「夢見る全ての子供たちと、かつて夢見た全ての大人たちへ」メリー・ポピンズ miccoさんの映画レビュー(感想・評価)
夢見る全ての子供たちと、かつて夢見た全ての大人たちへ
恥ずかしながらもういい大人なのに今まで観たことがなかったのですが、午前十時の映画祭で上映されると聞き、初めてはぜひスクリーンで観たい!と喜び勇んで行ってきました。
まずは結論。こちらの作品、まさにディズニー黄金期の最高傑作の1つと言っても過言ではありません。
これまで数多のディズニー作品のビデオを何千回と観てきたはずなのに、なぜこの作品を知らずに生きてきたのか…悔しい…
子供の頃から歌だけは知っていましたが、まさかオープニングから涙が出そうになるとは思いませんでした。
何よりジュリーアンドリュース演じるメリーポピンズの存在感とその歌声のなんと素晴らしいこと!
彼女が微笑み、その美しい声で歌いだす度に、なぜか涙が溢れて止まらなくなってしまいました…
キャラクター達の魅力的でコミカルな立ち居振る舞いと、それを引き立てる色鮮やかでユーモラスなアニメーション。
「そうそう、やっぱりディズニー作品はこうでなくちゃ!」と膝を打ちたくなる。そして思わず手拍子や拍手をしたくなる。
そこにはいつの間にか、テレビに齧り付いて夢の世界に没頭していたあの日の自分がいました。
素っ頓狂なミュージカル?子供向けの映画?いえいえまさか。
本作は、もちろんお子様も楽しめる作品ではありますが、根幹は『ある家族の再生の物語』であり、それと同時に『夢見ていた大人(=観客)達に夢を取り戻す勇気をくれる物語』なのです。
文明社会で必死に生きる大人たち。「現実を見ろ」と言われて育てられた大人たち。そんな私たちでも、たまには夢を見たっていいじゃないか。あの日の夢を忘れずにいたっていいじゃないか。そう思ってもいいんだと勇気を貰える、お守りのような作品です。
そして願わくば(誠に不躾であることは承知の上ですが)、この作品に込められた思いや願いが、「世情を見ろ」と言われてポリコレの波に攫われ続ける現代のディズニーに、どうか届いて響きますように…