「荒涼とした世界とお友だち」ミツバチのささやき kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
荒涼とした世界とお友だち
静かで繊細、繰り返し鑑賞することで作品の真髄に近づけるような、そんな映画でした。
難しいことをあれこれ考察できそうな作品ですが、深く考えなくても楽しめると思います。
何より主人公・アナちゃんの可愛らしさがどキャッチーです。お目目がクリクリしてたいへん可愛い!子役にありがちなウソ臭さもなく、素に近い演技も好感が持てました。あんまり笑わないでジッと見つめる表情が感受性の豊かさ表しているようにも思います。アナちゃんの画面支配力はハンパではないですね〜。
傑作として語り継がれている本作ですが、なんだかんだとキャスティングの勝利だと思います。アナちゃんあっての映画です。
また、本作は語り口が渋いです。日常描写が大半を占めており、アナを取り巻く世界がリアルに伝わります。
荒涼として息苦しい村、どこか心がつながっていない両親、早くもスレはじめているイザベル、姉以外に友だちがいなそうなアナ。父親が語るミツバチの労働への見解は、人間の生を全否定するような厭世観に溢れています。あと、冒頭のフランケンシュタインから始まり、イザベルの死人ごっこ等、やたらと死の匂いが漂っているのも印象に残ります。
アナの目に映る世界は、モノクロで重苦しい。ただ、母親とのスキンシップは豊かであり、決して絶望の世界には生きていない。
本作では、フランケンシュタインが重要な役割を果たします。フランケンシュタインとは何か。
アナは初めからフランケンに好感を抱いていました。異形の存在だが、映画のフランケンはどこか優しげ。アナはフランケンの内面に感じるものがあったのでしょう。
アナは友だちが欲しかったのだと思います。息苦しい世界を生きるためには、誰かが必要です。イザベルも死んだふりとかするので、なんかついていけないし。小屋の脱走兵との出会いは、アナにとってとても大切なものだったのでしょう。
そんなアナの心情を想像すると、より切なさが増します。
本作はスペイン内戦とその後のフランコの独裁政権への批判が描かれているとのことです。スペインの近代史を勉強していくとさらに映画を楽しめそうです。象徴を用いて間接的に独裁政権や内戦を批判しているようですし(wiki参照)。内戦時代、舞台となったカスティーリャ地方の様子や立場がわかると、父親の厭世や母親の苦悩、村の事情等をより想像しやすくなりそうです。