フルメタル・ジャケットのレビュー・感想・評価
全69件中、1~20件目を表示
鉛のような映画
わたくし、この映画は全くの初見でオリーバー・ストーン監督「プラトーン」は公開当時観に行ったのに
「フルメタル・ジャケット」は行かずじまいで、
それから30年以上経ってようやく劇場で観る事ができました。その間、TVやソフト(VHS、LD、DVD)、
配信などで観る事はありませんでした。
スタンリー・キューブリック御大の作品は、
できるだけ劇場で観たいという思いがつのり、
観るまで、えらい時間かかったなぁという感じです。「2001年宇宙の旅」や「時計じかけのオレンジ」は劇場では、"あぁ、またか“というぐらい繰り返し上映されるのに「フルメタ」に関しては、あまり上映される機会がないように思われます。
この作品で象徴されるのは鬼教官によるシゴキ・・・
下半身ネタを連呼しながら行進する海兵隊新兵。
公開当時ゲームソフトのCMでパロディにされてたのを思い出します。
CNNは、この映画を酷評しておりました。
「キューブリックが戦争映画に他の監督と同じように
ロック音楽を使用して凡庸な作品になりさがってますね」
まぁCNNは保守ですから体制批判が根底にある映画は嫌いなんでしょうね。
前半は丹念にストーリーが進み物語に見入っていました。途中キューブリック作品である事さえ忘れてしまいました。
皆の鬱憤がデブでノロマなパイルに向かうシーンは痛々しいなぁ。メル・ギブソン監督「ハクソーリッジ」にも似たようなシーンがあったなぁ。
中盤、えっこうなっちゃうの⁉️
ヒッチコック「サイコ」のような展開に面食い、この後どうなっちゃうのよ❗️
そして後半は激戦地のベトナムが・・・なぜかポン引きの場面から始まる下世話な会話。
実は私このシーン(2回目のサングラス娼婦のやりとり)だけTVで見ており、あれっ違う映画かな?それがフルメタの一場面とは信じられずスチール写真でお見かけする鬼教官のシゴキやトイレで微笑む(?)パイル、負傷兵を抱き抱える兵士達🪖、機関銃を構える少女兵と何か一致しないんですね。
コッポラ監督「地獄の黙示録 特別完全版」での兵士とプレイメイトのやりとりのような美しいシーンでも無いし(ファイナルカットでは結局カットされました)ポン引きシーンは2回も挿入され、それが後半に絡んでくる事もなく何か意味が隠されてそうです。
最後のジョーカーのアップシーンがキューブリックらしい画になっており窓に反射する光が美しいんですが最も悲しいシーンでした。彼の葛藤と銃声が、こだまする何とも言い表わせない無念の気持ちが込み上げました。
兵士たちのミッキーマウスの唄で終わりローリング・ストーンズ「黒く塗れ」でエンドロールを迎えます。今までこの曲(ストーンズ)聴く機会がなかったのですがマジいい曲です。
見終わった後、ズシーンと鉛のようなものが心に残りました。長年キューブリックと組んでおられた撮影監督ジョン・オルコットが亡くなられたため、この作品に携わることができませんでしたが、この作品の撮影監督ダグラス・ミルサムもいい仕事をされております。キューブリック作品の中でも「フルメタ」は比較的、分かりやすい作品です。映像作家というより人間として何かを訴えかけられてる作品でした。
たった一人で戦っていたベトナム女性狙撃兵に想いを寄せ…
言わずと知れた、「2001年宇宙の旅」の
スタンリー・キューブリック監督作品だが、
前半と後半がガラリと切り替わる二部編構造
であるのは、同じベトナム戦争を背景とした
「ディア・ハンター」と似ている。
正直なところ、再鑑賞するまでは、
その両作品ともに特徴的な
前半と後半の落差について、
「ディア…」が“日常生活と戦場”
という異質な環境であることに対して、
この作品では“新兵訓練所と戦場”
という言わば同質の環境。
従って、そのインパクトの強さでは、
平和な日常生活から
いきなり戦場に叩き込まれる「ディア…」
の方が優れていると思っていた。
勿論、今回の鑑賞で
その前後編の落差の点での印象に
違いが出た訳ではないが、
この作品が、その「ディア・ハンター」や
「地獄の黙示録」及び「プラトーン」
と並ぶベトナム戦争を描いた超傑作映画
であると再認識する今回の鑑賞となった。
