「近くが見えづらい遠視の眼鏡なんて、エスプリの効いた演出」みんな元気 えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)
近くが見えづらい遠視の眼鏡なんて、エスプリの効いた演出
シチリアに住む老人マッテオには、イタリア全土に散らばって暮らしている5人の自慢の子供たちがいた。毎年夏には必ず子供たちはシチリアに帰ってくるが、今年の夏に限っては誰も姿を見せなかった。そこでマッテオは自分から子供たちを訪ねて驚かせてやろうと思い立つ。ナポリ。ローマ、フィレンツェと旅する老人の目に映ったものは果たして何だったのだろうか・・・。旅を終えて、我が家に戻ったマッテオは、妻の墓前で旅の報告をして子供たちの近況を伝えるのだった(Amazon Primeより)。
イタリアのシチリア島と聞くとなんとなくマフィアを想像してしまうが、AIによると日本にとっての小豆島のようなものだという。温暖な気候、山がちな地形、海の風景がその理由だとか。つまり、本作はマッテオが瀬戸内海の小豆島から東京や大阪、名古屋に住む子どもたちに会いに行く、おじいちゃんロードムービーといったところだろうか。
人生なんてスペクトラムの連続である。日によって、場所によって、焦点によって光も影も生み得るし、影寄りに光も、光寄りの影もある。5人も兄弟がいれば、その組み合わせは流動的なスペクトラムの球体のように不定だろう。パパが楽しみにしている年1回の帰省に、地のスペクトラムや影を持ち込むことはなく、よって、パパは光ばかり放つ輝かしい子どもたちを誇る。
アメリカや日本映画に慣れ親しんでいる側からすると、良かれと思ってやってきた子育てが、長い年月をかけてしっぺ返しを食らうようなストーリー展開やなによる結末には若干救いがないように感じる。近くが見えづらい遠視の眼鏡なんて、エスプリの効いた演出。
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