「私にはできない生き方」ファイト・クラブ きーとろさんの映画レビュー(感想・評価)
私にはできない生き方
私は真面目な方なので、映画とはいえ暴力や犯罪は観ていて引いてしまいます。もったいないですが本作を本気で楽しみきれなかったと思います。悪いことをするのに抵抗や恐怖を感じるんですよね。タイラーにクソゴミ野郎言われるタイプです。
タイラーのきったないたまに浸水する家より絶対いい家具揃えた家でくつろいだほうがええやんと思ってしまうのですが。私にはできない生き方だなあ。
鑑賞中はファシズム的雰囲気のせいか、終盤のタイラー軍団をめっちゃ悪いことやってる集団に思い込んでいましたが、実際のところ彼らは殺人はやってないですし、色々破壊して、最後もクレジットカード会社のビル群崩壊させたくらいなんですよね。まあ大事っちゃ大事ですけど。
そこに気づいてからちょっとこの作品が好きになりました。映像、演出もさすがのデヴィットフィンチャー。他にはない尖ったセンスを感じます。
良くも悪くも、克己というのか。そして最後は自分に似た境遇(≒自分)のマーラにこれからすべてよくなると告げる。自分を認めることができたって話なのかなと思います。崩壊するビルと相まってなんとも美しいラストシーン。でも自分撃った時は絶対死んだと思いましたよ、なぜ生きているのか主人公。
bgmも格好良かったです。オープニングから引き込まれました。「小さな1回分パックの人生旅」のあたりとかもセリフと曲の組み合わせがクセになります。
終盤の警察署のあたりから流れる曲も格好いい。
序盤でタイラーのサブリミナルがところどころで出てくるので、幻かもなあとは思っていましたが、二重人格とは。寝てる間に活動しているというのもいいですね。序盤で挟まったシガレットバーンの話が、もろにこの作品の構成の解説になっているというニクい演出が素晴らしい。さっき書いたサブリミナルやラストにアレを入れ込むのとかも。
タイラーが後ろでヌンチャクやってるシーンとか、「ケンカを売るのは難しい」のファイトクラブ会員たちが空回りしてるシーンがシュールで笑えました。あとは主人公の「僕はジャックの○○です」の言い回しがお気に入り。
登場人物が何かを投げ捨てるシーンがちょくちょくあるのですが、それがどれも格好いい。特にタイラーのタバコの捨て方。真似した人も多いのでは。投げた後拾ってね。ポイ捨てはだめですよ笑
ブラッドピットはもちろん格好いいですが、エドワードノートン、めっちゃ輝いてました。ボロボロになるのが妙に似合う。いろんな表情が見られるので彼のファンの方には是非見て欲しい作品です。