めまい(1958)のレビュー・感想・評価
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高度な映画技法に“めまい”がする
世界の映画史において“サスペンス映画の神様”もしくは“帝王”とも称されるアルフレッド・ヒッチコック監督のミステリーサスペンスです。物語が映像で語られる映画表現の面白さを堪能できる作品の一本でしょう。
「めまい」の中でも特に有名なのが、ジェームズ・スチュアート演じる高所恐怖症の主人公ジャックが、螺旋状になった階段の上から階段の下を見下ろした時に急激に起こすめまいを表現したシーンです。キャメラがトラックバックしながら急激なズームをすることで、めまいを起こしたような効果を生み、観客も一緒になって同じような感覚に襲われます。
さらにこの映画の特筆すべきところは、主人公の視点とともにその情緒不安定な心理と一緒になって物語の中に入り込んだような感覚におちいる作りとなっているところ。説明的な台詞ではなく、視覚的に物語や主人公の心理が描写されていきます。
そして主人公の心理は、次第にこの世では不可能な性的イメージを求めるものとなり、妄想の中の美女あるいは死者を蘇らせようとするような、ある種の偏執狂的な性的フェティシズムへと変化します。まるで主人公とともに観客も夢を見ているような、不安定なめまいを起こし続けているように。ヒッチコックの発想力、想像力に舌を巻き、見る者の心理も試される名作です。
謎の女性の虜になる男の愛欲の顛末
サスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコックの代表作の一本に挙げられる、監督59歳の時の心理サスペンス映画。一般的に評価が高い作品には、イギリス時代の「三十九夜」「バルカン特急」、ハリウッド初期の「レベッカ」「海外特派員」「疑惑の影」、中期の「見知らぬ乗客」「ダイヤルMを廻せ!」「裏窓」とあり、この「めまい」は「北北西に進路を取れ」「サイコ」「鳥」の時代の後期の名作として位置づけられます。それに同じ題材の映画化「暗殺者の家」と「知りすぎていた男」、ヒッチコック70代の最晩年の「フレンジー」「ファミリー・プロット」を加えれば、代表作の殆どを網羅したことになるでしょう。個人的には中期の三作品が好みですが、ヒッチコック監督が亡くなり21世紀になって「めまい」の評価が見直されてきて、一例ではアメリカの映画団体AFIが選出したアメリカ映画ベスト100の中では第9位の扱いです。これに続き「サイコ」「裏窓」「北北西に進路を取れ」が100位圏内に選ばれています。このことは映画制作に精通した人たちが、つまり製作側の模範となる演出や撮影技術の斬新さから、その他の諸要素も含めて、映画としての完成度の高さを客観的に称賛した結果であり、簡単に言えば玄人受けする映画であると言えると思います。
この作品には、アメリカ初期・中期作品のようなストーリー展開の面白さや起承転結のスッキリした完結性はありません。一度の見学では計算された脚本の凄さに気付けない巧妙な話術ゆえでもあります。また「サイコ」のような観客を怖がせるショッキングなインパクトも特になく、殺人罪に問われるべき犯人も逃したままに終わり、主人公が騙されて犯罪に利用される事件も解決しない状態です。勿論心理サスペンスに集約した内容ですから、「北北西に進路を取れ」のようなアクションシーンの醍醐味も無く、地味に話は進みます。主人公スコティが高所恐怖症になるプロローグから、友人ギャヴィンの妻マデリンの尾行を依頼されて恋愛感情を抱くようになるのも極ありふれた流れでしょう。それも、若くして命を絶った曾祖母カルロッタの亡霊が取り憑いたようなマデリンの感情のない表情の冷たさが不倫恋愛を盛り上げることなく、最後は謎のまま飛び降り自殺をしてしまう。スコティが救えなかった後悔が、元々の高所恐怖症に加えて更に精神衰弱を悪化させて入院してしまう前半部分は、多くの謎を残したままで、物語として決して分かり易い面白さとは言えません。謎のキーワードは、“私を失ったら愛が本物だったと分かるはず”。
