劇場公開日 2008年11月29日

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羅生門のレビュー・感想・評価

全72件中、1~20件目を表示

4.0語りの騙り

2024年4月19日
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鑑賞方法:その他

黒澤明監督作品。傑作です。

本作では、登場人物の虚栄心によって、殺人の事実が歪曲され、それが映画的手法によって同じ強度で映像化されているのが面白い。またそのことを通して人間の愚かさが描かれており、娯楽性のみならず人間性とは何かを深く問いているのである。

また羅生門のセット、光と影のコントラスト、雨と汗の演出も素晴らしい。この素晴らしさについては、多くの研究の蓄積があると思うので、今後も探求をしていきたい。

人間とは、殺害されて幽霊になっても、自らの見栄のために事実を歪曲してしまう愚かな生き物である。しかし黒澤明監督が映画に翻案するにあたって、追加したラストのシーンでは、人間性の可能性が描かれている。自らの愚かさに光をあて、子どもを抱きかかえること。そして雨上がりの門をくぐること。監督が信じた人間性を私も信じてみようと思う。

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まぬままおま

4.0映画終活シリーズ

2024年8月26日
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鑑賞方法:VOD

1950年度作品
アカデミー賞最優秀外国語映画賞受賞
ヴェネツィア国際映画祭グランプリ受賞
久しぶりの再鑑賞
ともかく素晴らしい映像美やな

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あきちゃん

3.5近代的人間像

2024年8月16日
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鑑賞方法:映画館

面白いけど、平安時代にしてはどの人も近代的なんだよな。/パルシネマしんこうえんでは『落下の解剖学』と2本立てで、うまいよね。

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ouosou

5.0濃密な枠構造

2024年4月8日
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鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

知的

なんて濃厚な構造と台詞に満ちた88分なんだろう。そして役者達の素晴らしい演技。

殺された侍の妻(京マチ子)が語る背景に流れる、あ、これが「ボレロ」かと感動した。編曲された日本のボレロ。ここにボレロ的リズムが置かれたことで、語り手=京マチ子演じる妻が自分の語りにだんだんと酔いしれ自分を美化していく陶酔感に私も巻き込まれた。最後は「この弱い愚かな私」と来た!

最初と中間と最後は朽ち果てた大雨の羅生門。このシーンは映画「羅生門」の枠にあたるが、その場にいる3名のうち2名はメインの話の中にも目撃者として証言者として足を突っ込んでいる。そして人間不信に頭を抱え絶望している。こんなタイプの枠物語ないような気がする。

数日間のことで羅生門では大雨、林の中は真夏で暑く虫がブンブン飛んでいる。光と影が硬質な映像でとても眩しい。妻を馬に乗せて歩く侍。このときの森雅之は全く魅力がないのに、妻(京マチ子)が盗賊(三船敏郎)に手ごめにされた後に妻を見やる眼差しは冷たく蔑みに満ちていて凄みがある!でもあくまで妻からの視点。一方で、三船敏郎の小動物のような可愛らしさと機敏さとしなやかな身体の動きは最初から光っていた。三船敏郎の瞳は少し薄い茶色がかっている(モノクロだけど私にはそう見えた)。羽虫を払い手でポリポリと体を掻く仕草、キラキラしてよく動く目、女好きだがオモチャを欲しがる子どもに過ぎない。

この3名の話に足を突っ込んでしまった羅生門に居る二人は人間不信に陥るが、第三の男は違う。「本当のことは言えないのが人間だ」「誰も彼もがてめえのことばかり」「羅生門の鬼さえ人間の恐ろしさを怖がって逃げ出した」と悟ったようなことを言う。

でも志村喬演じる男=真実を全部見てなおかつ盗みもした男は、赤ん坊を6人育てている、一人増えようが同じだと、羅生門に捨てられていた赤ん坊を引き取る。この最後に置かれた枠物語が若い坊さん(千秋実)と私達を人間不信から救ってくれる。

音楽、映像、脚本、構成、全てがギラギラきらきらしながら優しさに着地している。映画「羅生門」はこういう話だったのか。自分なりにだけれど映画館で集中して見ることができてよかった。

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talisman

3.5ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞、アカデミー賞名誉賞受賞。世界に誇る...

