「共存する難しさそして大切さ」もののけ姫 KZKさんの映画レビュー(感想・評価)
共存する難しさそして大切さ
ジブリ作品リバイバル上映として久しぶりに鑑賞した。
ジブリ作品を全て観てきたわけではないがこの作品は千と千尋と並んでジブリ作品の中で1番お気に入りの作品である。また劇場で観られた事に感謝したい。
この作品を当時劇場で観たのは小学1年生の時。これが不思議なことにあれから20年以上の時が経っても根本の感想は変わらない。もちろん一つ一つのシーンやセリフに重みを感じたり追求する事はあっても、根本の共に生きる難しさそして大切さというのをこの作品では深く胸に響く作品だと僕は捉えて楽しんでいる。
いわばこの作品は子供から大人まで同じような感想を抱きながら楽しめるまさにジブリ作品の中でも傑作ではないかと僕は評価している。
最大の構図としては人間VS森に住む動物や精霊たちなわけだが、この作品内では人間同士も争うシーンがある。
各々がそれぞれのテリトリー内で満足し生活してればよいのだが、人間には欲深さがある。新しい理想を描き、それらを実現できる技術を得ればテリトリーを広げ、時には動物たちが住む森を奪い、時には他所の村を襲い支配しようとする。
これらを止めるには、サン率いる森に住む動物達とその森を襲う人間達が殺し合うしかないと互いに考えるわけだ。
ただ殺し合いに制すればそれでいいのか。それはやはり違うわけだ。制したところで、必ず破れた側には恨みが残り復讐に囚われる。制したものはさらなる支配と暴力でこの先も制する事しかできないわけだ。
そこでアシタカはどうにか共存する事はできないか必死に戦うわけだが結果としてはアシタカの力だけではなしえず、シシガミ様を怒らせ人間をそして動物を、そして大地の一部を奪いゼロにし、残された者でもう一度やり直すチャンスを与えてこの作品は終わるのである。
この終わり方がこの作品の醍醐味であり一番好きなところである。
約2時間互いに戦い続けるわけだが答えは出ずに終わる。それは未来に託されるわけだ。
だからこそシシガミ様はモロの君や乙事主といった長年恨み戦い続けることで生きてきた者の命は休ませ、アシタカやサン、モロの子達といった共存しあえる事を成し遂げる力のある若い世代のもの達を生かしチャンスを与えて終わったんだと思う。
だからこそ愛し合っているアシタカとサンは最後は離れる事を決断したのだがそこは寂しい別れではなく、平和への一歩を踏み出した誇らしい別れだからこそ何度見ても胸に響く。
この作品は決してもののけ姫の世界ではなくまさに現実世界でも同じ事がいくらかあるだろ。
世界を見渡せば、いまだになくならない戦争はもちろんそうだが、一人一人の小さい社会、コミニュティを振り返っても互いに理解し合い共存し合えてる社会ばかりか。決してそうではないと思う。
互いに理解する事は本当に難しい事である。時には反する者が現れそういう者とも共存し合わなくてはいけない。多くの者はそれを我慢する事で共存する道を選ぶが我慢は積もり積もれば争いとなり本当の共存社会を作れたとは言えないことも多々あるだろう。
おそらくこのもののけ姫が製作された時も、そして今もまだまだ共存しあえる社会は成し遂げることができず、これからの課題でもある。
だからこそこの作品を見て、共存する難しさを感じながら同時に共存しあえる大切さ美しさも感じながら諦める事なく挑戦し続ける事が大切なんだとこの作品を観ると毎回思い胸が熱くなる。