前半の訓練のシーンでの
教官から発せられる言葉と肉体的暴力は、
エンターテイメント作品であることもあって
ディフォルメ感満載で過激だが、
作品全体では、
新兵の前半のこの訓練施設での描写に加え、
計算尽くされたような
リアリティ溢れる戦場の映像と共に、
徐々に戦闘兵器化していく人間の変貌描写を
見事な演出の中に感じ取ることが出来た。
ところで、再鑑賞する私は、
小隊を狙撃するのは、
たった一人の女性兵士であることを
知っている。
主人公らの小隊のメンバー以上に、
彼女がどんな孤独と恐怖の中で戦っていた
のかに想いを寄せる時、
改めて戦争の悲惨さに胸の苦しみを覚えた。
ランボーとの比較
ベトナム戦争のあと10数年後に製作された作品
巨匠であり奇才であるキューブリックの晩年作品として心して鑑賞しました
最初に感じたことは、時期的な事情もあって撮影セットが豪華!とにかく金が掛かってる、その割にストーリーがチープ。
当時のピッピーファッキン文化を過剰なまでに出して表現してたが、後味に残るのは軽い気持ちで行って命を落としたり、トラウマを抱えて帰国する末路が待っているのを案じていない。
このあたりの詰めの甘さはキューブリックらしくない作品でした。戦後5年程度で描いたランボー1のような、ベトナム戦争の無情さをもっと表現できたと思う。
とはいえベトナム戦争を描いた作品としてはプラトーンに並ぶ金字塔だけに、批評するのはこの辺りにしておきます。
何度見ても発見がありますね
初公開時に鑑賞、DVD、BD、4KUHDとソフトが出る度に買ってる気がしますが
ムービープラスでの副音声解説と同時期にNHKで!の放送があったので立て続けに視聴して改めて戦争映画の傑作だと思いました。
キューブリックが極端な飛行機嫌いと自宅から通える距離で撮影したいと言う条件の為原作第3部のジャングルでの戦闘は全てカット
結果同時期のベトナム戦争映画とは違う戦場シーンは全てロンドンロケの市街戦が中心の映画になったそうです、本編中にスモークがやたら焚かれて居るのも遠景にロンドンの市街地が映るのを隠す為だったとか
びっくりなのは撮影の順番はベトナムの戦場シーンを撮り終えてから訓練所のシーンを撮ったんだそうです
それで軍事アドバイザーのリー・アーメイが作品の製作途中でハートマン軍曹役に抜擢された経緯がしっくりと来ました
俳優さんたちはカットの繋がりがおかしくならない様に毎日頭を剃り、撮影が終わり髪を伸ばし始めた時期に呼ばれて最後に撮ったカットはOPの散髪シーン…
コレで撮了だったそうで、髪を刈って解散だったと言う俳優さんたちがちょっと可哀想と思いました
訓練終わりだけは違っていた
だいぶ期待外れ
あっという間の2時間で面白かったけど、スタンリーキューブリック監督...
うわー
観終わった後いやーな気持ち。
戦争を英雄行為または残虐行為として、善悪どちらかの視点で一方的に描く映画は苦手だし、人類の愚かな歴史として説教くさくなりすぎる映画も嫌いなんだけど、これはどちらかというとコミカル。観始めてしばらくはM⭐︎A⭐︎S⭐︎Hに近いのかなと思ったり。
しかしコミカルの中に狂気が見え隠れするところが面白いというかすごいなというか。仲間のいじめを止めないのも、笑いながらゲーム感覚で農民を撃ち殺すのも、娼婦を人間ではなくモノ扱いするのも、仲間を殺した少女に同情してしまうのも、全部人間の本質。それを一気に見せられて、人間しんどいなって思った。
観終わってから無意識のうちにミッキーマウスマーチを口ずさんでいる自分に気づいて、またいやーな気持ち。
抜群のカメラワークとリアリズム
イーストロンドンにヤシの木を植えてベトナムの戦場を再現。CGもほぼ使わず実際に爆発させたり燃やしたり、一台のヘリコプターを何度も行き来させて複数あるように見せている。
出演者が自分で考えて言動をしているアドリブシーンもある(レナードとジョーカーの二人のシーンはほとんどがそうである)。ちなみにレナードは今作の撮影のために人一倍食べてあの体になる努力をし撮影中に怪我もした。
教官ハートマン軍曹の汚い言葉と暴力が印象に残る。ハートマン軍曹役のR・リー・アーメイは新人訓練生の教官経験者で、軍人未経験の俳優たちに実際に教育し、出演者たちは見事に軍人のように行進したり礼式を覚えたり銃をばらして組み立てられる程になっている。