2024年2月2日
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鑑賞方法:映画館

ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞、アカデミー賞名誉賞受賞。世界に誇る最も有名な日本映画の一つ。灼熱の太陽を感じさせる木漏れ日のコントラストとしたたる汗、逃げ惑う人物を追うスピード感のあるカメラワーク、地べたを這うようなアングル。黒澤明の実験的手法が、白黒だからこそのコントラストの強い陰影を作り出し、肌の質感、目の瞳孔や虹彩の動きまで見て取れる生々しくも美しい映像に仕上げている。時代劇にラヴェルのボレロ(風な曲)も当時としてはかなり斬新。

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mini

3.5作品の凄み

2024年1月20日
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場面展開は3場面。登場人物も台詞も極力少ない。
教養の乏しい当方が芥川龍之介を語るのはおこがましいが、たったそれだけの話の状況描写、心理描写を繊細に表現する芥川文学と同じだと思った。だからすごい。
舞台劇を見ているような展開で、三船敏郎と京マチ子の演技は圧巻。ふたりはオーラが違う。脳裏に焼き付いている。
物語の深みに理解力が追いつかず、かと言ってもう一度見てみようと思う体力も知力もない。
ただ、あの世界観は体現しておいて良かったと思った。画面から霊力を感じる。恐ろしいくらいに。

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ニモ

3.0証言のエクスタシー

2024年1月7日
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鑑賞方法:映画館

萌える

証言...没入のエクスタシー
鳴り響く早坂文雄のボレロ! 女はオーガズム後の余韻に浸るように夫殺しを懐古し、巫女に口寄せされた夫と多襄丸も過去に憑依され、感情を爆発させる。真正面やや下に据えられたカメラは証言者を壁か空という簡素な背景を背に誰もが自分のストーリーに没入していく様を映している。回想という翼を得て主観的物語にどこまでも堕ちていく一方で、藪の中で翼を得たカメラは傍若無人な振る舞いをみせ、映像を通じて証言の元となる言葉を生成する初動を捉えている。戦後に獲得された内心の自由が末法の世を告げるパンドラの箱なのかもしれない。

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ジャパニーズ先住民

3.53度目の鑑賞。

2024年1月1日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

3度目。家内は初めて。僕が大学時代に初めて観た時には、女って怖いな、と思ったことをよく覚えている。改めてよく出来た映画だと思う。家内の解釈が僕と全くしがっていて面白かった。

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Yohi

5.0藪の中ではない‼️羅生門だ‼️

2023年8月4日
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泣ける

怖い

興奮

この作品によって "世界のクロサワ" が誕生‼️という事は世界映画史上において最重要作品だということです‼️原作は芥川龍之介の「籔の中」で、「羅生門」からは舞台となる羅生門という建物だけが使われています‼️すさまじい豪雨の中に立つ羅生門の見事な造形はいちど見たら忘れられない‼️素晴らしい美術ですね‼️登場人物たち全ての証言が食い違う中、真実をめぐる人間の業、欲望、虚栄心とその先にある人間の善意(志村喬さん)といったテーマ‼️そして躍動感あふれる映像‼️特に森の中を縦横無尽に動き回るカメラワークは、まるで木漏れ日に色がついてるみたいで、さすがは宮川一夫‼️そして我らが三船さんを始めとする出演者‼️野生児そのままの三船さんや森雅之さんの気品ある侍ぶりも素晴らしいのですが、高貴な若妻からエゴと欲むき出しの毒婦へと変貌する京マチ子さんが特に凄すぎ‼️そして、第4の証言者の木こりを創出してよりドラマティックな物語を創り出した黒澤監督と橋本忍さんによる完璧な脚本‼️しかしこの作品の一番見事な点はそのタイトルネーミング‼️物語はそのほとんどが「籔の中」なのに、タイトルは「羅生門」‼️やっぱり、外国の方にも発声しやすいのは「ラショーモン」‼️その時その時の決断というかセンスですよね、やっぱり歴史に残るのは‼️

