「レスターの存在感は光るが…」羊たちの沈黙 すっかんさんの映画レビュー(感想・評価)
レスターの存在感は光るが…
◯作品全体
猟奇殺人犯を追うミステリーっぽさがあったけれど、レスターとバッファロー・ビルをカメラに映してしまった後は見せたいものが明確な作品だった。
その明確さは登場人物やシチュエーションに緊張感があれば良いのだけど、そうでないシーンでは少し退屈だった。
レスターを映すシーンではもっとレスターという人物を隠すような語り口にするのかと思ったけど、主人公・クラリスとレスターのアップショットを繰り返して役者の芝居で勝負をするような感じがした。レスターの初登場シーンなんかは底知れなさが面白かったけど、その後のシーンは画面が単調で、少し退屈に感じた。
バッファロー・ビルを追う調査パートはその退屈さに拍車がかかる。バッファロー・ビルが画面に映されるまでは正体の底知れなさがフックになっていたが、中盤以降は「ザ・猟奇的」っぽい異常さがちょっとチープに見えてしまう場面もあった。ラストの攻防も、サーマルゴーグルをつけたバッファロー・ビルののんびりとした動き(クラリスの目の前で手をクネクネさせたり撃鉄を起こしてなかったり)が「ザ・油断した異常者の動き」っぽくてイマイチ。わかりきった結末までの過程としか見えないのが残念。
レスターの立ち振る舞いや睨みを効かせる表情は印象的だったが、ホラーとしてもミステリーとしても飛び出た要素はなかったかな、と個人的には思ってしまった。
◯カメラワークとか
・役者のアップショットが多すぎるし、状況説明に徹したカメラワークが多すぎて、日本のドラマを見てるような退屈でチープな画面って思うシーンが多々あった。レスターの倉庫に行くシーンとか終盤のバッファロー・ビルの家のシーンとか。なにがどこにあってここはこうですよ、みたいなことが伝えられすぎてて、ちょっとくどい。
◯その他
・FBIの訓練シーンとか監獄のシーンとかラストの表彰シーンとか、このシチュエーションならこういうことするよね、みたいな表現が多すぎる。訓練だったら男と五分五分に戦う格闘シーン、監獄ならやべーやつのやべー言動、表彰シーンだったらスタンディングオベーションされて記念品渡されて写真撮って…みたいな。ここではこういうことしますよ、というのを映されるの、映しても良いけど多すぎる。映し方に工夫があったりストーリーに繋がる意味があればいいけどそうではないし。