「ANORAの米国アカデミー賞受賞を知って、見返してみた」プリティ・ウーマン 山川夏子さんの映画レビュー(感想・評価)
ANORAの米国アカデミー賞受賞を知って、見返してみた
1990年冬の公開作品である『プリティウーマン』。当時も映画館に見に行って、その後テレビ映画やDVDを借りて、何回、何十回と観た作品です。
ストリートガールとはいえ、ハリウッドで暮らす女性・ジュリア・ロバーツが本当に美しくて、またリチャードギアがかっこよすぎ!見るたびに毎度毎度ポーッとしながら見てましたよ。ビバリーヒルズで暮らし、リムジンで移動して、ロデオドライブで買い物をする、アメリカの富裕層の夢のような暮らしに圧倒されたもんです。
30年以上も前の作品であるため、スクリーンの中のジュリア・ロバーツとリチャード・ギアの年齢を私が大きく追い越して、今回は私よりずっと若い二人のラブストーリーとして見返したわけですが、今回はあまり「ポーッ」することもなく、ハゲタカファンドの無慈悲な企業買収家の若き実業家リチャード社長の仕事ぶりが気になて、「こいつ悪い奴じゃないか!」と今さらながら気が付いたり、ヴィヴィアンの娼婦の仕事とはいえ、真面目な性格を浮き上がらせる、コンドーム着用の推奨時のてきぱきとした説明や、きちっと任務を遂行しようとする生真面目さが、きちんと描かれている点に感心しました。昔見てた時は、こういう細かい演出の意図が分からなかったんです。でも、私も年をとったんですね、リチャードやヴィヴィアンの性格をちゃんと映画から読み取れるようになりましたよ。
また、今回は、主役の二人より、脇を固める「大人」たちの言動にじわっと胸が熱くなって、しみじみとさせられました。
企業買収の標的となった会社のモース社長(晩年のラルフベラミーさん)や、ホテルの支配人バーニーを演じたヘクター・エリゾンドさんの、なにげない表情や言葉が本当にすばらしかった。
オペラ「椿姫」を彼女に見せるエドワードの思いも、昔、この作品を見たときは椿姫のストーリーを知らなかったんです。30年余を経て、椿姫のストーリーを知った後で今回見直すと、エドワードの真摯に彼女を愛する気持ちが「椿姫」に込められていたことに気が付いて、エドワードの思いがばっちばちに伝わってきて、「ああこういう意図だったのか」と30年目にしてやっと理解出来ました。また、ラストのシーンはウエストサイドストーリーを彷彿とさせる場面で、恋するアメリカ人カップルは階段を上る!んですね。
もう、アメリカ映画としては、古典にちかい作品と言ってもいいのかもしれませんが、でも、いい作品は何年たっても、いいですね。
