「アメリカ的なるものへの風刺劇でしょうか」プレイタイム odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカ的なるものへの風刺劇でしょうか
クリックして本文を読む
映画の作られていた1964年ごろのパリと言えば近郊のラ・デファンス地区の再開発で近代的なオフィスビルが建ち始めた頃でしょう、きっとタチはアメリカナイズされてゆくフランスに失望し危機感を抱いたのでしょう。
驚くのは近代的な建物を撮るために、無いなら作ってしまえとビルもどきをセットで建ててしまったことでしょう。広角レンズを多用し、あえてモノクロのような彩度を落とした色調、基本長回しですから印象的にはとてもクールです。セットや小道具も無機的で、迷路のようなオフィス、無用に複雑なインターフォン、ブーブークッションのような無粋なソファー、ランプのついたモップ、ガラス張りの近代アパートなど風刺に満ちています。またタチの持ち味と言えば無言のパントマイム芸ですから映画でもほとんどセリフがありません、只々、景観や人物を傍観するのみです。
これでは万人受けは難しく興業的には失敗したのも頷けます。作家性、芸風と言ったらそれまでですが、まるでタチが風車に立ち向かったドンキホーテを思わせて胸が痛くなりました・・。
コメントする