劇場公開日 1948年

「理性vs野性」醉いどれ天使 えらさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0理性vs野性

2014年9月16日
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悲しい

記念すべき三船敏郎黒澤デビュー作、そして志村喬初の黒澤作品主演級のタッグ!『生きる』と『椿三十郎』好きとして上がらないわけがない!そういう訳でハードルを上げすぎてしまった感じはある。結果的に正直超えて来なかった。でも主演の三船は『我が青春に悔なし』の原節子級の存在感だ。

「病気への一番の特効薬は理性に従うことだよ」というような志村の台詞がとても印象的だ。今回三船はヤクザという生き方を理性で鎮めようとする役柄を演じている。でも若き日の彼の立ち姿から溢れ出す威圧感、力強さ、荒々しさは到底理性で敵うものではないと、見ていれば分かるあたりが流石の演技力及び人間力。次回作『静かなる決闘』では正に真逆の役柄、つまり理性で自分を律し切る医者の役を演じているが、こちらにも説得力があるあたり本当すごい。出始めはあんなに力強かった三船が結核でどんどん衰弱していく様は恐ろしい。健康な身体と地位や名声を失った男の末路は物悲しいが、太く短い生き様には若干の憧れも感じさせる。結果から見れば愚かとしか言いようがない男なのに、何故か憧れを感じてしまったのだ。

えら