劇場公開日 1961年10月

「骨と皮」夜と霧 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0骨と皮

2020年1月15日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 1955年当時のカラー映像。広大なアウシュビッツの敷地内の火葬場を背景に写真を撮る観光客も多いのだとかナレーションが入ったりする。知らずに見ているとどこかの閉鎖された農場にも思えるところが興味深い。

 一転して戦時中の白黒映像。現存するドキュメントも少ないだろうけど、そこには何も知らされずに駆り出されたユダヤ人の姿。点呼を取ろうにも毎日数字が合わないという現実がそこにはある。収容所内には三段ベッドが狭苦しく並び、飢えと渇きに苦しむユダヤ人たちが生き残るために略奪をも行っていた。そのくらい死と隣り合わせの状況だったのだ。

 最初は過酷な労役を与えられ、人体実験、毒ガス室、すべては死に追いやりユダヤ人を絶滅させようとするナチスの悪魔性が垣間見えるのです。殺戮は敗戦が見えていても続けられ、火葬場において燃料が足らなくなったために土の中へ。死体から石鹸をつくるなどという話も聞かされると、もう石鹸を使うことすら躊躇ってしまいそうだ。

 多分、ドイツ軍が撮ったと思われる記録映像。頭部だけの死骸の山だとか、皮膚がただれてしまった死体だとか、本物の映像には目を背けたくなる。しかし、これがナチスが行った真実の愚行。戦争はこれほどまでに残酷な悪魔を生み、そうした戦争をいまだ続けようとしている者がいる事実。誰が気づく?誰が止められる?こうした映像を見せられても気づかない?

 32分という短いドキュメンタリー映画ではあるけど、人の人生をも変えてしまいそうなショッキング映像のオンパレード。反ナチ反戦の映画も数多く作られているけど、真実に勝るものはない。しかし、この映画を参考に作られた映画もまた真実のはずだ。『シンドラーのリスト』の映像なんて、これそっくりに作られていたんじゃないかと、また観たくなってしまった。

kossy