用心棒のレビュー・感想・評価
全64件中、1~20件目を表示
理屈など不要だし、一大娯楽活劇の傑作だ。
ある浪人が、対立するヤクザ同士を戦わせて全滅させる時代劇。豪快な剣だけでなく、知恵を使って2組のヤクザを唆し、宿場町を荒廃させたヤクザを壊滅させる物語が、実に痛快だ。
居酒屋の権爺に助けられたり、騙されて妾となった農家の娘を救ったことで、主人公も全てが上手くいくわけではない。賢明とは言えない登場人物ばかりだが、みんなコミカルで、親しみがある。
主人公の大胆さ、機知に富んだ策略、大胆な剣劇が、大いに沸かせてくれる。権力を求めて奮闘することが、かえって自滅をもたらすヤクザたちも皮肉めいている。シニカルさとウィットを併せ持った、一級品の時代劇だ。
黒澤作品の中でも、特に娯楽色が強く、とても見やすくて、万人に勧められる。カラッとした明るさがあるし、ドラマティックでタフな映画でもある。理屈など全く不要で楽しめる、本当に素晴らしい一大娯楽活劇だ。
凄い映画だな、って思う。
腕は逹が人情に弱い
頭は切れるが金に縁は無い
その浪人が訪れた宿場町で
利権を争う二つの家を見た。
即座に金になると思ったが
拳銃を持つ男の登場に
浪人の運命は大きく変わる。
ダイナミックでスリリング
人の動きに、動く音楽、
映画の中の全てが面白い。
最初から最後までスカッとする
このエンタメ感は凄いと思う。
そして観終わった後は
身体中砂まみれになる。
いつもの事だ。
※
傑作時代活劇
音楽がいいしテンポがいいのでとても見やすいです。
アクション、人情、諧謔、ピンチと織り交ざり
映画としてよくできていると思います。
ただ、ドラマとか真理とかそういうものはないです。
人を切る理由は一言、「それだけ悪さをしてきたんなら切られても文句はねぇな」
と説明されるだけです。ということで人がバッタバッタ切られますが
ノリは軽く、まさに時代劇です。
何にも考えたくないときに見るとスカッとしてよさそうです。
歩く後ろ姿だけで惚れてしまう
これが黒澤明作品の初鑑賞。重々しい作品かと思っていたが、全くそんなことはなかった。ストーリーに強引な部分はあるけれど、余計な力が抜けつつも見応えのある素晴しい娯楽映画だった。
先ず、何と言っても三船敏郎が格好良い。オープニング、彼の歩く姿に惚れ惚れし、棒切を投げ上げまた歩き出すところですっかり魅了されてしまった。
彼以外の他の登場人物達もみんな面構えからして様になっている。東野英治郎と西村晃を黄門様と刷り込まれている自分としては、飯屋のおやじと小悪党を上手く演じる二人を見ると何とも不思議な気分になる。
そして何と言っても最後の決闘シーンが良い。遠く宿場の端に姿を表す三船敏郎。歩みに合わせるように音が乗り、両者の距離が近づくとともに緊張感が高まる。その頂点で仲代達矢が一言発した途端、あっと言う間に皆を斬り伏せる。そして締めの「あばよ」、これはしびれる。
普段は映画を見直すことをしないのだが、今回は珍しく当日翌日と2回見直してしまった。
(録画にて鑑賞)
…
