普通の人々のレビュー・感想・評価
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お母さんは誰が救うの?
地味なんだけど、好きな映画。何年か前に視聴してとても印象に残っている作品。歴代1地味なオスカー作品と言われているけれど、メッセージ性は強い。なかなかレビューも難しい。
きょうだいの死によって、トラウマを抱えた主人公のコンラッド。傷ついた家族たちの物語。普通やったら、家族で力を合わせて悲しみを乗り越えよう!みたいなストーリーになりそうやけど、この作品は違う。長男の死によって、家族の歪みみたいなものが表面化され、修復不可能になっていく。コンラッドが母親に愛されたいけれど自分のせいで兄が死んだから…自分は罰を受けないといけない、幸せになってはいけないんだという気持ちが伝わってきてとても辛い。母親は長男しか愛せなかったわけではなく、自分自身が嫌いやからコンラッドのことも受け入れることができなかったんやよね。
修復不可能と悟った母親が家を出て行くシーンも印象的。父とコンラッドは支え合って生きていくけれど、母親はどうなるんやろう。1人で生きていけるんやろうか。カウンセリングに行き、自分の弱さを吐露したコンラッドと父。一方、自分の弱さを認められなかった母は孤立。弱さを認める強さが必要やなと思う。
見ごたえすんごい
とにかく終始暗くて重いんだが、圧巻でした。密度がすごい。見ていてずっと苦しくて心臓をえぐられるような痛みを感じて辛かったけど、本当に素晴らしかった。
「普通の人々」っていうタイトルがどういう意味でつけられたかは分からないけど、どんな人間も生きてりゃ色んな事で悩むし、どうしようも無いくらい苦しいこともあるよねって思った。そしてやっぱり愛って重要。苦しみ抜いて葛藤して、相手や自分を理解しようとして、幸せを感じて明日に希望をもって生きていきたいよ。
演技が上手いなーとか感じる隙も与えられないほどに皆さん素晴らしかった。ふっ切れたあと登場した次男は、なんかさっぱりした顔して別人みたいだった。目付きや姿勢も違う。次男の彼女は非常にキュートだった。感情を自然に表情や言葉に出せる素直さがよく出ていて、そんな彼女だからこそ自分の本当の気持ちをうまく表せない次男が、自殺未遂の話を彼女にはできたり、惹かれていくのに説得力があったと思う。
個人的には、終盤、次男が母親を抱きしめるシーンが一番感動的だった。感動的な名シーンはいくつもあるが、たぶん私にも息子がいて次男と年齢が近いことは無関係ではない。
夫婦が最終的に上手く行かなかったのはリアルで良かった。ウソ臭いうすら寒い終わり方よりずっと良いな。
私は、悩んでたり辛い気持ちの人が周りに居たら、優しい人間でいたいと思った。不器用でも一緒に、同じ人間として。そんなこと言ってる自分が一番ウソ臭いか…でもなんかそう思わずにはいられない。
アメリカの「普通」
1970年代後半から80年代にかけて、米国は世界の中枢に君臨する強いリーダー国家を自負した。
全てが順風満帆。軍事力、経済力、政治力において、米国が世界を正しい方向へ主導する。
国民の生活は豊かでチャンスに満ち溢れ、誰もが休日はゴルフを楽しめる。
少なくとも、当時小学生から中学生になろうとしていた自分には、アメリカ合衆国という国からそんな明るさを感じていた。
ステレオタイプのこうしたイメージを、実は国民も皆信じようとして、暗い闇の部分から敢えて目を背けていたのかもしれない。
そういう人々が集まって形成された家族に、原作者も、映画の製作者たちも、小さな米国の病理を見ていたのかもしれない。
必死になって「普通」を装うことで、破滅的な現実の到来を少しでも遅らせることができると信じたのだ。
長男の死に涙を見せず、葬儀で着る夫のシャツの色に指図する妻のエピソードは、まさに強さに取り憑かれた米国たる振る舞い打。
苦しむコンラッドを両親に預けてゴルフに興じる場面、ジョギングの間中、同僚と株の売買の話題が続く場面など、ところどころに強い米国の普通が描かれ、そのことに耐えられなくなる一見普通ではない父親が描かれる。
観る側は「どっちが普通?」と問われているのだ。
ティモシー・ハットン、ジャレツド・ハーシユら主要キャストがみな好演。
エリザベス・マクガバンのはちきれそうな顔は当時あまり好道ではなかったが、今見直してみると愛嬌があってチャーミングだ。演技も素晴らしい。
この時代の上流家庭の暮らす街並みは美しい。あの時代がよかったと思ってしまうのは、やはり作り物の普通に騙されていたからなのだろうと思うのは少しばかり悲しかった。
【”人生とは予測できない事故、事件の連続を自己抑制出来るかどうかで行く末は変わる”幸せだった4人家族の絆が徐々崩壊していく様を描く切ない作品。】
■ロバート・レッドフォードの監督デビュー作。
ー 冒頭から、コンラッドは頻繁に悪夢に魘される。それは、時化でヨットが転覆する夢だ。一緒にいたのは、観ていると徐々に分かって来るのだが、母、ベスが溺愛していた兄、バックであった。-
◆感想 <Caution! 内容に触れています。>
