劇場公開日 2008年11月29日

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「世界にクロサワの名を知らしめた、超テクニカルな傑作ドラマ」羅生門 かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0世界にクロサワの名を知らしめた、超テクニカルな傑作ドラマ

2025年2月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

監督脚本、黒澤明。
芥川龍之介の『羅生門』……ではなく『藪の中』を映画化したもの。

【ストーリー】
しのつく雨の京都。
朽ちた山門に、男が三人雨やどりをしている。
一人は僧、一人は杣(炭)売り、一人は下人。
雨にけぶるはるか前方をながめ、やがて僧と杣売りが、検非違使に呼ばれて証言させられた、奇妙な事件について語りはじめる。
金沢という武家の死体を、杣売りが発見した。
斬殺されたものであった。
三日が経ち、金沢を殺したとする盗賊の多襄丸と、金沢に帯同していたはずの妻・真砂がそれぞれとらえられた。
死体の状況に疑いがあり、死んだ金沢のかわりに、口寄せのできる巫女を呼んだ。
検非違使は白洲にそれぞれを引きたて、証言させる。

初めて見たとき、腰を抜かすほど驚きました。
いや本当に。
大げさじゃなく。
事前にウィキペディア読んで話は知っていたのに驚いたんだからすごい。
法廷劇の形をとったミステリなんですが、三人の事件被告が証言するたびに、真相の印象が変わるというその巧みな構成。
初見単純な事件が、証言が重ねられるごと、それらの輪郭を崩すことなく、どんどんと生々しい人間の本質がむき出しにされてゆく不気味さ。
"ラショーモン・エフェクト"なる社会心理学用語まで作られた、有無を言わせぬドラマの説得力。
もう感服ですわ。

堂々とした武士の金沢と、悪当然とした多襄丸の、実際は情けないありさまや、裏切りが表面化するや開きなおる真砂の嗤う鬼面。
クロサワヒロインは大体二種類に大別できるんですが、お公家眉系のヒロインは必ず内面に鬼が潜んでて、心底怖いですな。
豹変の瞬間は毎回ヒャってなります。

初めて見ておどろいて、次の日に見てまたおどろいて、さらにその週末にもう一回見ちゃいました。
毎回ヒャってなりました。
画面は一見地味ですけど、画角を切り取るセンスが抜群で、白黒ながらCMでもなかなかお目にかかれない美しさ。
数ある黒澤作品でも、ベストに上げたいのが、この羅生門。
今さら自分ごときが薦める必要もないんですが、このえげつない人間描写は、どえらいです。

かせさん
komasaさんのコメント
2025年2月4日

コメント有難うございます。画面の美しさ、同感です。

komasa
everglazeさんのコメント
2025年2月4日

共感とコメントありがとうございました。かせさん様のレビューを拝読して、また鑑賞したくなりました😊

everglaze
CBさんのコメント
2025年2月4日

映画も凄いし、原作の一つ「藪の中」も凄いですよね! ああ、また観たい!!

CB
とみいじょんさんのコメント
2025年2月3日

共感とコメントをありがとうございました。

本当に、三船氏の色気たっぷりです。
と、同時に、京さん、森氏も。
役者すべてのピースがぴったりとはまった映画だと思います。

とみいじょん
2025年2月3日

木枯し紋次郎とかにリスペクトされていると聞きます。実際、ヤク◎の出入りなんてそんなもんだと聞きました。
我が祖父から。

アンドロイド爺さん♥️
グレシャムの法則さんのコメント
2025年2月3日

クロサワ作品は代表作数本しか観てないので偉そうなことは何も言えませんが、これも隠し砦もめちゃくちゃどえらいです、本当に!

グレシャムの法則
活動写真愛好家さんのコメント
2025年2月3日

ホントにスゴい作品ですよね‼️私も高校1年の時に初見して以来、何十回観たか分からない作品です‼️

活動写真愛好家