羅生門のレビュー・感想・評価
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語りの騙り
黒澤明監督作品。傑作です。
本作では、登場人物の虚栄心によって、殺人の事実が歪曲され、それが映画的手法によって同じ強度で映像化されているのが面白い。またそのことを通して人間の愚かさが描かれており、娯楽性のみならず人間性とは何かを深く問いているのである。
また羅生門のセット、光と影のコントラスト、雨と汗の演出も素晴らしい。この素晴らしさについては、多くの研究の蓄積があると思うので、今後も探求をしていきたい。
人間とは、殺害されて幽霊になっても、自らの見栄のために事実を歪曲してしまう愚かな生き物である。しかし黒澤明監督が映画に翻案するにあたって、追加したラストのシーンでは、人間性の可能性が描かれている。自らの愚かさに光をあて、子どもを抱きかかえること。そして雨上がりの門をくぐること。監督が信じた人間性を私も信じてみようと思う。
世界にクロサワの名を知らしめた、超テクニカルな傑作ドラマ
監督脚本、黒澤明。
芥川龍之介の『羅生門』……ではなく『藪の中』を映画化したもの。
【ストーリー】
しのつく雨の京都。
朽ちた山門に、男が三人雨やどりをしている。
一人は僧、一人は杣(炭)売り、一人は下人。
雨にけぶるはるか前方をながめ、やがて僧と杣売りが、検非違使に呼ばれて証言させられた、奇妙な事件について語りはじめる。
金沢という武家の死体を、杣売りが発見した。
斬殺されたものであった。
三日が経ち、金沢を殺したとする盗賊の多襄丸と、金沢に帯同していたはずの妻・真砂がそれぞれとらえられた。
死体の状況に疑いがあり、死んだ金沢のかわりに、口寄せのできる巫女を呼んだ。
検非違使は白洲にそれぞれを引きたて、証言させる。
初めて見たとき、腰を抜かすほど驚きました。
いや本当に。
大げさじゃなく。
事前にウィキペディア読んで話は知っていたのに驚いたんだからすごい。
法廷劇の形をとったミステリなんですが、三人の事件被告が証言するたびに、真相の印象が変わるというその巧みな構成。
初見単純な事件が、証言が重ねられるごと、それらの輪郭を崩すことなく、どんどんと生々しい人間の本質がむき出しにされてゆく不気味さ。
"ラショーモン・エフェクト"なる社会心理学用語まで作られた、有無を言わせぬドラマの説得力。
もう感服ですわ。
堂々とした武士の金沢と、悪当然とした多襄丸の、実際は情けないありさまや、裏切りが表面化するや開きなおる真砂の嗤う鬼面。
クロサワヒロインは大体二種類に大別できるんですが、お公家眉系のヒロインは必ず内面に鬼が潜んでて、心底怖いですな。
豹変の瞬間は毎回ヒャってなります。
初めて見ておどろいて、次の日に見てまたおどろいて、さらにその週末にもう一回見ちゃいました。
毎回ヒャってなりました。
画面は一見地味ですけど、画角を切り取るセンスが抜群で、白黒ながらCMでもなかなかお目にかかれない美しさ。
数ある黒澤作品でも、ベストに上げたいのが、この羅生門。
今さら自分ごときが薦める必要もないんですが、このえげつない人間描写は、どえらいです。
名作ですけどね
黒澤が世界に認められたあまりにも有名な作品なので、色眼鏡をかけずに観られる人は殆どいません。見る前から「これは名作」というのが刷り込まれていますが、冷静に観ると、七人の侍や用心棒、赤ひげ、天国と地獄みたように「文句なしに」面白い作品ではありません。いかにも芸術的、純文学的で評論家受けはするでしょうが、一般的には、つまらなくはないけれど面白いとは言い難い、というの大方の感想でしょう。
何といっても問題点は演技の演出方針です。
三船、京両先輩は演技が大げさすぎて失笑モノです。
志村、千秋両先輩も七人の侍でみられるような余人を以って代えがたいはまり役からほど遠い、素人演技です。はっきり言えば「演技がクサイ」
世界のクロサワここにあり
どうする検非違使。
濃密な枠構造
なんて濃厚な構造と台詞に満ちた88分なんだろう。そして役者達の素晴らしい演技。
殺された侍の妻(京マチ子)が語る背景に流れる、あ、これが「ボレロ」かと感動した。編曲された日本のボレロ。ここにボレロ的リズムが置かれたことで、語り手=京マチ子演じる妻が自分の語りにだんだんと酔いしれ自分を美化していく陶酔感に私も巻き込まれた。最後は「この弱い愚かな私」と来た!