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活動写真愛好家

5.0全て、藪の中…

2023年5月7日
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鑑賞方法:映画館

「羅生門」のタイトルになっているが、内容は同じ原作者の芥川龍之介の
「藪の中」。
一つの事件に、多くの証言があり、どれも一致しない内容で、真相は
藪の中…最後に語られた証言ですら、本当の真実であったとは、断言
できない…
世界の多くの作品に影響を与えた映画。
証言する誰もが、自分を正当化し、自分は間違っていない、自分は
美しいと主張する。
黒澤明監督のコメントを、聞いたり読んだ事は無いが、ラストに下人が語る
言葉より、赤ん坊を家に連れて帰る者の言葉が、世の中に最後に残る
「人間の心の光」と、思いたい……

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777

4.0真相は「藪の中」

2022年7月27日
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鑑賞方法:DVD/BD

1950年。黒澤明監督作品。
ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した。
またアカデミー賞名誉賞(現在の外国語映画賞)も受賞。

原作は芥川龍之介の「羅生門」と「藪の中」をミックスして橋本忍と
黒澤明が共同で脚色した。
朽ち果てた羅生門の縁側か庭先で三人の男たちが、目撃した焚き木売り
(志村喬)の話を聞く形で進む。

映画のストーリーは「藪の中」で、「羅生門」はそれこそ軒先と門構えと
題名(これが素晴らしいのだが・・)を借りただけである。

「藪の中」と言う言葉は現代でも、真相が知れないことを指す言葉として使われている。
事件は焚き木売りが入った「山」で起こった。
武士が白馬に妻を乗せて旅をしている。
通りかかった盗賊・多襄丸(三船敏朗)は武士の妻・真砂の美しい指先と市編笠
から一瞬覗いた真砂の美しさに息を呑む。
欲情した多襄丸は真砂を手籠にしてしまう。
真砂の怒りは手籠を見ていて、真砂に軽蔑の眼差しを向ける夫(,森雅之)に向けられる。
真砂は多襄丸をけしかけ夫と決闘をして勝った方の妻になる・・・
そう言うのだった。
ここからは多襄丸、真砂、目撃者・焚き木売りの三者の意見がバラバラで食い違うのだ。
誰が武士を殺したか?
真砂の心に霊媒師が宿り、夫・‥金沢の弁明まで聞くことが出来る。

この映画は海外で高く評価されて、アラン・レネー監督の「去年マリエンバードで」
にも影響を与えたとのことです。

それにしても、多襄丸の三船敏朗の活気と狂言回しの役割。
真砂の京マチ子の妖艶さと映画の役への意気込み。
志村喬の最後にはヒューマニズムを感じさせる役割。
黒澤明監督作品らしいダイナミズムに溢れた作品でした。

過去鑑賞

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琥珀糖

4.0流れる音楽はボレロをリスペクトしている。

2022年4月24日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

世界的に良いかは別にして、面白いと思った。
3人とも自意識過剰な人間で、その3人に偶然に起きてしまった話。
多襄丸と男の戦いは、史上もっとも格好の悪い殺陣と言えないか。剣の達人などと到底言えない。
流れる音楽はボレロをリスペクトしている。

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マサシ

4.5男は虚栄心から,女は狂気から嘘をつく.嘘をついているという自覚すら...

