劇場公開日 1982年7月10日

「新しい視点に邂逅する上質なSF映画」ブレードランナー Moiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5新しい視点に邂逅する上質なSF映画

2024年5月13日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、DVD/BD、映画館

悲しい

興奮

知的

感想

初鑑賞当時、映画のテーマの深淵さを一回観た位で
はよく理解できず評価が定まらなかった記憶があ
る。ビデオを借りたり、後々DVDが普及するに至
り繰り返し鑑賞する事で革新的な、『創造された命
に心は宿るのか?』という話の真意を想い、全ての
描写に深い意味がある事を理解した時に、この映画
が原作を超える名作である事を確信した。

映像◎
現在ではほとんどクラシックとも言える映像構成と
シド・ミードなどの未来工学デザイナーに依頼した
本格的な近未来設定の世界観と美術は、その後の映
像制作者たちに多大な影響を与えた。ダグラス・ト
ランブル制作、渾身のオープニングやスピナーの映
像は感動もの。

音楽◎ヴァンゲリス
哀愁に満ちたアンドロイドの心が音楽とシンクロし
ているようで、近未来の世界の雰囲気を際立たせて
いる。

脚本・演出◎
アンドロイド視点の描写が素晴らしい。アンドロイ
ドを見分ける、ヴォイト・カンプフテストの話。
写真や記憶を大切にするアンドロイド。とりわけ、
ロイ・バッディ、自らの寿命がもう尽きることを意
識した上で、デッカードに語る。

『俺は貴様ら人間が、想像もできないものを
見てきた...(中略)。それらの瞬間も全て失われる。
その(死の)時がくれば、涙のように、
雨に洗われるように。...その時はきた。』

戦闘用アンドロイドが自身の死を迎える虚しさと全
ての生命に対する、憐れみを持った事をデッカード
が悟ったと感じられる場面が秀逸であり感動する。

初鑑賞日、1982年7月23日
渋谷パンテオン

本作は、1982年、初上映時には映画関係者、一般
観客の間では結して高い評価は得られてなかった作
品であった。

当時のハリソンフォードはアクション映画俳優とし
て絶大な人気を博していた。80年代、出演する映
画が全てヒットしていた事は皆さまご承知の通り。

世界的なSFブームもあり、70年代に20世紀FOX
映画の重役で『スターウォーズ』、『エイリアン』の
制作にゴーサインを出し、会社に多大な利益を持た
らせる事に成功した、アラン・ラッド・ジュニア
(『シェーン』のアラン・ラッドのご子息。)がプロ
デューサーとして独立し、第一作『アウトランド』
に続き製作投資の統括をした作品が本作である。
投資家たちはSFものでハリソン・フォード主演と
謳えば、大ヒット間違いなしとして、膨大な製作
費用を『エイリアン』で成功したリドリー・スコ
ット監督とその映画スタッフたちに投資した。

ところが監督は映画投資家達の期待とは全く逆の、
アクション映画とは程遠い、深い深淵な問題となり
うる、人造人間(アンドロイド)の創造と、その創造
された人間に心が存在したらどうなるのか?という
難解な問題をテーマとしたハードボイルドな原作を
選び、制作していく事になる。

アラン・ラッド・ジュニアは投資的視点から、
大胆な賭けとも言える本作の内容に、最初は難色を
示していた。しかし、監督達の強い熱意と、かつ
人間の視点ではない、人造人間視点で展開する稀有
な、新しいストーリー展開に納得したとされる。

本作は興行的には当初苦戦し、ラッドカンパニー
の経営が傾いたという話を聞いている。
数年後、一部の熱狂的なファンの間で、カルト的な
人気を博し、作品の評価が上がったため、会社は
奇跡的復活を遂げる事になる。

35年後、『メッセージ』のドゥニ・ヴィルヌーヴ
演出で、続編である、『ブレードランナー2049』が
制作された。

⭐️4.5

Moi
Moiさんのコメント
2024年6月8日

トミーさん。宜しくお願い致します。リドリースコット監督の近未来世界のイメージが本作制作当初から、東洋と西洋の文化の混合と、科学文明のダイバーシティを意識していたところが大きいと思いますね。特に80年代の日本の東京、大阪の風景や文化にイマジネーションの源を感じていた事は間違いありません。

Moi
トミーさんのコメント
2024年6月8日

フォローありがとうございます。
自分内ベスト5の作品なのです。強力わかもととか哀愁溢れる“愛のテーマ”とかどこか和風のウェッティなムードが漂いますね。サントラが仲々出なかったり、様々なバージョンが後出しで出て来たり、一人歩きしているのも面白いですね。

トミー
Moiさんのコメント
2024年6月7日

コメントありがとうございます。
映画鑑賞歴はそこそこありますが、レビューは最近はじめました。どうぞ宜しくお願い致します。

Moi
ratienさんのコメント
2024年6月7日

フォローありがとうございます。

初見の時には、それほどでもなかったのに、何度か見るうちに面白くなる作品ありますよね。まぁ、逆も然りですが。
また、その時々によって印象が変わる場合もある。
映画ってホンッと面白い。

ratien