この作品が荒野の用心棒の元になった事は聞いていたが、この作品自体にも色々な作品の気配を感じた。舞台となる宿場町は西部劇に出てきそうだし、名主の家を覗くシーンは裏窓を思わせる。更に、若い家族を助ける主人公からはカサブランカ的なハードボイルドが漂う。
様々な映画作品が影響し合って時代を作っていたんだなと感じるとともに、制作者の貪欲さが垣間見ることができた気がして面白かった。
黒澤明の最高傑作 に
推す。
なぜならば 脚本がめちゃくちゃだからだ。 え? と思った 皆さんはもう一度 用心棒を見直してご覧になるかよろしい。 行き当たりばったりで全体構想がない。 めちゃくちゃな 脚本です。 それでも面白い。 私は若いころ脚本家 目指していたので 脚本の研究をしていて それに気がつきました。 椿三十郎は三船三十郎と加山雄三との確執 みたいなものが描かれていて、事件の中に人間ドラマが入っていて普通の脚本としてうまく書けています。 だから 傑作になるのは分かります 。用心棒はこのチャランポ な脚本から何でこんなに 傑作になったのか? 黒澤明 自身が「 面白い 脚本から つまらない映画ができることはあるが 、つまらない 脚本から面白い映画ができることは絶対にない」と言ってるのですが自らそれを打ち破ってしまいました。 ・・その面白さがあるから 用心棒 こそが黒澤明の最高傑作だと思うのです 。
あの重厚で芸術的な映像から、娯楽的で野蛮で通俗的な映画を作り出す・・ということは 黒澤明がダントツ世界一だと思うのですよ。
脇に収まらない脇役たち
冒頭のクレジットみて驚いた。カメラは宮川一夫(大映)ではないか。調べてみると「羅生門」も彼の撮影。あれは主演の一人が京マチ子という大映の看板女優だったし、そういうことでいうと小津安二郎の「浮草」と同じ構図である。溝口健二ばりの奥行きのあるショットや心地よい移動カメラ。随所に宮川のセンスが光る。
この作品で、スチール写真が欲しいくらいに好きなシーンがある。ワンシーン・ワンカットのそれは、加東大介と山田五十鈴が三船敏郎を挟んで酒代を張り合う場面だ。これでもかというほどのバカ面を下げた加東、性悪女の山田、冷笑を浮かべる三船、三人の背後でかしこまる東野英治郎。日本映画の黄金期を支えた名優たちが4人並んだショットは壮観だ。日本映画がもっとも幸せだった瞬間をとらえたような写真である。
この作品の加東と山田は、それぞれが役者魂全開といった趣で、ほかの作品では大仰な三船の芝居がクールなことと相まって、撮影現場の盛り上がりが伝わってくるような芝居が続く。
加藤武や西村晃の小悪党ぶりも楽しい。モノクロ時代の西村晃はずるくて悪い奴の役が多く、いちど助さん格さんに懲らしめてもらったほうがよさそうだと思ってしまうのは私だけだろうか。
脇役を観ているだけも楽しめる、こうした作品を撮ることはもうかなわないのだろうか。おそらく、その暴力性ゆえに観ることを拒んでいる北野武の映画がそうした厚みを持っているのだろうと想像する。北野のあとは誰がいるのだろうか。
脚本の複雑さ 全集を借りて復習する 1シーン1カット切り合い三船の...