2022年2月15日
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鑑賞方法:VOD

男は虚栄心から,女は狂気から嘘をつく.嘘をついているという自覚すらないのかもしれない.出来事に対して当事者として行為していることを,私たちはいつも客観的には語ることができないみたいだ.客観していた町人もまた,自分の行為についての認識が欠落していて,それを指摘されてうろたえる.それでもやはり,人を信じるという事をあきらめないという最後のシーンが印象的だった.自分にはやはり女性の狂気を描いている個所が特に気になって,盗賊の誘いを力強く拒絶した後に夫から拒絶される瞬間の女性の顔がとても印象的だった.自分の選択によって板挟みにあう女性と,そこからの感傷から狂気への変転.自分の引き出しの中に微妙に響きあうところがあって,それをもう少し掘り下げていきたいと思ったりもしたものだ

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ケ

3.5疑心暗鬼。人の心が信じられなくなりそうだ!

2022年1月15日
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鑑賞方法:VOD

楽しい

知的

難しい

内容は、芥川龍之介の羅生門にインスピレーションされた時代背景の人間ドラマ。やっぱ一番印象に残ったのは、冒頭の『わかんねぇ』だろうなぁ。人間関係のドラマを真実と事実の違いを見せつけられる人間の弱さを凄いカメラアングルで捉えた素晴らしい作品。世界の黒澤明と言われるだけの事あります。そして最後には雨上がりと僅かな救いが心象風景として間接的に表現され90分という事もあり非常に楽しめた。

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コバヤシマル

4.0何度も観たい

2022年1月1日
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と思うような映画ではないが、事あるごとに観てしまうような映画
原作に再び立ち返ろうとする気持ちを持たせてくれた時点で題材を
それに定め制作した監督の勝ちであり成功だと思うが、それが黒澤明
であるということは、後からで十分な知識であろう。
まず初めに映画タイトルありで制作陣、キャストで映画を選ぶ時代は
終わりだ。と思えた作品でもある。
そういう点ではさすが黒澤◎と本作感想は締めくくりたい。

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tomokuni0714

2.0突然高笑いする場面が多くて、

2021年11月24日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

その度に興ざめする。

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くそさいと

4.5ギラギラ&ダラダラ

2021年11月9日
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鑑賞方法:TV地上波

タイトルは知ってるけど、見る機会がなかった名作。世界のクロサワじゃ。

デジタルリマスターなので、画像は良くなっているんだろうけど、音声は時々聞こえづらい。雨の中の羅生門が特に。でもまあ、少し気になる程度かな。一番印象に残ったのは、汗。ものすごいダラダラじゃないの。よほど暑かったんだねぇ。

三船敏郎が若い。野性味がプンプン。真砂はけっこう多襄丸がタイプだったんじゃないの? それか、どこか安穏とした暮らしに収まらない、破滅願望の女。そういう女と気付きながら、黙っていた夫。この夫婦には、すでに隙間風が吹いていたのかも。そして、どちらもプライドが高い。

今見るとそれほど新鮮に感じないが、クロサワチルドレンがたくさんもどきを作って、それを見ていたから、そう思うわけか。今この時代に見るのは、いわば遺跡の発掘作業のようなものかも。

そういえば、ほぼ同じ内容で、天海祐希、豊川悦司、金城武で映画になってたと思う。天海祐希が脱いだ、というプレミア付き。金城武は好きなんだけど、今何してるのかな。すてきなおじさまになってそう。