ところが、この映画の本当の怖さと面白さは、スコティが完治しない状態で退院して、亡くなったマデリンの幻影を追い掛けてしまう後半にありました。それもマデリンに瓜二つの容姿とスタイルをもつジュディという女性に出会ってからの異常な行動には、性的な衝動も含めた男の生々しい姿が表現されています。ヒッチコック監督のサスペンス映画に恋愛要素があるのは珍しくないのですが、この作品のように描かれていない部分で想像させる演出は貴重です。サンフランシスコ市街地を見下ろすロングショットに続くマデリンの車が駐車してある邸のシーンから、謎解きの面白さで観る者を引き付けます。スコティの眼からはマデリンが映り、近づくと車を買い取った夫人が現れる。映画だけができる錯覚の表現は、初めて出会ったレストランでも、スコティはエルスター夫妻がいた席にマデリンを見てしまう。カルロッタの肖像画が展示してある美術館、ショーウィンドウに飾られている花のブーケと記憶をたどり、偶然にもジュディを見掛けて追跡するスコティは、マデリンの幻影に取り憑かれた男になってしまっている。対してジュディは、カルロッタの亡霊に取り憑かれた芝居を演じたマデリンではない。この立場が逆転した男女が再び恋愛関係を築こうと苦悩するところが、ヒッチコック監督の狙いであった。ジュディをデートに誘い、グレーのスーツを着たマデリンに変身させていくスコティの執拗な要求が病的になる怖さ。髪を染め化粧も変えて髪型までこだわるスコティの性的な欲望が偏執的に描かれている、不思議な感覚です。完全にマデリン仕様になったジュディと熱いくちづけをするスコティの恍惚が、回転する背景の記憶と重なる映画演出の見事さ。そして、次のカットで黒いドレスに変身したジュディとスコティの関係を破壊するネックレスの登場で、物語が急展開するクライマックスの緊張感が素晴らしい。
ジュディがスコティを忘れられずサンフランシスコにとどまり、いつか再会できるのではないかと待っていた女心と、ジュディではないマデリンを愛してしまったスコティが、結ばれた後のこの結末は、肖像画に描かれていたネックレスをジュディが身に付けたことでマデリンの呪いがかかる最後を迎えます。スコティはネックレスひとつで、友人ギャヴィンが仕組んだ妻マデリンの投身自殺に見せかけた遺産目当ての殺人事件の証人役に仕立て上げられ、騙されたことに気付く。目の前にいるジュディは、マデリンでなくギャヴィンに雇われただけの共犯者に過ぎない。それでも、真相を確信して怒りに震えるスコティが鐘楼がある塔の頂上で高所恐怖症が治り、ジュディに心を許す瞬間のラスト。一気になだれ込むような結末の後の虚無感含め、見事なクライマックスです。
主演のジェームズ・スチュアートは、終始精神疾患の難役を好演し、マデリンの儚い美しさの虜になる男の欲求を巧みに演じています。マデリンとジュディの二役のキム・ノヴァクも演じ分ける巧さをみせて、何よりマデリンの時の美しさは「ピクニック」「愛情物語」の代表作に並ぶ存在感です。キャスティングで唯一の物足りなさは、バーバラ・ベル・ゲデス演じるミッジの扱いでしょうか。マデリンがスコティのアパートから出てくるところを偶然目にして嫉妬を膨らませ、カルロッタの身体に自身の顔を描いた油絵をスコティに見せる痛い女性は、それ以上物語に加わることはありません。これはスコティとマデリンとジュディの3名の登場人物で語り、完結する恋愛心理サスペンス映画の形を取っています。ソール・バスのタイトル、バーナード・ハーマンの音楽も良く、最も見事なのはロバート・バークスの撮影です。坂道を走る車からのサンフランシスコの街並み、建物を捉えたショットの構図の完璧さ、そして会話時のカメラアングルの的確さまで、模範的なカメラワークです。特殊効果の技術者から撮影監督になったバークスの功績は、「サイコ」(ジョン・L・ラッセル)を除いて「見知らぬ乗客」から「マーニー」までの多くのヒッチコック作品があり、高レベルの安定感と斬新さを兼ねた映画遺産です。
