「新しい視点に邂逅する上質なSF映画」ブレードランナー Moiさんの映画レビュー(感想・評価)
新しい視点に邂逅する上質なSF映画
感想
初鑑賞当時、映画のテーマの深淵さを一回観た位ではよく理解できず評価が定まらなかった記憶がある。ビデオを借りたり、後々DVDが普及するに至り繰り返し鑑賞する事で革新的な、『創造された命に心は宿るのか?』という話の真意を想い、全ての描写に深い意味がある事を理解した時に、この映画が原作を超える名作である事を確信した。
映像◎
現在ではほとんどクラシックとも言える映像構成とシド・ミードなどの未来工学デザイナーに依頼した本格的な近未来設定の世界観と美術は、その後の映像制作者たちに多大な影響を与えた。ダグラス・トランブル制作、渾身のオープニングやスピナーの映像は感動もの。
音楽◎ヴァンゲリス
哀愁に満ちたアンドロイドの心が音楽とシンクロしているようで、近未来の世界の雰囲気を際立たせている。
脚本・演出◎
アンドロイド視点の描写が素晴らしい。アンドロイドを見分ける、ヴォイト・カンプフテストの話。写真や記憶を大切にするアンドロイド。とりわけ、ロイ・バッディ、自らの寿命がもう尽きることを意識した上で、デッカードに語る。
『俺は貴様ら人間が、想像もできないものを
見てきた...(中略)。それらの瞬間も全て失われる。
その(死の)時がくれば、涙のように、
雨に洗われるように。...その時はきた。』
戦闘用アンドロイドが自身の死を迎える虚しさと全ての生命に対する、憐れみを持った事をデッカードが悟ったと感じられる場面が秀逸であり感動する。
初鑑賞日、1982年7月23日
渋谷パンテオン
本作は、1982年、初上映時には映画関係者、一般観客の間では結して高い評価は得られてなかった作品であった。
当時のハリソンフォードはアクション映画俳優として絶大な人気を博していた。80年代、出演する映画が全てヒットしていた事は皆さまご承知の通り。
世界的なSFブームもあり、70年代に20世紀FOX映画の重役で『スターウォーズ』、『エイリアン』の制作にゴーサインを出し、会社に多大な利益を持た
らせる事に成功した、アラン・ラッド・ジュニア(『シェーン』のアラン・ラッドのご子息。)がプロデューサーとして独立し、第一作『アウトランド』に続き製作投資の統括をした作品が本作である。投資家たちはSFものでハリソン・フォード主演と謳えば、大ヒット間違いなしとして、膨大な製作費用を『エイリアン』で成功したリドリー・スコット監督とその映画スタッフたちに投資した。
ところが監督は映画投資家達の期待とは全く逆のアクション映画とは程遠い、深い深淵な問題となりうる人造人間(アンドロイド)の創造と、その創造された人間に心が存在したらどうなるのか?という難解な問題をテーマとしたハードボイルドな原作を選び制作していく事になる。
アラン・ラッド・ジュニアは投資的視点から大胆な賭けとも言える本作の内容に、最初は難色を示していた。しかし、監督達の強い熱意と、かつ人間の視点ではない、人造人間視点で展開する稀有な新しいストーリー展開に納得したとされる。
本作は興行的には当初苦戦し、ラッドカンパニーの経営が傾いたという話を聞いている。数年後、一部の熱狂的なファンの間で、カルト的な人気を博し、作品の評価が上がったため、会社は奇跡的復活を遂げる事になる。
35年後、『メッセージ』のドゥニ・ヴィルヌーヴ演出で、続編である、『ブレードランナー2049』が制作された。
⭐️4.5
トミーさん。宜しくお願い致します。リドリースコット監督の近未来世界のイメージが本作制作当初から、東洋と西洋の文化の混合と、科学文明のダイバーシティを意識していたところが大きいと思いますね。特に80年代の日本の東京、大阪の風景や文化にイマジネーションの源を感じていた事は間違いありません。
フォローありがとうございます。
自分内ベスト5の作品なのです。強力わかもととか哀愁溢れる“愛のテーマ”とかどこか和風のウェッティなムードが漂いますね。サントラが仲々出なかったり、様々なバージョンが後出しで出て来たり、一人歩きしているのも面白いですね。
フォローありがとうございます。
初見の時には、それほどでもなかったのに、何度か見るうちに面白くなる作品ありますよね。まぁ、逆も然りですが。
また、その時々によって印象が変わる場合もある。
映画ってホンッと面白い。