脚本の複雑さ 全集を借りて復習する
1シーン1カット切り合い三船の見どころを心して鑑賞すべし
山田五十鈴の快演
終盤仲代達矢の死ぬシーン泣いた
黒澤明監督がリーダーの映画と三船のリズム感がやっぱりマッチしてない
どっちも大物すぎて何回も見るほどの魅力的な画面になってないのだ
しかし映画脚本展開面白くて見てしまう 三船が可哀そう
酒樽から酒が流れてしまう、家が燃える 人が狂うなどなんでこうなったという悲惨な場面も面白かった見たことない映画
用心棒の話の流れ
①立ち合い中に三船が味方止める
②八州廻りが来る ワイロ
③休戦隣の村人を殺す→人質の交換 殺人犯(長者の妾)とドラ息子
④妾を逃がす→長者の家どうし放火と酒樽の酒を抜く
⑤三船がつかまる逃亡→かくまってると疑い放火
⑥三船の味方の親爺つかまる→三船が出てきて成敗 銃
拝啓桑畑三十郎様‼️
今世界で抱かれている三船敏郎さんの侍というイメージは9割はこの作品によってもたらされたものではないでしょうか。佐藤勝さんの印象的な音楽をバックに背中姿で現れるタイトルバックから3人のヤクザを斬って「桶屋、棺桶2つ!いや、多分3つだ!!」、仲代達也さん扮する卯之助と知恵比べをしたり、司葉子さん扮するかわいそうな家族3人を助けたり、そのせいで袋叩きにされたり、最後はピストル対刀の対決に勝利し、「アバよ!」と去っていくラストまで、映画の面白さが満喫できるアッという間の1時間50分‼️ホント黒澤明監督は天才‼️
ちなみに「七人の侍」が「荒野の七人」、「用心棒」が「荒野の用心棒」、「隠し砦の三悪人」が「スターウォーズ」になったと言われています。「スターウォーズ」に関しては全てがそうだとは言えませんが、黒澤作品の影響なくしてC-3POとR2-D2、ライトセーバー、ダースベイダーのデザインは無かったのではないでしょうか?そしてこれらの作品でブレイクしたスティーヴ・マックイーン、クリント・イーストウッド、ハリソン・フォードらの名優たちもひょっとしたら映画界に現れなかったかも。そしてスピルバーグ監督やルーカス監督に与えた影響を考え、彼らの「ジョーズ」や「スターウォーズ」で今現在のハリウッドのサマームービー興行が始まった事を考えたら、今世界の映画界、映画人、映画ファンが黒澤明監督に感謝すべきなのです‼️
さすが本家!
小さい頃観ていたTVの素浪人モノ、全部これが起源なんだろうなあ。あの頃「汚らしいオッさんだなぁ」等と思いながら見ていたが今見るとこれがむちゃくちゃカッコいい!「モテ男子に必要なもの。清潔感」じゃかあしいわ!この三船敏郎に勝てるか?と大声を上げたい。白黒ながらカメラワークや話の運びなど、パチモンwのマカロニウエスタンとはやはり一線を画す出来栄え。音楽の佐藤勝。モリコーネとはまた違う独特の劇伴で古いような新しいこの時代劇のイメージを膨らませている。この人「戦争と人間」のテーマも手掛けてるんだね。伊福部昭、宮川泰といい、日本の映画音楽の牽引者も決してジョンウィリアムスやモリコーネに負けてないなぁ。
はじめての黒澤作品
2022/07/18@アマプラ
はじめてちゃんと見た
お勧めされた通り見やすいストーリーではあった
特に音楽がコミカルだから古臭く感じなかった
ただ人物の見分けがつきにくく誰が誰なのかわからなくなったり、昔ながらの喋り方かつ早口だから何を言ってるのかわからない人もいた
所々集中は切らしてしまったけど、
思ってたよりもかなり見やすくて最後まで見ることができた
雇われた以上に働く用心棒
自分の刀一本で全ての仕事をやりきる、また刀一本だけで生きる…
正に、日本の「武士道」「侍魂」ですな… 完全に悪を切る事に徹底する。
だが、悪でも大人になり切らない子供は切らない。
主演の三船敏郎さん以外にも、個性的な悪役、脇役が多く出演する。
ラストも、悪人の散り際が鮮やか!!
何と、あのジャイアント馬場さんも登場するので、ファンは要チェック!
