パリ、テキサスのレビュー・感想・評価
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とても良い映画
『ヴィム・ヴェンダース レトロスペクティブ ROAD MOVIES/夢の涯てまでも』にて鑑賞。
大学時代、これを観た友人がみんな口を揃えて、「良かった」だの「ナスターシャ・キンスキーは最高だった」だのと宣(のたま)っていらっしゃったので、今の今までスルーして来ました(笑)
で、今回良い機会だったので、やっと観ました…笑(DVDではなく劇場で観たかったのです)
たぶん、みなさん、主人公トラヴィスとナスターシャ・キンスキー演じるジェーンがマジック・ミラー越しに会話するあの"名場面"に感動したんでしょうなぁ、と容易に想像出来ました(笑)…本日、僕の周りでも数人が鼻をすすってはりましたわ…笑
で…
ん〜、そんなに共感出来るシーンでしたかねぇ(笑)
マジック・ミラー越しでもあれだけ喋り倒したら、「話している相手が誰なのか?」にいい加減気付くだろう…という考えが頭の中で気になり出して、正直素直には感動出来ませんでしたわ(笑)
それに、お互いの"我が儘"な事情というか痴話喧嘩?で別れた2人が、後悔の後に再会したからといって…だからどうした?(笑)
今は育ての親の元で幸せに暮らしていたハンター君が、そんな生みの親の事情で振り回されて、なんだか不憫だなぁと思いました。
…まあ、感性や感覚、受け取り方の違いなのかも知れません…人それぞれですから(笑)
*むしろ、ウルッと来たのは、トラヴィス家族3人がまだ幸せだった頃の様子を収めた8mmフィルムを、弟夫婦と一緒に久しぶりに見る場面でした。今やもう取り戻せない"人生最良の時"が永遠にパッケージされている映像は、なんだか懐かしい以上にただ虚しく、それこそ過去に対する後悔の念が湧き起こって来て、その取り返しのつかなさの大きさを想像すると、まるで自分のことかのように悲しくなってしまいました。この場面はなかなか秀逸だなと思いました…そして、この時ばかりは、ライ・クーダーのギターもなかなか良かったです(笑)
子役が可愛すぎる
多分、私のレビューで子供が可愛いとタイトルに書いたのは初めてかもしれない。「ホームアローン」とか子供が主役あるいは準主役の映画なら不思議では無いかもしれないが、この映画で子供の可愛さをタイトルにするのは私ぐらいだろう。ただ、この映画を見ればこのことに納得していただけると思う。そのことがわかると、この映画の2人の行動が理解できないのである。つまりこの映画自体を理解できないのである。
最後、なぜ主人公は妻と子供と一緒にならなかったのか甚だ疑問である。それに、ホテルの部屋で妻が子供と会えて感動的な抱擁シーンで終わるが、考えてみれば、妻のほうは子供が弟夫婦に育てられているのを知っているし、住所も知っているので会おうと思えばいつでも会えるはずだったのではないか。それとも風俗店での鏡越しでの夫との会話で、自分の過ちに気づいたということだったのだろうか?
