マルコムXのレビュー・感想・評価
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ブラック・ムーブメントの到達点
『JFK』などと並び、3時間以上という長さを全く感じさせない傑作。主演のデンゼル・ワシントンはマルコムXが乗り移ったかのような熱演だった。マルコムXについてはこれ以前にジャーナリストの本多勝一の本でキング牧師と並べて触れられていたので知ったが、映画公開時には自伝をはじめとしたマルコムXの関連本が大量に出版されていたのを覚えている。
なおアルバート・ホールが演じている、マルコムをネーション・オブ・イスラムに誘い最終的には裏切るベインズは架空の人物で、実際にマルコムをネーション・オブ・イスラムに誘ったのは彼の姉だったとのこと。マルコムには多くの兄弟がいたが、本作ではほとんど登場していない。
また一ヶ所だけ気になったのは、「あなた方のために私にできることは何かないでしょうか?」と聞いた白人の若い女の子に、マルコムが「何もない」と言い放つシーン。自伝では過去の過ちとして語られるエピソードなので、後の場面でマルコムの後悔が描かれると思ったんだが、そういうシーンはなかった。我々日本人も含めて非黒人はあの白人少女に感情移入するので、それを拒絶したままで終わるというのは大きなマイナス。終盤には白人との融和も描かれていたが印象は薄かった。ただ、そのような欠点はあるにしても、本作が質の高い優れた映画だったことは間違いない。
"Afro-American"
若かりしマルコムXのド派手なファッションが目立ちながらチンピラ期を描く序盤がスコセッシのギャング映画を思い出し、刑務所に入りネーション・オブ・イスラムとの出会いから人間性が180度様変わり、教団との摩擦から拗れる関係性が宗教団体の卑劣さと組織の怖さを垣間見れ、マルコムXにとって争う敵は誰だったのか、闘う理由は何だったのか、敵意を剥き出しにしてきたのが同志である筈の人種問題ですら有耶無耶に。
ラストに描かれるドキュメントのような映像にスパイク・リーの説教臭い性格が表れているようで『ブラック・クランズマン』や『アメリカン・ユートピア』でも同じような演出が、映画全体の完成度として何となくスマートでは無い重たい感じが少し気になってしまう。
3時間超のリー君畢生の大作です。 中身も濃いし、メッセージ性も高い...
デモクラシーじゃなくてヒポクラシーだ
黒人のシンドラーのリスト
感動しました
正に黒人のシンドラーのリストです
「私はあなたのニグロではない」を観て続いて見ました
シンドラーのリストのように、その現場に身を置いたかのような体験を観客が持ち得るように、白黒映像や当時の実際の映像を織り交ぜながら音響も5.1chを駆使して群集の中に、雑踏の中に、部屋の中にマルコムXと同じ空間に身を置いて、彼の言葉を、彼がどう感じてどう生きていたのか、その息使いまで観客に感じ取って欲しい
この製作者の想いと狙いはエピローグで語られます
大いに成功していると言ってよいと思います
是非、5.1chのホームシアターでご覧頂きたいと思います
3時間強もあり怯みますが、ダレません
強い緊張感で最後まで観客を惹きつけて離しません
音楽も始めの方でダンスホールでのライオネルハンプトンのFlying Home、Stardust、終盤のハーレムでの若人ダンスの集いでのshot gunとかのシーンはマービンゲイのI Want Youのあのジャケットを思わせるようなシーンで掛かります。Shot Gunはこれから起こることの予告です
そして彼がその惨劇が起こる会場に向かうシーンで掛かるサムクックのA Change Gonna Come
その破壊力ったら!
黒人が大統領になった時代になっても
表面的には平等が達成されたように見えても黒人差別は消えてはおらず、白人以外の人種にも平和と平等をもたらすはずだったイスラムは暴力と混迷の中にある
信念の人
3時間越えで長いなーと思いながら、意外とだれずに見られた。
チンピラ時代から黒人の公民権運動家としての最後を終えるまでの物語。
マルコムが色々なものに影響されながら成長していく様子が丁寧に描かれていた。
人種問題から宗教、意見の齟齬と対立軸が転がっていく。
過激で暴力的な発言をしているが、暴力に対抗するには暴力しかないと誰よりも理解しつつも誰よりも対話による理解を望んでいたことがわかる。
差別問題というのが身近にある、なしに関わらず、意見の違うもの、価値観の違うものと接することはある。
また他者の考えは絶対に理解できない。
(ある程度想像することが出来るが、当たっているかはわからない)
となると白人の人種差別を他人事としては受け取れないが、残念ながらマルコムの様に強い信念を貫く自信もない。
せめて、意見や価値観の異なる人を排他したり、考えを決めつけてコントロールしたりしないよう、自戒しようと思う。
ギャングから唯一無二の活動家へ
マルコムXという人物がいかに偉大で不世出の求道者であったかがよくわかる仕上がり。
長いぶんの説得力はあって良作を見た充実感が味わえる。
デンゼルのマルコムX役への憑依の度合いには全身全霊といった言葉がふさわしい。
数々の演説シーンでの彼はカリスマ的存在感をもまとっているように映る。リンカーンなんかよりは躍動感もあってやっぱりかっこいい映画。
マルコムX
煩悶し続ける今までに無い指導者
スコセッシが自身のルーツを辿るイタリア系アメリカ人の映画を作るように、スパイク・リーも自身のルーツを自身の考え方で映画に表現する。
そして、例えその表現が問題になろうとも、真っ正面から受けてたつ確固たる彼の信念がこの作品にも見られる。
"指導者"という偉人は多く映画として取りあげられるがマルコムXのような人物は初めて見る。
黒人人権運動の"指導者"として名高い彼だが、その描かれる人生は迷える人間そのものである。
指導者の立場に在りながらも煩悶し続ける彼の生きざまは黒人不利の時代に生きた1人の黒人以下でも以上でも無く描かれる。
しかし、スパイク・リーは彼の心を貫く絶対不偏の信念を見逃さない。
マルコムXの伝記映画でありながらもその裏には現代のブラックカルチャーを牽引するスパイク・リーの不偏の魂の訴えが見える。
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