後に、クリントイーストウッド主演で「荒野の用心棒」としてリメイクされるが、
あっちは、普通のアメリカ映画の西部劇的な感じで、失敗気味ですな…
そして誰もいなくなった
始まり方、終わり方、凄く良いんだけど、やっぱり、人情が表に出ちゃうとちょっと。天国と地獄の権藤もそうだったが、正義の味方なんだよね。
主人公は結局なんのために殺戮を繰り返したか?それが分からない。
多分、サムライとして、刀を持っていい気になって、バクチに洗脳された不良農民を懲らしめている。そんなふうに見て取れる。
天保水滸伝みたいな感じ。任侠と体裁は繕うか、所詮、士農工商の農民で、職業的には最低
【”日本人にとって、義侠心とは何であるかを、見事に可視化した作品。”近代邦画が世界に誇る、娯楽大作。】
■内容は巷間に流布しているが、一応・・。
2人の親分が対立する宿場町に、浪人者(三船敏郎)が現れた。
浪人者は、一方の親分・清兵衛に自分を用心棒として雇うよう持ちかけ、敵方・丑寅の子分3人を瞬時に切り捨ててみせる。
だが、清兵衛の謀略を知った浪人は用心棒を辞退。
そんな折、丑寅の弟卯之助(仲代達矢)が短銃を携えて帰ってくる・・。
◆感想
・久方ぶりに鑑賞したが、脂の乗り切った黒澤監督が、時代劇に西部劇の要素を取り入れて、ゴールデンコンビである、三船敏郎とタッグを組んだ作品。
・浪人者が、何故に宿場町に現れたのかは描かれていないが、とにかく空っ風が吹きすさぶ野良犬が人の手首を加えて登場するファーストシーンだけで、その後の展開を予想させる演出の妙。
・最初は、どちらに肩入れするかを楽しむように、両派の抗争を高みの見物する用心棒の姿。
・だが、彼は徐々に真実に気づき・・。
・その彼の姿を見ていた居酒屋権爺(水戸黄門じゃなかった、東野栄治郎)を始めとした町の人々が、徐々に彼に肩入れする姿。
<パワフルでスピーディーな展開の中にユーモアも交え、用心棒の日本刀VS卯之助が使う拳銃の攻防など娯楽性は抜群である作品。
ラストシーンでの、”義侠心とは何であるか・・”を観る側に問いかける作品でもある。>
見始めたら最後、面白くて最後まで一気に見てしまう
用心棒(1961年)、椿三十郎(1962年)を一気に見た。208分が全く飽きることなくあっという間に過ぎ去った。文句なしの傑作である。日本のすべての時代劇の中でもベストの不朽の名作である。いわゆる東映の舞踊的立ち回りのチャンバラ映画に対抗してリアルさを追求した良質の時代劇である。この作品がこれ以降の時代劇に与えた影響は計り知れない。製作田中友幸・菊島隆三、脚本黒澤明・菊島隆三・小国英雄(椿三十郎のみ)、音楽佐藤勝、主演三船敏郎・仲代達矢らのチームを得て、黒澤明がいろいろな面で最も充実していたであろう時に作られたのでアイデア満載の傑作に仕上がっている。もともと、黒澤明はジョンフォードに傾倒しており、何とか西部劇的な映画をつくれないかと思索して放ったのが七人の侍(1954年)、用心棒(1961年)、椿三十郎(1962年)であった。それ故、用心棒(1961年)が、荒野の用心棒(1964年)に、さらに暗黒街映画ラストマン・スタンディング(1996年)にリメイクされたのも当然の成り行きであった。椿三十郎(1962年)はリメイクされなかったが、それ以上に、斬った時の音や、最後の、西部劇の決闘シーンを居合の決闘に翻案した決闘シーンで血潮が噴き出るシーンは内外の映画作家に強烈な影響を与えた。映画館で椿三十郎(1962年)の決闘シーンを見てショックを受けたサム・ペキンパー監督は、銃弾が当たると血が飛び散る手法を初めて採用しワイルドバンチ(1969年)という傑作をものにした。以後、ハリウッド映画では、銃弾が当たると血が飛び散る手法が普通に採用されることとなった。ただ、この三十郎、「用心棒」のやくざならまだしも「椿三十郎」では四人の若侍を助けるために罪のない侍たちを問答無用でめったやたらに斬り殺す点はどうかと思うが、所詮絵空事の時代劇なのだから批判するのは野暮というものかもしれない。この「三十郎」キャラ、時代劇においては大変魅力的な人物像であり、三船敏郎も気に入っていたのだろう、質的には黒澤明作品には及ぶべくもないが、岡本喜八監督作「座頭市と用心棒」(1970年)、稲垣浩監督作「待ち伏せ」(1970年)に続いていく。これらを含めて、「三十郎」四部作ということができる。佐藤勝の音楽も、これなしでは黒澤作品は成立しないくらいいつも素晴らしいのだが、これらの作品でも、荒野の用心棒(1964年)でセルジオ・レオーネがエンニオ・モリコーネに真似をさせたくらい画面と一体化しており快調である。60年前の作品だが、黒澤明が絶好調のときに作った作品ゆえに、今でも、見始めたら最後、面白くて最後まで一気に見てしまう、心地よい余韻の残る良質の作品である。これらを超える作品はいまだ無い。蛇足だが、監督が違うとこうも異なるものか、同じ脚本を使った森田芳光監督の椿三十郎(2007年)は見る必要のない駄作である。
「デップー2」にも負けない無茶なセリフ!
