「たった一人で戦っていたベトナム女性狙撃兵に想いを寄せ…」フルメタル・ジャケット KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)
たった一人で戦っていたベトナム女性狙撃兵に想いを寄せ…
言わずと知れた、「2001年宇宙の旅」の
スタンリー・キューブリック監督作品だが、
前半と後半がガラリと切り替わる二部編構造
であるのは、同じベトナム戦争を背景とした
「ディア・ハンター」と似ている。
正直なところ、再鑑賞するまでは、
その両作品ともに特徴的な
前半と後半の落差について、
「ディア…」が“日常生活と戦場”
という異質な環境であることに対して、
この作品では“新兵訓練所と戦場”
という言わば同質の環境。
従って、そのインパクトの強さでは、
平和な日常生活から
いきなり戦場に叩き込まれる「ディア…」
の方が優れていると思っていた。
勿論、今回の鑑賞で
その前後編の落差の点での印象に
違いが出た訳ではないが、
この作品が、その「ディア・ハンター」や
「地獄の黙示録」及び「プラトーン」
と並ぶベトナム戦争を描いた超傑作映画
であると再認識する今回の鑑賞となった。
前半の訓練のシーンでの
教官から発せられる言葉と肉体的暴力は、
エンターテイメント作品であることもあって
ディフォルメ感満載で過激だが、
作品全体では、
新兵の前半のこの訓練施設での描写に加え、
計算尽くされたような
リアリティ溢れる戦場の映像と共に、
徐々に戦闘兵器化していく人間の変貌描写を
見事な演出の中に感じ取ることが出来た。
ところで、再鑑賞する私は、
小隊を狙撃するのは、
たった一人の女性兵士であることを
知っている。
主人公らの小隊のメンバー以上に、
彼女がどんな孤独と恐怖の中で戦っていた
のかに想いを寄せる時、
改めて戦争の悲惨さに胸の苦しみを覚えた。
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