カメラワークは完璧主義者であるスタンリー・キューブリック監督の拘りで、構図やアングルを重視している。
BGMはほとんど無く、演技の違和感もないため作りモノとは思えないリアルさがある。
3部構成になっている。
最初の訓練が1部で、2部の始まりは軍人たちの前に娼婦が腰を振り振りしながら現れるあたり、3部はバイクに乗ってノーブラの娼婦が登場するあたりから始まる。
主人公を美化するような戦争映画ではない。
徹底的なリアリズムで正義がどうとか誰が悪とかではなく、ひたすら敵を殺すという狂気の世界を描いている。
ベトナム戦争に限らず、過去現在未来どの戦争にも共通している何かを考えされられる。
ナイスな挿入歌 さすがキューブリック
色褪せない戦場に放り出されたような臨場感
キューブリックの映画は2本しか見ていない。
「シャイニング」「2001年」いずれも今日まで語り継がれる不朽の名画。でも、正直、娯楽作品としては純粋に楽しめないし、コンディション次第では熟睡してしまうほどの退屈な映画にも思える。
問題は、そのテンポにあるのだろう。基本的に長回しで、大げさな演出が入らない。それによって現場に緊張感が生まれ、観客はまるで事件の渦中に居合わせてしまった野次馬のような好奇心にとらわれる。
家の近所に救急車やパトカーが大挙押し寄せれば、誰だって様子を見に行くし、懸命に事態を把握しようとするだろう。断片的な情報がその場を飛び交い、なんとなく事態の方向性を理解したところで手を打って、その場を立ち去る。翌日の新聞でどうやらこれこれの事件だったらしいということを知るが、自分の見たものとの差異はいかんとも埋めがたい。
圧倒的にリアルな戦場空間を作り出し、そこに観客を置き去りにする。まるでベトナムに行ってきたような気分になり、報道されていることと差があることに驚く。そんな気分にさせてくれる映画だと思う。驚異的なのは、奥行きの隅々まで、セットが作りこんであること。この映像が30年前のものなのだ。どれだけお金かかってんだと思う。今なら、CGで補えるような細部まで、ちゃんと動いている。しいて言えば、画面がクリア過ぎて、逆にリアルじゃないように見えることがミスと言えばミスショットなのか。普通は見せたくないものに適当に汚しを加工して隠してしまうのだろう。霧とか、煙とか。
ただし、字幕で鑑賞したのだが、確実に放送禁止な4文字言葉が連発されるのはいかがなものか。これも戦場のリアルということで許されるのだろうか。特にR指定のような注意も見当たらないのだが、子供に見られたら、なんとなく気まずい。それも含め、新兵訓練は大幅に割愛してよかったんじゃないかと思う。
「微笑みデブ」や狙撃手少女の鋭い閃光が頭に鮮明に残る
2022.93本目
最初の45分間からして至極。
まず、1人ずつ頭を刈って坊主にしていくシーン。一人一人個性に溢れていた髪型がみな同じものになっていくのが、個人としての尊厳を失っていくようにみえた。
士官学校時代は、映画の結構な尺をしめていて、ここがメインといってもいいのではというくらい印象的。
みんな腕立てしてる中でドーナツ食べてるシーンとか、すごい頭の中に残るシーンがたくさんある。笑
あとはやはり、「微笑みデブ」の顔つきがどんどんと変わっていく様に目が離せなかった。そして「フルメタルジャケット」のシーン…!彼自身がフルメタルジャケットだった…。悲しくも格好良いシーンだった…。
ベトナム戦争からのシーンは、個人的には少しダレたけど、特に後半の狙撃手との攻防戦は緊張感があった。
そして狙撃手女の子の、「shoot me」の言葉…。
とにかく、とにかく悲しい。
ミリタリー映画にあまり耐性がなくて、ちゃんと最後まで見きれるか心配だったけど、
終始、緊迫感や生々しさや、人間の悲しさや美しさに目が釘付けになった。
重い絵や展開に反して、音楽が軽いのもよかった。
カメラワークが、ジョーカーたちがまわしていたカメラと同じような?まるでホームビデオかのような?かんじで見られたので、そこにいる人間たちに触れるのではないかと思うくらい全体を通してリアルだった。
全69件中、1~20件目を表示