NHKのデジタルリマスター版の放送にて。

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ぷにゃぷにゃ

5.0羅生門効果という心理学用語のネタ元の映画

2021年8月10日
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鑑賞方法:DVD/BD

興奮

知的

萌える

羅生門効果(Rashomon effect)。事実は一つのはずなのに「こうだった」という認識が三者三様であることに気がついた心理学者(確か家族療法家だったと思う)が、その現象に対して、この映画をヒントにして名付けた心理学用語。
  皆”嘘”を言っているのではない。
 そこで起こったこと、すべてを言語化するわけではない。何を取り上げて何を割愛するか、その取捨選択だけでも、三者三様の物語ができる。
 加えて、内的真実(自分にとっての真実)としてそう思い込む。過去の出来事がこうであったから今経験しているのも「こうであるに違いない」と思い込むこと、認知の問題、自己防衛、情緒の問題、コミットメントの度合い…様々な要素からその人にとっての真実(内的真実)ができあがる。それは、時を経るに従ったり、いろいろな経験を積み重ねたり、見識を広げたり、心を豊かにし深めたり、自分と直面する勇気を持ったりすることで変化していく可能性を持つもので、だからこそ、心理療法ができるのだけれど。お互いの観方・そう見た背景を分かち合うことで「ああ、そうだったのか」その方の世界観が変わっていく可能性をも秘めたものであり、お互いの世界観に橋を渡せる可能性をも秘めたものである。

映画のレビューを拝読していても、同じ映画を観ているはずなのに、そこに何を感じ、好き嫌いはともかく、とらえ方にも様々なヴァリエーションがあって…。摩訶不思議。

ある男の死に至るまでの夫々の言動。
 多襄丸は繰り返し言う。「どうせ死罪になるんだ。今更嘘を言って言い逃れしても仕方がない。本当のことを言いましょう」でもね、君の話や被害者の話を聞いている者からするとね、やっぱり自尊心を守りたい為の”嘘”に聞こえる。殺された夫にしても、残された妻にしても、一部始終見ていた杣売りにしてもそれは同じ。皆自尊心は守りたいよね。そうであったと自分に信じ込ませなきゃやっていけないよね。虎は死して皮を残すが、人は死して名を遺す。西洋なら、墓碑にどう書かれるかが大事ということか。
  そんな人間の浅はかさ、おかしさ、恐ろしさが映像として描き出された映画です。

なんて書くと、重苦しいだけになってしまうけど。他のレビュアーの方も書かれていますが、カメラワークの美しさ、登場人物の人間臭さ。躍動感。同じ人物を四通りに演じ分ける三船氏、京さん、森氏の演技、それを器として支える志村氏、千秋氏、上田氏の演技に息を飲みます。本間さんの依りましのインパクト、雛人形の仕丁(五段目)さながらの加東氏も華を添えてくださいます。

「男は黙ってサッポロビール」等重厚なイメージの強かった三船氏のはっちゃけぶり(@_@;) 字で書くとどうしようもない盗賊の役柄なんだけど、三船氏が演じるとものすごくキュート(*^。^*) それでいてあの迫力。命そのものがぶつかってくるような荒々しさ!(^^)! 野性味!(^^)! ビックリしました。かっこういい立ち回りから、腰が引けたどうしようないビビりの切り合いまで、縦横無尽に演じきる凄さ(*^。^*)
 ライオン・黒ヒョウ等がイメージなのだとか。体に油を塗って、野性味を演出したとか。疾走感を出すためのカメラの工夫とか、様々な工夫と、その演出にこたえる三船氏の演技!!!

京さんは、お淑やかな雛人形、清純そのものといった佇まいから、男を手玉に取る妖艶な美女まで。しかも、その両極端を演じきるだけではなく、男に抱かれた後に捨てられるのではと予感させられて茫然とする表情とか、本当に多彩、様々な心情を細やかに見せてくださいます。

この二人に対して森氏は”静”の役回り。縛られている場面もあるし、性格的にも冷静な武士という役回りだったから、あまり動き回っての派手な演技はありませんが、四者の証言によって浮き彫りにされる微妙な性格の違いを魅せてくださいます。しかも、そんな”静”の武士が、死してなお語るその思いの激しさ。

