「松田優作が凄すぎる」ブラック・レイン Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
松田優作が凄すぎる
総合:85点
ストーリー:70
キャスト:100
演出:75
ビジュアル:75
音楽:65
大阪の街並みの描き方は、リドリー・スコット監督の前作の「ブレード・ランナー」を思い起こさせる未来都市のスラム街のよう。ヤクザはバイクに乗って刀を振り回して暴走したりとか、犯罪者映画というよりは近未来SF映画。なんか日本を誤解しているよなと思う描写が多い。この映画を見た一部のアメリカ人の間では、大阪はすごく危険な怖い町だという印象が出来てしまったとか。大阪の本当の姿を知っている日本人からすれば、そのあたりの演出は好き嫌いが別れるかもしれない。自分は初めて見たときはいい気がしなかったが、これも危なさを表現する演出としてとらえればこれもありかなと今は思う。
でもこの映画、とにかく役者が良い。というか松田優作が圧倒的に良い。正直それまで松田優作についてたいして知らなかったのだが、この映画を見たときにあまりの危険な存在感に圧倒された。こんな悪そうで頭がよさそうでかっこよくて手強そうな犯罪者を他に見た記憶がなかった。ただそこにいるだけで危ない匂いが漂っていて画面が引き締まった。
私がこの映画を見たのは彼の死から何年もたってからで、それまでたいして気にもとめてなかった彼の死が急に本当に心の底から惜しまれた。そしてその後にわか松田優作ファンになった。リドリー・スコットが「ここ10年で最高の悪役」と言っただけでなく、この映画を見たショーン・コネリーとロバート・デ・ニーロが「日本にもこんな役者がいたのか」と映画出演の依頼をしたのは有名な話。ロバート・デ・ニーロを尊敬していた松田優作が死ぬ前の病床でこの話を聞けたのは、彼にとってはあの世へのいい土産話になっただろう。彼が生きていたらデ・ニーロとの競演でいったいどんな演技をしたのか、気になってしかたない。
その他にも若山富三郎や安岡力也などが迫力のあるヤクザ役をやっていたし、アンディ・ガルシアの明るい性格も好きだった。そんな出演者たちの演技だけでも楽しめる映画である。