「ヒューストン監督のデビュー作にしてハードボイルドの傑作」マルタの鷹 Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ヒューストン監督のデビュー作にしてハードボイルドの傑作

2020年5月4日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ハンフリー・ボガートの速い台詞回しの語感が生む人物表現の深みと重みが素晴らしい。脇役ピーター・ローレの役者振りと巨体の悪役シドニー・グリーンストリートの存在感。たったひとつの心残りは、導入部のメアリー・アスターの登場シーン。贅沢な要求だが、ワイルダーの「情婦」におけるデートリッヒと比較して、謎の美女の効果が弱い。演出・演技の問題ではなく、女優の格の違いが残る。
脚本と演出は絶賛に値する。現代の映画人が制作したならば、およそ2時間は越える長尺を必要とするであろうが、1時間40分に纏め上げたことが全てを物語る。スピード感があり、それでいて不足なのもがない驚き。相棒アーチャーの未亡人と主人公スペードの絡みが巧い。ラストのワンダリーの本性を暴くスペードの、探偵が背負う宿命感もクライマックスとして凝縮されて、見事に物語を完結させる。
ジョン・ヒューストン監督のいぶし銀に輝く、デビュー作の傑作品。

Gustav