やさしい女のレビュー・感想・評価
全16件を表示
ドミニク・サンダに魅せられる
ちょっと、良く解らなかったです。
でも、面白くないとか、解らなすぎて不快に感じるということはなく、
淡々としたストーリーを淡々と観ている。
ただ、ドミニク・サンダの魅力のなせる業なのか、終始目が離せない。
バスタブとテレビの間を、ピョンピョンと跳ねながら歩く仕草が、猛烈に可愛い。
若さゆえの奔放さと柔順さと、まだまだ完成されていない魅力的な女の子、
結婚するのが早すぎたのね。
なんにせよ、男の器の小ささに呆れる。
これも映画史におけるひとつの宝
映画史上のベストディレクターの一人、ロベール・ブレッソン‼︎
これは当時17歳のドミニク・サンダのデビュー作となったブレッソンの長編第9作。何故かこれまで機会がなく今回が初見。
しかし何という孤独な少女。愛を知らぬまま結婚し何も得ることなく自ら命を絶った。
クソのような夫が妻の死体を前に夫婦生活を語るスタイル。クソが看板の自分と同じクソ。妻が死を選んだ理由などわかるはずもなかった。
う〜ん、これもまた何の救いもない悲劇。
紛れもないブレッソンだった。
それにしてもドミニク・サンダ💙
ベルトルッチの『暗殺の森』『1900年』、そして今作で、映画史に、そして自分の脳裏にしっかりとその姿を刻んだ。
優雅で文学的な作品
理解し合えない男女のすれ違い、普遍的なテーマなのに普遍的じゃないのが凄いところ。
今じゃ都内でたまにみると心が躍るクラシックカーや、インテリアも洋服も、映画も、演劇も、本も、立居振る舞いも、カメラワークも何から何まで素敵だった。
「多くの女性が結婚を望む…」
「望んだとしても猿真似よ」
このセリフにドキッとした。セリフ(翻訳)が秀逸だった。言葉一つ一つを噛みしめて、、、。なんだか優雅な映画時間でした。
映画より本のほうがいいかも。
夫目線で語り口調の映画。
結婚したがる女は多いが、結婚したい男?若くて可愛くて理解不能な女子に惚れちゃうと独占したくなるってことなのかなぁ。
Dos Monosのソウシットさん ありがとう
主演女優の裸体が見たくて、ガキの頃、見に行きました。ポスターの緑の衣装、なんとなく覚えています。しかし、この頃のフランス映画って、暗くて、分かりにくい映画ばかりで、あらすじなど全く覚えてませんでした。ただ、お尻が見える場面は鮮明に覚えてました。今回も前半は退屈で寝ていました。
閑話休題 この映画の上映後、トークショーがあったのですが、ソウシットさんの映画鑑賞の力量に驚愕しました。プロだから当たり前かもしれませんが、難しい言葉を使わずに、カット毎に、私でも納得の行く表現をしてくださいました。彼の話を聞いただけで、この映画、もう一度見たいなぁって思いました。
【まあ、ドストエフスキー】
2021年11月のNHK・Eテレの100分de名著は、ドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟を取り上げているのだけれど、このタイミングで、この作品の公開は何か理由があったりするのだろうか。
世界的に、夫婦の在り方も含めて家族というものに対する考え方は、ここ10年から20年で随分変化したと思う。
それでも、世界のあちこちにパターナリズム(父権主義)的な考え方は残り、そして、コロナ禍の下、DVが増加したという報道を目にするにつけ、暗い気持ちになる。
この作品はドストエフスキーの1876年作の「やさしい女」を1960年代のフランス、パリに置き換えたものだ。
1960年代は、アメリカで女性解放運動のムーブメントが起こり、それに呼応するかのように、こうした女性や妻の抑圧された状況の物語を映画として世界の人々に観せようとしたのだろうか。
この原作は、ドストエフスキーの作品の中でも、短いのはそうだが、読みやすいし、登場人物が少ないし、なんといっても、現代の僕たちの社会と比較して、登場人物を考察することも容易で、多角的な見方が出来そうにも思える。
映画は、更に、現代に置き換えられているので、今の価値観で、怒りが込み上げてくる人もいるだろうし、この2人の関係性や、妻の行動、そして、メイドの振る舞いについても疑問が出てきてもおかしくないように思う。
僕は、夫のパターナリズムはもとより、妻の行動の仕方や、気持ちの表現に、飛び降りる前にもっとチョイスがあるのではないかと考えたりもした。
よく、女性は男性に対して、単に話しを聞いてほしいだけで、助言など要らないという話しを耳にしたりするが、男女や夫婦の関係を変化させようとするのであれば、そんな主張で良いのだろうかと考えたりもする。
蛇足的な深読みだが、ちょっと怖いなと思ったのが、ベッドに横たえられた妻の脚が、両足首の所から足にかけて、ベッドのフット部分の縦のスチール・ポールの外に出されていて、死んでもなお、足の自由を奪っているように見えて、妻の抑圧された状況をこれでもかと見せつけているような気がしてちょっと怖くなった。
