「ミステリアスなサムに惹かれるアニー」めぐり逢えたら 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)
ミステリアスなサムに惹かれるアニー
アニーの婚約者ウォルターは、とても良い人なのだろうが、それゆえに分かりやす過ぎる印象を彼女に与えていた。その点、妻を喪い思い詰めるサムには、ラジオ越しということもあり、全容が見えないミステリアスな印象を受けると共に、その辛い状況がアニーの強い共感を生んだ。そのためサムのことをもっと知りたいという気持ちと、ウォルターでは物足りないという気持ちの両方を抱えることになったのだろう。それが楽しく運転していたところから一転してラジオを聞き入るアニーの表情に表れていてぐっと来る。
ストーリーは作中でも紹介されていた映画『めぐり逢い』をオマージュしている。『めぐり逢い』は1994年版のリメイクしか観ていないが好きだ。エンパイアステートビルでの叶わなかった出会いを今作は再現したかったのだろう。
男女の距離が徐々に縮まり惹かれ合っていくストーリーは、『ユー・ガット・メール』の監督でもあるノーラ・エフロンらしい丁寧さを感じた。洋画っていきなり恋愛になるようなストーリーが多い気がするが、彼女の作品はその点が丁寧で奥ゆかしい印象で好きだ。
コメントする