劇場公開日 2008年11月29日

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「文句なし!」羅生門 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0文句なし!

2021年8月7日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 今でこそ“羅生門スタイル”として映画の一スタイルになっているが、この当時はかなり実験的な内容も盛り込んだ黒澤明の出世作。最初は橋本忍が3日で書きあげたという「藪の中」だけであったが、短いということで黒澤明の協力により「羅生門」をくっつけたという。

 多襄丸(三船)が下手人であることは間違いなく、貴族の妻(京マチ子)が彼に手ごめにされたことも間違いない。人間のエゴと嘘。人間には嘘で固めたほうが楽になるという言葉どおり、殺すことや不貞が本人によって都合のいいように思いこむ。まともな人間なんていない・・・人間不信になってしまう荒んだ世の中はいつの時代にも通ずることかもしれない。

 多襄丸の証言:男の目の前で妻を手ごめ。後に決闘で男を殺した。
 妻の証言:短刀で夫を殺した。
 本人の証言:いつの間にか短刀が刺さっていた。
 杣売の証言:あくまでも短刀ではなかった。

 それに加えて、「殺してくれ」と言ったかどうか、妻の不貞にどう対処したものか・・・などと、各自の尊厳を保つような嘘で固められるのだ。最後には杣売も短刀を盗んだことが暴かれてしまい、坊主までが人間不信に陥りそうになるというラストシークエンス。しかし、最後には温かいエピソードとなるところで極上の作品に仕上がっているのでしょう。

 脚本もさることながら、宮川一夫の撮影技術が凄い。タブーとされる太陽を木漏れ日として直接撮った初めての映画らしいし、雨に墨汁を混ぜた重々しい映像や風そのものを感じさせる葉の影など、細かなこだわりが凄い。

 音楽ではボレロ風の曲が使われていたけど、羅生門スタイルの映画『閉ざされた森』なんてのはモロにボレロだったなぁ・・・やっぱりオマージュだったのか。今の感覚で点をつけたら4点なんだろうけど、スタイルを確立させた功績を称え5点。

kossy
2024年2月9日

あの雨に墨汁!知りませんでした!

talisman
CBさんのコメント
2021年8月7日

> 太陽を木漏れ日として直接撮った初めての映画らしいし、雨に墨汁を混ぜた重々しい映像
へえええ。そうなんですね。

CB