劇場公開日 1989年3月11日

「この感情表現、奥深さ、煮えたぎる怒り。ハックマンの最高傑作なのではないだろうか」ミシシッピー・バーニング 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5この感情表現、奥深さ、煮えたぎる怒り。ハックマンの最高傑作なのではないだろうか

2025年3月30日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

その分厚いキャリアで様々なジャンルを横断してきたハックマンだが、現実に根差した社会問題を扱ったヒューマンドラマへの出演は意外と珍しい。人種差別の構造にメスを入れた社会派な目線もさることながら、なんと言っても、公民権活動家の失踪事件を受けてFBI捜査官としてこの地に乗り込むウィレム・デフォーとハックマンの正反対コンビが絶妙だ。デフォーは頭は切れるが若き青二才エリートであり、対するハックマンは叩き上げの現実主義者。南部の出で、この地のことを熟知しつつ、しかし我慢の限界を超えた大きな怒りへとたどり着く役柄だ。『フレンチ・コネクション』よりも前の時代(60年代)を描きつつも、どこかポパイ刑事が歳を重ねてこの境地にたどり着いたかのような、ハックマンならではのうねるような感情の発露と奥深さと燻銀の味わいがある。パーカー監督らしい骨太なヒューマニズムも際立ち、今なお観る者の感情を震わせ続ける名作である。

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牛津厚信
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