「死ぬほど良かった」愛のコリーダ 金子和令さんの映画レビュー(感想・評価)
死ぬほど良かった
全てが美しかった。画面の隅から隅までの構成、色彩、音、役者陣の演技、設定、演出、ストーリー…。
過激な内容のため規制がかかって当然とは思うが、エロティシズムだけではない 芸術、美学が確固としてある。
序盤から、途中のとある儀までは 圧巻の美しさで、何度も何度も泣きそうになった。私自身はこの男女のように愛に狂う思いはしたことが無いが、それでさえ どうしようもなく切なくなるほどの画面の美しさ、情景に胸の奥から感動がこみ上げ、打ち震えた。
そこを越えると執拗なほどに2人のまぐわいをずっっと映す。定の激しい愛による狂気が募っていく。完全に2人だけの世界で、たまに見える異物(他人)にも定は狂気と激情を垣間見せる。
廃退的かつ排他的。定の髪や服装が乱れるにつれ定の正気は失われていく。見ている中で延々と続くセックスシーンに何度も飽きたが、それは定の激情についていくことができないから。そしてそれにずっと答える吉。見る者をも排除する2人の世界。
交わるにつれ、ラストに向かうにつれ段々と2人の交わりの奥の背景が暗くなっていく。
中盤から終盤にかけて、朱の使い方が良かった。もしかしたら序盤からそうだったのかもしれない。
定があそこまでセックスを求めたのは、2人にはそれしか無かったから。未来もなかった。お金もなかった。
吉も定を愛していた。たぶん、吉は愛された分だけその人を愛す人だったのかも。全てわかっていながら(もしかしたら定が怖かったのかもしれないが)
「お前がそうしたいなら、いいよ」
定も吉も魅力のある男で、女だった。
死ぬほど良かった(いろんな意味で)、見て良かった。人生No. 1の映画を塗り替えたかも(今まではジョーカーだった)