劇場公開日 2025年10月24日

「怒り」もののけ姫 赤ヒゲさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 怒り

2025年11月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

1997年公開時から28年ぶりの4Kリバイバル、IMAXで観るという幸せな映画体験でした。傑作・秀作揃いの宮崎アニメの中でも特に好きな作品ですが、公開時から時代も変わり、自分自身も歳を重ね、当時と感じ方の違いがあったのも楽しめた理由かなと思いました。「アバター」(09)など色々な映画に影響を与えたと思える映像表現、例えば「生と死をつかさどる」シシ神という存在を、森を歩く足下の草が瞬く間に生長し枯れるシーンで表現する創造力に思わずため息が出ます。かと思えば、森の豊かさをコダマの数や表情・しぐさ、独特の音で表現し、とりわけサン(石田ゆり子)をおぶったアシタカ(松田洋治)のマネをしているコダマのシーンには、子供らを楽しませたいという宮崎監督の情熱を感じて嬉しくなりました。人類が地球の生態系へ影響を及ぼしているという「人新世」が提唱されたのが2000年、アル・ゴア氏の「不都合な真実」が2006年、そして近年、誰もが実感している異常高温や暴風…。それらに先駆けて今作が作られていることにも改めて感じるものがありました。冒頭に書いた感じ方の最も違っていた部分は、宮崎監督の「怒り」を当時よりも強く感じたことでした。アシタカやサンという若者たちや深山に300年も棲んでいる山犬・モロの君(美輪明宏)の視点で、エボシ御前(田中裕子)やジコ坊(小林薫)といった大人たちの振る舞いを鋭く批判しているように感じました。様々な想いが詰め込まれていて、語り尽くせてない部分も含めて、これから何度も思い出しながら反芻していきたい作品でした。

赤ヒゲ