《お知らせ》
「星のナターシャ」です。
うっかり、自分のアカウントにログインできない状態にしていまいました。(バカ)
以前の投稿の削除や取り消しもできないので、
これからは「星のナターシャnova」として
以前の投稿をポチポチ転記しますのでよろしくお願いいたします。
==============
時代劇経験の浅い人には
まず、こちらから観る事をオススメします。
いや〜〜愉快痛快!笑える無茶なセリフがてんこ盛り!!
話は単純で狭い宿場町で二つの派閥が権力争いをするもんだから
普通の庶民や農民は大迷惑!!
通りすがりの素浪人(三船敏郎)が両者をうまく丸め込んで
お互いに殺し合いをさせて何とか一掃しようとする話。
「午前10時の映画祭」を紹介する「事務局オフタイム」と言う
YouTube配信コンテンツで、
「黒澤明が本気で興行的に当たることを狙って作った映画」と
紹介されていましたが本当に間違いなく面白い!!
マジな話、月に8本ほど映画館で映画を観て
先日も「デットプール2」で
大笑いした中途半端な映画好きとしては
いや〜〜面白い!!
「デップー2」にも負けない無茶なセリフ!
「一人殺そうが100人殺そうが
縛り首になるのは一回だけなんだよ!」(笑)
古い映画なんかイマイチでしょ〜〜
なんて言う先入観は邪魔でしかないわ!
でね、私が三船敏郎さんを初めてきちんと観たのは
「天国と地獄」の事業で大成功した少々傲慢な金持ちワンマン社長役。
その次に見たのは「七人の侍」の腕っ節は強いけど、
信念も理想もまだ無い粗野で野良犬の様な男。
この「用心棒」の三船さんは只者では無い強いオーラと、
適度に狡猾な一面もあり、それでも憎みきれない愛嬌と
本当は結構良い奴じゃん!みたいな一面もあって
ビジュアル的にも
体格もでかいし、鼻筋も通って目力も半端ない!
世界が魅了されたMIFUNE!の魅力が満載。
海外で受けるのはわかるわ〜〜マジ、カッケー!!
是非是非オススメです!!