最低でも連続して2度見直して、ヒッチコック監督の演出の見事さ、脚本の構成力、カメラワークの素晴らしさ、テクニカラーの美しさ(レストランの赤い壁)、照明の丁寧さ(本屋さんで店主からカルロッタの歴史を聴くシーン)、墓場のシーンその他での幻想的ぼかし、主演ふたりの演技を堪能して欲しいと切に思います。
今日初めて気付いた。嘘話でこの映画は二回目でーす。
キャバレロの映画なんて言いましたか?そうそう『愛情物語』だよね。音楽は『トゥラブ・アゲイン』だな。そん時の主演女優さんだね。髪金の女優さん♥ドリス・デイより先?マリリンは髪金じゃないって親父言ってたし、白黒テレビだったし。
以上のお話しは嘘でした。『愛情物語』は白黒でーす。(カラーだった)だから、この映画を
親類の家のCOLORTVで見たので。
で、あと40分。完全に思い出した。この映画に付いては何一つ語れられないね。明らかにこの映画はCOLORTVで見た。まだ、カラーテレビが出来たてだったので、目が痛くなった記憶がアル。フレッドヒッチコックなんちゃって。
もう一つ、真犯人が間違いだったのを気付いた。僕の55年を返してくれ!あ~。
髪金はノヴァクか?デイ?だよ。
今日、初めて気付いた。
もう一つ気付いたよ。カーメン・キャバレロの伝記映画だとずーと思ってた。鑑賞して50年して初めて気付いた。
『めまい』がする位『ピカピカ』カッコいい♥
ヒッチーの掟破り
ヒッチコックなのにバッドエンドを採用している。一体どういう心境の変化だろう。別に僕はバッドエンドが嫌いなわけではない。ありきたりな甘ったるいハッピーエンドよりかは幾分かマシだ。でも、これはヒッチコック映画だ。ヒッチコックは観客にドキドキとハラハラを与える代わりに最後には必ずハッピーエンドにすることで全体のバランスを保ち、ちゃんと自分の映画が大衆映画になるように調整してるものだ思っていた。しかし、今作は違った。なぜ?
それはさておき、映画の魔術師ヒッチコックの最高傑作に挙げられることの多い今作「めまい」は噂通り、彼の映像センスが遺憾なく発揮されていた。彼は大量の鳥も、大掛かりなアクションも自分には必要なく、ただその映像の力だけで観客を魅了することができると今作で改めて示した。彼の映画には常に同じ魔法がかかっている。そして、今作は魔法の質も巧妙さも最高だった。「そりゃこれが最高傑作になるわな」と感じさせられた。純粋な映像の力で感銘を受けた。
さて、結局ヒッチコックは何故バッドエンドを採用したか。僕は一つの理由に美男、美女にたまには酷い目にあって欲しいという、彼の潜在欲求の現れではないかと思っている。本当のところはわからない。でも、もしかしたら、この彼のルール外の行動が、映画の魔術師ヒッチコックの核に近づく手がかりになるのではないかと感じた。
キム・ノヴァクに目を奪われる
「めまい」は初視聴。最初は、憑依話かと思って、色々考えていたら、確かにその手があったのかと。でも、あんな風にジョンも恋に落ちたり、彼女を追いかけて鐘楼を登るときに、高所恐怖症で登れないかは確信が持てないはず。愛する彼女が命を落とすかもというのを追いかけているのだから。しかし、それにしてもジョンは、最後どうしたかったのか?犯行を暴いた上で、彼女の愛が本当かどうか確かめたかったのか。ずっと抱き留めていればいいものを。また、ジュディは、修道女を見て何故逃げようとしたのか?悲劇として終わった方が、ヒッチコックらしいとは思うが、しっくりこなかった。
ジュディを見つけてから、ジョンがマデリンに服装も髪の色も同じにしようとするのは、彼女がマデリンと確信しなければ、普通はやらせない。
別人だったら嫌われてしまうし、二度と失いたくないと思うはず。それでも強行するのは、ヒッチコックがよっぽど偏執狂なのだと思う。
ヒッチコックならではの映画の見せ方があって、楽しめた。
キム・ノヴァクが、昔の金髪美人女優さんで、スタイル抜群で、目鼻立ちが際立っていて、それを見ているだけでも目の保養になった。嘘をつき続けるのが苦しいジュディとしての演技も良かった。彼女の別な作品も見たくなった。
ニューロティック・スリラーの大傑作!
