、
それまでまったく気づいてませんでした。
博子が思い出を掘り起こしたことで、恋人の初恋を
炙り出してしまう。
本当に素敵なフェイントのあるラブストーリーです。
死んだ(遺体は山の中)恋人の過去、
同姓同名の同級生の女の子。
ラストの死者からのメッセージ。
是非ご覧になって、お確かめ下さい。