「ショーケンの戯言」ブラック・レイン 万年 東一さんの映画レビュー(感想・評価)
ショーケンの戯言
松田優作が命を削りながら演じた佐藤、本来の役名は"弘法"であり演ずるは"萩原健一"である。
実直な刑事を演じた高倉健、アル中でクビ寸前の刑事役として"勝新太郎"が演じる筈だった、役名は"市"もちろん「座頭市」から。
勝新太郎の兄でもある若山富三郎の大親分は"藤山寛美"に決まっていた。
アンディ・ガルシアの役は"トム・クルーズ"が演じ、ニューヨーク市警の上司はジーン・ハックマン。
プロデューサーやキャスティング・ディレクターと直で会い、打ち合わせも行ったショーケン。
新宿歌舞伎町での撮影は断念、舞台を香港に変える発言をするマイケル・ダグラス、日本側のスタッフから大阪を提案する。
黒澤明の「影武者」降板騒動から牙を抜かれたかのような勝新は、英語が出来ないからと消極的な態度で本作を降りてしまう。
様々な問題が山積みになり、ショーケンの負担も限界に達し最初の「ブラック・レイン」は頓挫する。
優作でスタートした撮影も途中、何も知らされないで再度、ショーケンにオファーされたらしい。
俺の代わりに逝ってしまった優作、、、不謹慎に思われるセリフを吐いちゃうショーケン。
こんな信じられない、大嘘極まりない話をマジメに語ってしまうショーケン、そこがまた彼らしいのであり、憎めないのは確かだが、真実は何処!??
そりゃぁ、観たかったヨ、佐藤を演じるショーケンを、でも優作が演じる佐藤は全てのキャスト陣を喰ってしまう演技というか存在感が異様で、鬼気迫る凄みがスクリーンを支配している。
危ない雰囲気とギラついた目が印象的な当時のM・ダグラスに絶好調な売れっコ俳優だったA・ガルシア、国民的なスターの健さん、松田優作が全てを掻っ攫って逝ってしまった。
内田裕也と安岡力也が間で見守るように、だからこそ撮影も乗り切れたのかな、心強い仲間だったのであろう。
あの曲、小学生の時は何も知らずカッコ良いと適当に口遊んだり、歌うはグレッグ・オールマン!サザンロック最高な"The Allman Brothers Band"な訳で、今になると複雑な心境でもある。
健さんが歌う「What'd I Say」ハスキーな声で、レイ・チャールズに負けず劣らず??
リドリー・スコットの美的センスと近未来なディストピア感が混沌とした雰囲気を醸し出し、大阪の街に覆い映し込む斬新な映像描写が一際に素晴らしい。