この三人の拮抗した演技力のぶつかり合いが絶妙です。

暑さが起こした事件?暑さが見せた幻影?
多襄丸が真砂を見初めるシーンのすがすがしさ。一幅の絵画のよう。
そんな絵にも心を奪われる。

加えて、羅生門場面での志村氏、千秋氏、上田氏の演技も素晴らしい。出番が少なくて動きも少ないのにインパクト大。

森の場面でも、羅生門の場面でも、三人の立ち位置の変化が、面白い。それをみるだけでもワクワクする。

四者の証言を聞いて混乱した気持ちが、羅生門での会話に(内的言語で)参加することによって少しずつ、それなりに心の中に落とし込んでいけるかと思うと混乱させられ、ラビランスの迷宮のようにさ迷い始め、つい柄にもなく哲学的なことを考え始めてしまいます。
  この三人の会話がなかったら、盗賊・殺された夫・残された妻の物語を見せられて放り出された気分のまま収まりがつかずに終わったのだろうなと、この部分を持ってきた監督に座布団1枚の気分です。

ラスト。完全に監督オリジナルの展開。でも、ある行為から、財政的にある程度余裕ができたからの行為でもあるよな、なんて、ちょっと意地悪な見方もしたりして…。
 それでも、根っからの悪人なんていないのだろうとも思わせてくれる。
 旅法師たちの話の間降り続いていた集中豪雨も上がっての幕。

人間を考えると言う点でも、カメラワークや演技を堪能するという点でも、何度も見返してしまいます。それだけの価値のある映画です。

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とみいじょん

5.0文句なし!

2021年8月7日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 今でこそ“羅生門スタイル”として映画の一スタイルになっているが、この当時はかなり実験的な内容も盛り込んだ黒澤明の出世作。最初は橋本忍が3日で書きあげたという「藪の中」だけであったが、短いということで黒澤明の協力により「羅生門」をくっつけたという。

 多襄丸(三船)が下手人であることは間違いなく、貴族の妻(京マチ子)が彼に手ごめにされたことも間違いない。人間のエゴと嘘。人間には嘘で固めたほうが楽になるという言葉どおり、殺すことや不貞が本人によって都合のいいように思いこむ。まともな人間なんていない・・・人間不信になってしまう荒んだ世の中はいつの時代にも通ずることかもしれない。

 多襄丸の証言:男の目の前で妻を手ごめ。後に決闘で男を殺した。
 妻の証言:短刀で夫を殺した。
 本人の証言:いつの間にか短刀が刺さっていた。
 杣売の証言:あくまでも短刀ではなかった。

 それに加えて、「殺してくれ」と言ったかどうか、妻の不貞にどう対処したものか・・・などと、各自の尊厳を保つような嘘で固められるのだ。最後には杣売も短刀を盗んだことが暴かれてしまい、坊主までが人間不信に陥りそうになるというラストシークエンス。しかし、最後には温かいエピソードとなるところで極上の作品に仕上がっているのでしょう。

 脚本もさることながら、宮川一夫の撮影技術が凄い。タブーとされる太陽を木漏れ日として直接撮った初めての映画らしいし、雨に墨汁を混ぜた重々しい映像や風そのものを感じさせる葉の影など、細かなこだわりが凄い。

 音楽ではボレロ風の曲が使われていたけど、羅生門スタイルの映画『閉ざされた森』なんてのはモロにボレロだったなぁ・・・やっぱりオマージュだったのか。今の感覚で点をつけたら4点なんだろうけど、スタイルを確立させた功績を称え5点。

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kossy

3.5今見ても全く色褪せない

2021年7月16日
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旅法師と柚売りが通りすがりの下人に語り始める――盗賊が森で女を犯し、その夫を殺した。しかし語られる各々の証言は異なっている、というストーリー。

白黒映画だが役者の力強さを感じ、ストーリーも人間的に普遍のテーマを扱っているだけに今見て古臭さを感じさせない。「人間は見栄のために自分にさえも嘘をつく」というエゴを描きつつ、最後は希望を感じさせる点がいい。
むしろ白黒だとすべての場面に味を感じて風情を勝手に感じてしまう。

ただ、仕方ないことではあるが何を言ってるか聞き取れない場面がよくある。特に武士の台詞は加工されていて日本語字幕は必須。

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waisigh