・鑑賞していて、辛い気分になる映画である。ヨットの事故を自分の責任であると思い、自殺を図るコンラッド。
- カルヴィンはコンラッドを精神科医のバーガーに週2回、通院させるが・・。-
・ベスはコンラッドに対し、普通に振舞おうとするが、どうしても冷たく、素っ気ない態度になってしまう。
- コンラッドが普通に暮らそうと努力すればするほど、精神的に追い詰められていく姿。-
・父・カルヴィンは、コンラッドとべスの関係を解きほぐそうと苦悩するが…
- 在る夜に、カルヴィンがそれまで抑えていた妻ベスに言ってしまった言葉。ー
<幸せだった4人家族が、予測できない事故、事件により関係性が崩壊して行く様を描いた作品。
ラスト、家を出た母ベスのいない幸せの象徴だった大きな白い家の前で、肩を抱き合って泣くカルヴィンとコンラッド。
誰が悪いわけではないのに・・。何とも、切ない作品である。
カルヴィンとコンラッドが立ち直り、新しい生活を始める事を淡く、期待してしまった作品でもある。>
40年前…
もうそんなに経つのか〜
当時は観に行かなかったが、ティモシーハットンの名前を知ったのはこの作品。
最近観た作品に彼の名前を見つけ、懐かしくなりじっくり観てみた。
色褪せない作品だと思う。
着ているものは時代を感じるけど(笑)
恐らく普通の人々が抱えている心の問題が、丁寧に描かれている。
なかなか自分を許せないコンラッド。
病院で知り合ったカレンが亡くなったことをきっかけに、ようやく全てを吐き出すことが出来たのかな。切ないが。
母方の祖母を見ていると、母親の持つ心の闇が見えてくる気がした。
当時アダルトチルドレンという言葉があったかわからないけど。そんなものも見え隠れ。
母親は認めないと思うが、溺愛していた長男を亡くす前からコンラッドをするりするりと避けていたこと。そしてコンラッドはそれをずっと感じていたこと。
子供を同じように愛せない母親はそんなに珍しくないのかもしれないが、それに気づいてしまったら、子供は辛いよね。
そしてそこを突かれそうになると瞬時にキレる母親。演じた人もうまかった。
そうそう、こういう返し方するよね、という感じ。
母親がバーガー医師と会わなかったのは残念。
カウンセリングを受けていたらまた違ったかもしれない。
最初と最後のカノンいいね〜
普通じゃなかった
結局お母さんが悪者に。確かに冷たい感じや情に欠ける行動。でもそれが子供を亡くしたショックでだとすればやや気の毒な感じがした。24の主人公のお父様がお父さん役で出ていた。よく似ている。
取り繕うことの限界と残った家族
総合60点 ( ストーリー:60点|キャスト:70点|演出:70点|ビジュアル:70点|音楽:75点 )
良い職業を得て郊外に一軒家を持ちそこに家族と共に幸せに暮らす。ほんの数十年前までは失業と貧困に怯えながらその日暮らしをしていた多くの市民からすると、そのような生活が一般的に思い描く当時の普通の幸せの姿だろうか。
だが社会が発展し安定してくると、人々は物質的豊かさから心の豊かさへと次の段階に目を向ける。一見幸せに過ごせる条件が揃っているようでも、その内実は問題を抱えている家庭が多い。そんな時代背景もこの映画の製作にはあったのではないだろうか。
物質的には満たされていても、大きな事件の後の心の隙間を埋められない家族の心の間の齟齬が表面化していき、努力をしてみたり感情のままに暴走してみたところで取り繕うことも出来なくなる。家族の一員として無理して家族のために生きるよりも、家族と離れ一人の人として自分の心に正直に自分らしく生きることを選んだ母親が、自分はとても好きにはなれないけれどもそれほど悪人だとも思えない。家族という義務感を負って見た目を取り繕う家族ごっこは終わって、でも人として家族の在り方を何もないところから見直せる父子には家族としての愛情が残っている。そんな家族の崩壊ともがきとやり直しが観られる。
だけどこの作品が面白かったかというと、そうでもない。みんなの苦しめられている姿がひたすら続くし、そうなればもうこの家族は駄目なんじゃないのって思っていたし、その様子を見せられ続けてそれでどうしたのという感じ。
この時代には外から見た家族ではなく家族の内面を見つめるという意義があったのかもしれないが、現在では当たり前すぎる。アメリカでは二組に一組が離婚するのは、家族ということに縛られすぎないで個人の生き方を求める時代になってきたということ。その過渡期の時代の作品なのかもしれない。
"愛"の持つ力
"愛"という恐ろしい力
父は長男が死んでから狂ってしまった家族をなんとか支えようとする。
完全に長男の方に向いていて次男にはあまり感心を示さず、息子を嫌う母親などいないと言いながら次男を愛してなかった母。
そのことに感づいていて重い責任感を抱えながら過ごす息子。
父はそんな二人の調和を合わせようとしたが、何が原因かわからず、医者を尋ねる。
が、遅かった。
母親は出ていってしまう。
"愛"だけでなんでも壊せる。そして"愛"だけで人を幸せにできる。
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