羅生門のレビュー・感想・評価
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考えさせられた
ラスト10分のテーマの集約がすごい。
同じ人間でも、見る人の立場によって善にも悪にもなり得る、的な映画は最近よくあるけど、
人間の心の動きの複雑さそのものについて考えさせられた。
単純に良い人と悪い人が共存してるわけではなく、両面備えてることを全員が自覚しつつ巧妙に騙し合い助け合いながら生きてる、というのがまさに人間社会のあり方なわけで。
だから、冒頭で「あんな恐ろしい話が!」と前振りがあって始まった回想場面も、終盤には「そんな話珍しくもない」と一蹴される。
確かに現実社会に比べたら揉め事レベルの出来事でしかないし。
語り手3人の中で善、悪、一般人が分かれていたのは面白かった。一般人が善に目覚めて去っていく場面見ながら、でもこの後何するかわからんよな…と疑ってしまったから、もう私も人間の良心を信じてないのかもしれない。
もっぺん観たい。
食い違う証言作
大雨と羅生門
3人の当事者の食い違う証言
目撃者が語る無様な真実(無様な殺陣)
捨て子の服を奪う下人
捨て子を連れて帰る杣売りに希望を見る旅法師
人は保身のために嘘を付く、真実は藪の中
人間とは・・・
黒沢作品で気になっていた作品
事件に関わった3人の証言が見事に違い
出演者も観る者も頭をかかえる
しかし その中に人間の嫉妬や憎悪や
人間の心の中を見事に描いた作品
黒沢作品は落ち込むだけでは終わらない
最後に救いも残してくれる
三船もちろん良いが 志村喬は最高に良い
88分と短いがその中に内容をぎゅっと濃縮して
とてもよくできた作品だと思う
回答付きの「藪の中」
人の不完全性が描かれている。
人の醜悪さを前面に押し出しつつも、最後は希望を見出す。
監督の解釈を踏まえた「藪の中」。
行為自体ではなく、行為に至った動機を問う。
嘘とは何か。盗みとは何かを聞いてくる。
しかしこれを今、面白いかと言われると…さすがに古典かな。
貞操観念やら現代の感覚と違いすぎる。
名作の誉れ高いが
黒澤明お得意の土砂降りの中に崩れ立つ羅生門から映画は始まる。撮影は先日来その作品を観る機会の多い宮川一夫。出演は黒澤組のメインである志村僑、三船敏郎と、「雨月物語」の京マチ子と森雅之。「雨月」での京の狂いっぷりには背筋も凍ったが、この作品ではその狂い方も4パターン出てくる趣向。
森と京の謎めいた夫婦が時代劇のじめじめした雰囲気なのに対して、志村と三船の芝居が現代的でからりとしている。わざとそうした演出なのか、それともどう頑張っても三船の豪放磊落な芝居はあれよりほかにないのだろうか。異質なものが同居している感じで、すわりの悪さを感じる。
『羅生門』
「明日に向って撃て!」からかな。男二人に女一人の組み合わせは結構観てきたが、この形は初めてというより前代未聞な展開に変な興奮を覚えた。
死と背中合わせになった女特有の妖艶な匂いを滲み出す京マチ子、突然豹変する演技が拍車を掛けるようにクライマックスへと、いや真っ逆様に奈落へ突き落とされていく感覚だった。
女に手玉に取られた三船敏郎と森雅之の切羽詰まった男の演技も胸に迫る素晴らしさだった。
最後に少し救われるエンディングに妙な安堵感が心に広がっていく感覚。
傷が癒えていく、それが火傷だったのか凍傷だったのか痛覚が麻痺するような映画だった。これも黒澤マジックか。
満足!