@もう一度観るなら?「また劇場で観たい!」
計算しつくされた、緩急のバランスの見事さ。
先が読めそうで、読めない展開。
からっ風吹きすさぶ、がらんどうな宿場町。
宿場町の住人の、鬱々とした怒り、あきらめ。ー名主のたたく太鼓の音にすら、単なる仏への祈りというより、力任せになぶりたたいているようで、心の底にしのぶ怒りを響かせる。
欲の皮の、限界まで突っ張ったやくざな者たち。
悪戯小僧のような茶目っ気のある浪人。ー正義感と優しさがベースにあるのだが、正義感丸出しでというより、ちょっとかき回してやろうかい、みたいな、騒動を楽しんでいるような、余計なお世話的な動機がちらほら透けて見える。
すべてが、浪人の手の平の中で回りそうに見えたとき、
そのからくりを見抜く目をした男が帰ってくる。
そして…。
冒頭、雄大な山脈を遠景に、一人の男が歩いていく。
それだけで、引き込まれる。その音楽のリズムと、男の背中の揺れと、カメラワークの妙。
そして、棒を投げて、行き先を決める様。男の人生をー勝手気ままな放浪の人生をそれだけで説明してしまう。
この時、浪人がさりげなくジャンプして投げている様がかわいい(笑)。重厚な雰囲気を漂わせる人物だが、重々しいだけじゃないんだ、この人(クスっ)。
お太鼓持ちの十手持ち、現状にいら立っている飯屋の親父と、余裕をかます浪人、いきがるやくざ者。ラスボスは女郎屋の女将。
そのアンサンブルが、うまくハーモニーを醸し出し、混声合唱団の調べを聴いているかの如くはまる。
茶目っ気のある浪人以外、コメディを演じているのではないのに、(笑)をさそう。
要所・要所に挟まれる、スピーディな殺陣。
親子の人情シーン。
泥臭く這いずり回るシーン。
浪人の作戦も、うまくいきそうに見えて停滞し、またうまくいきそうに見えて破城する。ハラハラドキドキ…。
飯屋の親父と浪人の掛け合いが、浪人の無鉄砲を諫め、かばう父のようにも見え、この騒動が横糸なら、縦糸のように一本筋を通す。
そして、さりげないシーンで表現する緊迫感…。鬼気迫る女郎たちの演奏・踊り。ラストの鬼気極まった名主。
そんなシーンを、ズームで撮ったり、俯瞰したり、遠近法を駆使したり。飽きさせない。
決着がついた後も見事。
ほっとしたのもつかの間、名主で緊張を高め、そして、あの台詞。この爽快感。
役者は、これもまた、『ウォーリーを探せ』状態。あんなところにあの人が…。
三船氏はもちろん、東野氏がしっかり、三船氏の相方を務め、この宿場町の騒動を観客が共感しやすくしてくださる。怒った顔、呆れた顔、心配する顔。意外にも(失礼!)亥之吉を丸め込むように度胸がいい。
山田さんは、「着物に線が出るから」と、着物をお召しになるときには、現代的なランジェリーではなく、昔からの和のランジェリーだけをつけたと聞くぐらい、”粋”を体現なさった方。なのに、この映画での業突く張りの婆ぶり。恐れ入りました。
仲代氏は、切れ味鋭い男を演じてくださったが、『椿三十郎』と比べると、甘ちゃん。『渡り鳥シリーズ』とかに、出てきそうだ。だが、『天国と地獄』等でも違う印象の役を演じていらっしゃって、そのバリエーションの広さにしびれてしまう。
そして、藤原氏。最後の最後に本領発揮。
『椿三十郎』と姉妹版だとか。
こちらが先なのだが、私は後に見てしまった。
だからか、よりコメディタッチな『椿三十郎』より、こちらの方が話の展開が緊迫感にあふれていた。
『椿三十郎』の方は、加山氏演じる若侍達が、ぴょこぴょこついてきているから、多少説教臭くなっているが、その対比がおもしろかった。こちらは、東野氏演じる親父がハラハラしていたように、見方によっては騒動を大きくしている悪戯小僧。より、野性味があふれていた。
仲代氏も、己の才能にうぬぼれて居るところは一緒だけれど、こちらが甘ちゃんに比べて、『椿三十郎』では、ある意味中間管理職。上司を手玉に取ろうとして、連座して失墜というあはれがにじみ出ていた。
両陣営を手玉に取って、問題を解決しちゃうスタイルは同じだけれど、素材をいろいろな味付けで料理できる。やはり、黒澤監督はすごい。
全64件中、1~20件目を表示