最初と中間と最後は朽ち果てた大雨の羅生門。このシーンは映画「羅生門」の枠にあたるが、その場にいる3名のうち2名はメインの話の中にも目撃者として証言者として足を突っ込んでいる。そして人間不信に頭を抱え絶望している。こんなタイプの枠物語ないような気がする。
数日間のことで羅生門では大雨、林の中は真夏で暑く虫がブンブン飛んでいる。光と影が硬質な映像でとても眩しい。妻を馬に乗せて歩く侍。このときの森雅之は全く魅力がないのに、妻(京マチ子)が盗賊(三船敏郎)に手ごめにされた後に妻を見やる眼差しは冷たく蔑みに満ちていて凄みがある!でもあくまで妻からの視点。一方で、三船敏郎の小動物のような可愛らしさと機敏さとしなやかな身体の動きは最初から光っていた。三船敏郎の瞳は少し薄い茶色がかっている(モノクロだけど私にはそう見えた)。羽虫を払い手でポリポリと体を掻く仕草、キラキラしてよく動く目、女好きだがオモチャを欲しがる子どもに過ぎない。
この3名の話に足を突っ込んでしまった羅生門に居る二人は人間不信に陥るが、第三の男は違う。「本当のことは言えないのが人間だ」「誰も彼もがてめえのことばかり」「羅生門の鬼さえ人間の恐ろしさを怖がって逃げ出した」と悟ったようなことを言う。
でも志村喬演じる男=真実を全部見てなおかつ盗みもした男は、赤ん坊を6人育てている、一人増えようが同じだと、羅生門に捨てられていた赤ん坊を引き取る。この最後に置かれた枠物語が若い坊さん(千秋実)と私達を人間不信から救ってくれる。
音楽、映像、脚本、構成、全てがギラギラきらきらしながら優しさに着地している。映画「羅生門」はこういう話だったのか。自分なりにだけれど映画館で集中して見ることができてよかった。
ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞、アカデミー賞名誉賞受賞。世界に誇る...
作品の凄み
証言のエクスタシー
藪の中ではない‼️羅生門だ‼️
この作品によって "世界のクロサワ" が誕生‼️という事は世界映画史上において最重要作品だということです‼️原作は芥川龍之介の「籔の中」で、「羅生門」からは舞台となる羅生門という建物だけが使われています‼️すさまじい豪雨の中に立つ羅生門の見事な造形はいちど見たら忘れられない‼️素晴らしい美術ですね‼️登場人物たち全ての証言が食い違う中、真実をめぐる人間の業、欲望、虚栄心とその先にある人間の善意(志村喬さん)といったテーマ‼️そして躍動感あふれる映像‼️特に森の中を縦横無尽に動き回るカメラワークは、まるで木漏れ日に色がついてるみたいで、さすがは宮川一夫‼️そして我らが三船さんを始めとする出演者‼️野生児そのままの三船さんや森雅之さんの気品ある侍ぶりも素晴らしいのですが、高貴な若妻からエゴと欲むき出しの毒婦へと変貌する京マチ子さんが特に凄すぎ‼️そして、第4の証言者の木こりを創出してよりドラマティックな物語を創り出した黒澤監督と橋本忍さんによる完璧な脚本‼️しかしこの作品の一番見事な点はそのタイトルネーミング‼️物語はそのほとんどが「籔の中」なのに、タイトルは「羅生門」‼️やっぱり、外国の方にも発声しやすいのは「ラショーモン」‼️その時その時の決断というかセンスですよね、やっぱり歴史に残るのは‼️
全て、藪の中…
真相は「藪の中」
1950年。黒澤明監督作品。
ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した。
またアカデミー賞名誉賞(現在の外国語映画賞)も受賞。
原作は芥川龍之介の「羅生門」と「藪の中」をミックスして橋本忍と
黒澤明が共同で脚色した。
朽ち果てた羅生門の縁側か庭先で三人の男たちが、目撃した焚き木売り
(志村喬)の話を聞く形で進む。
映画のストーリーは「藪の中」で、「羅生門」はそれこそ軒先と門構えと
題名(これが素晴らしいのだが・・)を借りただけである。
「藪の中」と言う言葉は現代でも、真相が知れないことを指す言葉として使われている。
事件は焚き木売りが入った「山」で起こった。
武士が白馬に妻を乗せて旅をしている。
通りかかった盗賊・多襄丸(三船敏朗)は武士の妻・真砂の美しい指先と市編笠
から一瞬覗いた真砂の美しさに息を呑む。
欲情した多襄丸は真砂を手籠にしてしまう。
真砂の怒りは手籠を見ていて、真砂に軽蔑の眼差しを向ける夫(,森雅之)に向けられる。
真砂は多襄丸をけしかけ夫と決闘をして勝った方の妻になる・・・
そう言うのだった。
ここからは多襄丸、真砂、目撃者・焚き木売りの三者の意見がバラバラで食い違うのだ。
誰が武士を殺したか?
真砂の心に霊媒師が宿り、夫・‥金沢の弁明まで聞くことが出来る。
この映画は海外で高く評価されて、アラン・レネー監督の「去年マリエンバードで」
にも影響を与えたとのことです。
それにしても、多襄丸の三船敏朗の活気と狂言回しの役割。
真砂の京マチ子の妖艶さと映画の役への意気込み。
志村喬の最後にはヒューマニズムを感じさせる役割。
黒澤明監督作品らしいダイナミズムに溢れた作品でした。
過去鑑賞
流れる音楽はボレロをリスペクトしている。
男は虚栄心から,女は狂気から嘘をつく.嘘をついているという自覚すら...
男は虚栄心から,女は狂気から嘘をつく.嘘をついているという自覚すらないのかもしれない.出来事に対して当事者として行為していることを,私たちはいつも客観的には語ることができないみたいだ.客観していた町人もまた,自分の行為についての認識が欠落していて,それを指摘されてうろたえる.それでもやはり,人を信じるという事をあきらめないという最後のシーンが印象的だった.自分にはやはり女性の狂気を描いている個所が特に気になって,盗賊の誘いを力強く拒絶した後に夫から拒絶される瞬間の女性の顔がとても印象的だった.自分の選択によって板挟みにあう女性と,そこからの感傷から狂気への変転.自分の引き出しの中に微妙に響きあうところがあって,それをもう少し掘り下げていきたいと思ったりもしたものだ
疑心暗鬼。人の心が信じられなくなりそうだ!
何度も観たい
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