有名すぎていつかは観ようと思っていた作品です。
観賞後の感想は、陳腐な言い方になってしまいますが、「これぞ、映画!」と作品のエッセンスをぎゅっと噛み締められた思いがしました。
まず、映像のこだわりが秀逸、個々の役者さんの底力を感じさせる演技も凄かったし、そして、監督自ら書いた脚本の素晴らしさは、原作を超えて、人間の善の部分に光を当てたことだと思いました。
確かに自分に都合の良いように事実を折り曲げている人達ばかりでしたが、よくよく考えると誰も他者が殺したとは言っていないのが分かると思います。死んだ武士でさえ、自害したなんていって(本当は殺されたのに)。そして、真相を知る杣売りの告白を聞いて、正真正銘の事実が一番、滑稽で醜かったことが判明します。更に彼自身もある罪を隠すために嘘の証言をしています。ここまでで、終わりだったら原作どおりなのでしょうが、黒沢監督は最後に小説『羅生門』の一部を持ってきたと共に、人間不信では終わらせない、一筋の光を杣売りに託しました。そして、感動的な雨上がりのラストが冒頭のシーンと対照的でそれはそれは美しかったのです。
真実は藪の中
1950年の黒澤明映画。
当時、若き黒澤はどんな風に世間から見られていたのかは想像するしかないが この力量はスゴイ。
語り口、動と静のコントラスト、そのギラギラさ加減。
テーマそのものは芥川龍之介の小説からだとしても その伝え方、見せ方の上手さ。
羅生門にゴウゴウと降る雨の量、ぶっとい柱のごとく 描きたいモノがゴンとある感じ。
音楽も美術もそれに従うように骨太な印象。
顔に汗を浮かべギランギランした三船敏郎と静の演技の森雅之。存在自体が得体の知れない京マチ子。
役者の存在感の立ち方、立たせ方も素晴らしい。
巨匠と呼ばれる人はやはり早い段階で並ではない輝きを放つのだなぁ と感じ入った次第。
芥川龍之介の知性の鋭さ
総合:85点
ストーリー: 95
キャスト: 85
演出: 85
ビジュアル: 60
音楽: 65
「羅生門」という題だが、実際の原作は同じ芥川龍之介作品でも「藪の中」が正しい。それに付け加えて「羅生門」の話の一部を取り入れている。今作品はとにかく芥川の原作の素晴らしさに尽きる。原作は人が自分を正当化して守るためにはいかようにもなれるという、人のもつ本質的な弱さと狡さが彼の知性によってえぐりだされた傑作であった。そして羅生門を絡ませて少しばかりの救いをもたらしたのが原作との大きな違いか。
映画としてはわざとらしい演技と大袈裟な台詞回しが少々気になる。自然な演技というよりも、自分の主張をしてそれを通すために強調された演技である。最初はそれが随分と大根役者というか安い演技だと思った。
だがそれは演技者による、安い演技をする役柄を演じる高度な演技なのかもしれない。ここは誰もが嘘つきで誰一人として本当のことなど言ってはいないかもしれない世界である。自分の嘘の主張を通すための演技をする役柄を演じているのが出演者なのだから、だからこのような不自然なまでの大袈裟な台詞回しになるのかと思った。彼らは真実を言っているのではなく、嘘を言っているから自然な喋り方が出来ない。真実を隠して自分に都合のいい話をしてそれを信じてもらおうとしているからこその演技。そう解釈すればこの不自然な台詞回しにも納得がいくし、それを演じているのが凄い。
あの赤ん坊が幸せになれますように
この映画を見てるととても人というものに対してどうしようもない無力感を感じてしまいました。なんというのか、不確かなものばかり突きつけられると人間ってどうしても人間不信になってしまうのかもしれないと思いました。
とにかく三船さん演じる山賊やあの夫婦のやり取りのシーンは非常に身の毛立つほどの緊迫感があります。その3人の怪演により人間味が増し、より悍ましい。刀を抜いて殺し合う場面もどれも殺気が伝わってきます。
もう何年も前だというのにこれほどインパクトあるシーンを見ることになるとは・・・本当に鳥肌ものです。
学生のときに教科書に載ってた「羅生門」とは全然違ったように見えましたが、この映画のラストの無力感の中に芽生えた希望を見るとこっちのほうが断然いいような気もします。あの赤ん坊には幸せになってほしいものです・・・。
日本映画の至宝を生意気にもレビューします……
遂に買ったぞ黒澤映画のブルーレイ!!
昔観たDVD版はいかんせん音質も画質も悪くて鑑賞に苦労したが、BDだと新作かってくらいの修復度で顎が外れるほど驚愕。日本語字幕も助かります(笑)。
BDの宣伝はここまでにして、生意気にも黒澤映画のレビューをさせていただきます。
一つの事件を複数の視点で追ういわゆる『羅生門スタイル』の元祖であり、恐らくはそのスタイルを用いた映画の中で最も成功した例。
公開当時は斬新な撮影技法の数々で世界を驚かせたという本作だが、現代映画に馴れた僕のような若造にはその凄さはイマイチ分からず、物語のテンポもまったり見えてしまう。
が、それでも1カット1カット画面端まで力が漲っているような見事な画作りは圧巻だ。たった1つの殺人事件が、時代を超えたテーマを伝える一種の寓話としてとてつもない重厚さで語られるのだ。
原作は芥川龍之介の『羅生門』と『薮の中』。是非とも後者を読んでからの鑑賞をオススメ。
2つの作品を巧みに融合させた上、『薮の中』の結末に驚きのヒネリを加えてテーマを深化させ、人間の卑小さや身勝手さを痛烈に描きながらも、最後に一抹の希望を残すその器の大きさ。まさしく桁違いの映画だ。
真の傑作はいつの時代に観ても面白い!
未見の方は、是非。
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