Ultra HD Blu-rayで2回目の鑑賞(吹替)。
原作は未読。
キム・ノヴァク演じる美女を巡るオカルティックな謎に「こう云う系の話だったっけ?」となりつつ、ジェームズ・スチュワート演じる主人公のトラウマを活かした展開にドキドキ。
後半のスコティの偏執的な振る舞いや、スコティの友達(以上恋人未満?)な画家の女のスコティへの執拗な想いなど、狂気的な愛に戦慄しつつジュディの真実の愛が悲しかった。
ロマンスの悲劇性も見事で、先の読めないストーリーとどんでん返しも素晴らしかった。観る者を惑わす視覚効果も抜群で隙無し。ニューロティック・スリラーの名作に酔いしれた。
[以降の鑑賞記録]
2024/12/15:Blu-ray(吹替)
※修正(2024/12/15)
絵になる風景に2人がオシャレ
サンフランシスコの当時の風景も良かったし、洋服や車もとてもオシャレでした◎
キムノバクの白いコートに黒の手袋、シンプルだけど、とても魅力的♫
でも目に付くのは、緑の車、緑のドレス、主人公も緑のセーターを着て家具も緑の物があり、アクセントになって良かった◎
ハッピーエンドかと思いきや、ラストシーンは、バッサリ!!
メガネ女子のお友達も、片想いでちょっと可愛そうでしたが、肖像画に自分の顔を描くなんて、それはないやろ〜っと、ツッコミたくなりました 笑笑
NHK BSで鑑賞
金と愛
完全犯罪を計画したのは「金」。
完全犯罪の計画を狂わせたのは「愛」。
いつの時代にも「金」と「愛」が様々な悲劇の物語を生みますね。
しかしこの主人公、転落の災に取り憑かれています。
克服?
まず、屋根から落ちる、海から落ちる、教会から落ちる、どれもめまいのようにくらっとするシーンが多いと思いました。
愛する人の死へのトラウマの克服と高所恐怖症の克服
冒頭で少しずつ高いところに行きながら上と下をみればいつか高所恐怖症は克服できるはずだとスコティは言っていた。これがのちのシーンで使われる仕掛けがすごいと思った。
マデリンを追いかけるシーンでも上と下を見ながら階段を駆け登ったが高所恐怖症に負ける。マデリンを失う。マデリンの死へのトラウマ克服と高所恐怖症の克服をするべく再びジュディとあの現場に行き同じように上と下を見ながら階段を駆け上る。高所恐怖症を克服し、あの時のトリックが解けた。結局ジュディは転落してしまい、本当に愛していた人を失った。スコティはまた高所恐怖症のトラウマに陥るのか…
【ヒッチコックを観ずして映画は語れない】3️⃣恐らくヒッチコックの(変態映画の方の)最高傑作。ところで、レディ・ガガの『バッド・ロマンス』の歌詞の中に“vertigo”って出てくるの知ってます?
①ヒッチコックは変態です。私も変態です。ですからこの映画が大好きです。嫌がるジュディを無理やりマデリンに仕立てていく時のジェームズ・スチュワートの目はほとんど変態です。ヒッチコックはここでも映画=フェチズムであることを教えてくれています。
上手く練られた脚本だな~
「めまい」字幕版 DVDで鑑賞。
*概要*
過去のある出来事によって、高所恐怖症になってしまい、そのことが原因で警察を辞めたジョンの前に、ある日、旧友のエルスターが現れる。エルスターは自分の妻マデリンの素行を調査してほしいと依頼。マデリンは曾祖母の亡霊にとり憑かれ、不審な行動を繰り返しているという。ジョンはマデリンの尾行を開始するが…。
*主演*
ジェームズ・スチュワート
*感想*
ヒッチコック作品巡り第五弾!オープニングが「007」みたいw 今回の主人公は「裏窓」に出演していたジェームズ・スチュワートで、高所恐怖症の元刑事を演じられてました。
旧友からの依頼で、妻を尾行することになるんですが、少し、だらだらしてて、眠たくなりました。(^^; ところが、中盤~終盤にかけて伏線を回収する所が良いですね。
ジョンが悪夢を見るシーンは独特だったし、最後、修道院の女性が冥福を祈りを込めて鐘を鳴らして、幕を閉じる所が良かった。
話のテンポは悪かったけど、伏線が張られており、クライマックスシーンで、ジョンが「問題の女性」を問い詰めるシーンはなかなか見応えがありました。
何度も眠たくなりましたが、上手く練られた脚本だったし、面白かったです。(^^)
「変態」をジェンダーから...
唯一の足りなさは、ジュディの死で締めることから感じる。結構複雑な話をしていたのに対して、急なハプニングで終わるのは...