90分にも満たない作品だが、現代の僕たちの社会の抱える問題にも通じるようで興味深い作品だと思います。
ドミニク・サンダに捧げたブレッソン監督の孤高の映像世界
「スリ」「白夜」と同じくドストエフスキー原作のブレッソン映画だが、主演のミステリアスで魅惑の美女ドミニク・サンダの存在感が圧倒的。回想による夫婦の過去がカットバックで描かれているのと、心理状態のナレーションが説明的ではないブレッソンの演出が、深遠なる映画文体の簡潔さと探求を併せ持つ。映像に吸い込まれるような感覚を得るブレッソンの孤高の世界。ラスト、サンダの顔を超アップで捉えたショットが巧い。
1986年 11月25日 宇都宮松竹ミヤマス座
沈黙していても
お金、安定した生活のために結婚した若い女性との結婚生活を、夫の視点から語っている。
夫の物語がポジで、沈黙している妻がネガなのかな。
年配のお手伝いさんが、押し殺した何かを感じさせる。
ドミニク・サンドを観に行きました。
建物や内装、車、街並み、本、映画、シェイクスピア劇も映画を物語っていました。
切ないカネの話
タイトルのバックに映る夕闇のパリ。走っている車は60~70年のもの。郷愁で胸が一杯になる。フランスが、パリが、まだ世界の文化に多大な影響を持ち、日本人にとってはまだまだ憧れだったころの風景である。
この華やかで先進的な消費社会の光景がスクリーンから消えると、その墓場ともいえる質屋が映画の舞台として現れる。そして、始まるのは世知辛い銀行員くずれの質屋とその若く美しい妻の味気ない結婚生活なのだ。
川本三郎がその著書で、成瀬巳喜男の作品に金の話が良く出てくることを指摘しているが、この日観たもう一本のロベール・ブレッソンの作品はその題名も「L'argent(カネ)」であり、両作品ともカネに翻弄される人間を描いたものだった。
ブレッソンの映画が、川本による成瀬論と同じく、カネにまつわる話で特徴づけられるのかどうかは知らない。しかし、この日の新文芸坐の二本立ては両方とも切ないカネの話であった。
この夫婦は両者ともにカネに苦労した経験を持ち、カネの使いみちにこそ自由を見出している。不慣れな質草の査定を自分でやろうとするのは、妻(ドミニク・サンダ)のそうした欲求の表れに他ならない。
老婆の持ち込んだ二束三文の品と引き換えに、何枚もの紙幣を渡してはベテラン質屋である夫の不興をかってしまう。価値を自分が決める優越感と自由を謳歌することは、この夫により許されてはいないのである。
そして、仮に質草の値決めをする自由が与えられたとしても、居室の内装を自由にさせてもらえない不満を埋めるにはそれだけでは不十分であり、質草の不相応な評価を自分への好意と受け止める男性との恋は、気づまりな結婚生活を束の間忘れさせるに十分魅力的であっただろう。
このように映画は、一人の若妻が結婚生活に絶望する過程を綿密に積み上げて描いていく。最後にこの夫婦がどうなるのかは大した問題にはならない。描きたいのはこのプロセスなのだろう。なにか約束された結末に向かって進んで行く映画ではない。過程に過程を積み重ねていくというタイプの作品である。
当初予定していたBlu-rayでの上映から、35ミリフィルムでの上映に変更した新文芸坐に感謝する。
ドストエフスキーだなあ
なんかストーリーは良く解かんないんだけど、面白くて観ちゃう。原作ドストエフスキーだから文学っぽい感じで「ドストエフスキーだなあ」って感じがする。なんか、ちょっと暗めで、でもちょっと面白くてって感じ。
時系列が混ぜこぜになって出てきて「え、どうなるの?」と思って観てられんだよ。それでみんな無表情で喋るから、何考えてんのか想像しながら観るしかないの。
ラストがかっこ良かった。うわーって思った。
やや混乱気味の私
『ラルジャン』に対しては、複雑な思いで低評価にした覚えがあります。複雑というのは、自分の混乱を回収できずにいたという意味であります。そして今回の『やさしい女』は、やはり複雑な思いで高評価にしています。そして、こういった低評価と高評価を行き来する自分にただただ混乱するばかりであります。
あまり内容について書きたい気分にもならないのですが、しかし劇場を出た後、否応なくこの映画の世界を引きずっている自分がいて、この引力に素直に従ってみようと思った高評価なのです。
そしてこの世界に引きずられた私は、どこか自分が失っていた感覚を、その喪失感とともに味わっているのでありまして、その感覚こそは自分を自分たらしめていたもののように感じているのであります。
人と人とが軋み合ってしか一緒にいられないこの感覚こそが、何より自分が大切にしていたものだったことを思い出しました。
ドミニクサンダ
ブレッソン。パリのネオンを捉えたタイトルバック。街の交通、アパルトマンの扉、窓、金の天秤、質屋、解剖学、動物園、映画館、ハムレット、そしてドミニクサンダが着続けるカーキのロングコート。何だかラルジャンの厳格なフレーミングに対して緩い感じ。あんまりラルジャン覚えてないのだけれども
全16件を表示