「その日は船で」真夜中の虹 梨剥く侍さんの映画レビュー(感想・評価)
その日は船で
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アキ・カウリスマキの中で最もハードボイルドな作品だ。ハードボイルドの属性として小説の場合は短いセンテンスが特徴だが、この映画も感情の入り込む余地を与えないくらい短いシークエンスでフェード・アウトする。失職して父が自殺して強盗に襲われて有り金奪われて刃傷沙汰で理不尽な逮捕をされてと「大ピンチずかん」の連続だが、主人公はほとんど表情を変えず淡々としている。ハードボイルドだ。何なら知り合った女の息子も輪をかけてハードボイルドで、微笑ましい。
封切りの時に見て以来30有余年ぶりの再見ということになる。
銀行強盗の経緯など重要な場面を敢えて描写しない手法は、ロベール・ブレッソンと共通している。アキさんも影響を受けた監督の一人に挙げているようだ。脱獄の顛末などは、ブレッソンの「抵抗」に比べると、いかにもあっさりしているけれど。
アキさんの映画におけるマッティ・ペロンパーは、ちょうどリュック・ベッソンにとってのジャン・レノみたいな存在だったと思う。オフ・ビートな空気をかもし出す貴重なキャラクターだったのに44歳で早逝してしまった。合掌。
キャデラックの幌のくだりには爆笑。
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