前半と後半で分けるなら、前半スコティがマンドリンを追うシーンが好きだった。謎めいた女を男性主人公の視点で追い、真相を追求するという心地よさ。また車から、ギャラリーからの覗き見も多く、心理的に快楽と優越感も生じるはず。このようなこともヒッチコックの多くの映画から見れるだろう。(【裏窓】が最も典型的だろう。
後半話は一変する。観客は客観的にスコティとジュディを見てスコティの狂いに恐怖を感じる。ここではもう男性のフェティッシュに注目する。その原因は、彼はマンドリンをずっと見ていたからだろう。ここでまた興味深いのは、ミッジはスコティは気になり、彼女の自画像を彼に見せる。ここでもまた女性は男性に見られることで存在する意味を求める。スコティの視線は事件解決の依頼のきっかけでマンドリンにあるからこそ、彼女のことが好きになることも示唆する。スコティは狂った変態みたい一方、また被害者でもあろう。これは心理学的な根拠もある。
ここでまたミッジの役を分析しよう。彼女は結構意味のない存在のように見えるがただスコティの情報の源。また深く考えると、観客は自分の想像も発揮すり余地があると思う。
例えば、彼女はギャラリーのその絵の作者だとか...実はマンドリンの話はどこまで嘘だったかも分からない。映画にもただ半分嘘ということを言った。もしミッジがその絵を描いたなら、スコティを愛する彼女は彼の視線を求めるため、また自分のも書いたこともできるだろう。もともとカーロットの情報も彼女が教えた本屋のオーナーからだし.....(考えすぎかもけど、こう思うとより一層面白さを感じる。
結構マイペースで進む映画だと人は言うが、結構充実していると感じる。
特に印象深かったのは、名シーンももちろん、マンドリンが川に飛び降りるところ、BGMで急にその動きと共に出てこっちも予想できた行動なのにそれ以上ビックして怖かった。まさにヒッチコックが使った音の力!!!
殺しの思い出は捨てるべきだった
久々の鑑賞。
前半はやはり死ぬほど眠い。この映画の面白いのはマデリンが死んでから。
スコティは終始自己中で未練タラタラすぎて気味悪いし、ミッジも控えめながらスコティへの執着心が気味悪い。
マデリン(ジュディ)はほんまに綺麗。殺人の共犯はともかく、スコティへの恋心は本物やったわけやから、最後かわいそう。
悪夢のシーンが最高にエキセントリックで美しい。マデリンが甦るシーン、スコセッシが絶賛していたけど確かに美しい。美しさの裏側に男の欲望が露骨に見えて最高に変態じみている。
それ以外のシーンも、サンフランシスコの風景と相まって全て美しい。レストランの真っ赤な壁や、真っ白な教会など、ヒッチコックは色の使い方も上手い。
マデリンのドレス、車、シスコの海、ホテルエンパイアのネオンなど、全体に施されたグリーンが、良い意味で目に毒。堪らない。
とても面白い
タイトル的に単純にサイコミステリーがずっと続く映画かと思いきや意外とロマンスとミステリーを掛けたような映画で、凝っていて面白かった。普通だと中盤の置き手紙を書いて破り捨てるシーンまでで2時間使って終わるパターンが多い気がするが、その後も展開があり、ただのサイコ系の映画としてでなくミステリーとして終わらせたのが良かった。
あらすじもしっかりしているし、カメラワークも今見ても面白い発見があるため、さすがに名作と言われるだけよくできている映画だと思う。
二段構えの物語展開
総合75点 ( ストーリー:75点|キャスト:75点|演出:70点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )
最初の出来事として登場する妻の先祖と霊が憑りついた話はあまりに胡散臭いので、すぐに現実的に何か裏があるのだろうと思った。それなのに暫くしてもそういう犯罪をにおわす事情が出てこないばかりか胡散臭い話を逆に裏付けるようなことが続く。
そのため、むしろそんな話を持ち出してそれを実践しているのが誰かを考えるだけで、すぐに黒幕が誰であるのか・誰を騙そうとしているのかということまでは簡単にわかってしまった。細かい事情はわからなくても大まかな道筋は想像出来たので、この程度の話が映画の本筋だったらそんなにたいしたことはないなと最初は思った。
だが幸いにもその後にもしっかりと話が続いてくれて、犯罪の内容がわかっていても整理がつかない気持ちを片づけるための主人公と、彼の気持ちを知ってついつい深入りしてしまう女の行動と、それがもたらす結末もしっかりと描いてくれていた。犯罪のからくりだけでなくそのような人の心の動きを押さえて、尚且つせつなく複雑な気持ちにさせる悲劇的浄化でしっかりと締めくくってくれていた。
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