あと、そもそも主人公と妻があんな可愛い子供を置き去りにして出て行った理由がわからない。8ミリビデオでは幸福の絶頂のように仲が良かったではないか。
ナスターシャ・キンスキーの美しさだけが非常に印象に残る映画であった。ただ、それだけでも見る価値はある。あと、あの子供も。
<その他>
あの子役はハンター・カーソンと言って、カレン・ブラックの息子だということがネットで分かった
覗き部屋の巧みとパリ、テキサス
傑作。前半は主人公と弟との長いドライブ、後半は息子とのドライ
ブ、その道中のやりとりや日本ではいられない荒れ地を通る高速道
路も見ごたえがあるが、固唾をのむのは何といっても、深く愛しあ
い傷付け、4年間音信不通で別れていた男女の再会の場面を覗き
部屋に設定したアイディアの迫力だ。
女は相手の男のすがたが見えず、自分の姿しか映らないマジック
ミラーの「鏡」を見続ける。男には女が見えるが相手には自分が見
えていないことを知っていて通話機を通じてしか話せない。もちろ
んたがいに触れあうことは全くできない。男女関係についての実に
巧みな設定だ。覗き部屋の場面で女が一人で画面いっぱいに延々と
映し出される。これはナスターシャ・キンスキーの「濃い顔」じゃ
ないともたないだろう。
ヴェンダースは、この場面をはじめ、八ミリに映し出された団
欒のシーン、息子を学校に迎えに来た真っ新なスーツ姿のトラヴィ
スと息子が道路を挟んで下校するシーンなど巧みな映像で我々の
目を魅了する。だが、ただ写真とトラヴィスの思い出話にしか出て
こないパリ、テキサスがなぜ題名なのか?それは自分を失ったトラ
ヴィスが自分を取りもどすためのかけがえのない唯一の場所だから。
彼はその場所で誕生し、その場所での再生を目指す。
ナスターシャ・キンスキー見たさに
雑誌で映画特集が組まれるたび必ずといっていいほど紹介される『パリ、テキサス。』 コロナウィルスで自粛期間中に鑑賞しました。
冒頭から、カンカン照りの真昼間のテキサスを汗もかかずにスタスタ歩く主人公、4年近く声を発していないわりには、しゃがれ声にもならずに突然ペラペラ話し出す、一銭も持たずに水だけで旅を続ける・・・いったいどうなってるの?と突っ込みたくなるのはさておき、80年代の映画の色褪せたようなカラー映像の美しさには納得です。
テキサスのハイウェイ沿いの荒涼とした風景、ガソリンスタンドや安モーテル、はては怪しげな覗き部屋など、本来なら殺風景といってよいものが、一枚の絵や写真のように美しく切り取られていました。
BGMはほとんどなく、たまにギターを掻き鳴らす音が聞こえてくるだけ、尺は2時間以上あって、眠気との闘いになったところもあります。
終盤にようやく登場するナスターシャ・キンスキーがとにかくかわいい。ブロンドのボブヘア、赤くてぽってりとした唇、赤や黒のふわふわしたニット、除き部屋の青いカーテンや赤い電話機などど相まってポストカードにしたくなるような画でした。
主人公が4年もの放浪の旅に出た理由は、彼女を愛しすぎていたからということになるでしょうが、彼女を愛するあまり、あらぬ嫉妬や妄想をするようになり、彼女を責め立て、結局は失ってしまう・・・というくだりは、彼女のように美しくはない私ですが、経験したことがあり、思い出してぞっとしたのでした。もしこの映画のように若くして妊娠していたら、自由を奪われた、束縛から逃れたいと私も思ったかもしれません。
彼女と子どもを引き合わせて自分は去る、というラストですが、これもちょっと理解しかねます。男のロマンなのでしょうか。子どもを育てるのにはお金が必要なのですが・・・、経済的支援も資金繰りもしないまま、また旅立ってしまいました。
余韻がいつにも増して不思議な感覚
物凄く完成度の高い脚本ではないかもしれないし、設定も大まかかもしれない。でもこの監督の作品が愛おしく、いつもは作品の纏う空気感を愉しむために見ている感じだった。けど、この作品中に一つ心に残る(突き刺さる)セリフ「虚しさを埋める代償にしたくなかった」
このセリフを言わせるための作品のように思った。
出てきたファミリー全員、本来愛情に満ち溢れてるのに溢れすぎて別離の道を歩んでしまう。
思ってたより余韻が残る作品。
作家性が強すぎて落胆
テキサスの荒涼とした礫地を行く放浪者、サスペンスを思わせるほどの小出しの状況説明、最後まできて一家離散の心の闇がやっと語られる。ナスターシャ・キンスキーを使ったことからロリコン親父の被害妄想の説得性や放浪という自虐的な現実逃避も分からないではないが身勝手な感傷主義に思えてならない。
脚本途中で製作に入り結末をどうするかは脚本のサムシェパードと監督のビム・ベンダースは電話で話して纏めたがサムは不本意だったらしい、後に組んだ「アメリカ、家族のいる風景」で補ったと言われている。特殊な家族を描くことで平凡な家族の見落としがちな何かを伝えたいという手法は是枝監督も使う手だがベンダースは本作の主人公のように多くを語らない、ドイツ表現主義では万人受けなど端から眼中にないのだろう。
こういうテンションの張り方はタルコフスキーなども用いるが芸術性が高いとも思えない。
作家性が強い映画で製作動機が理解できないがカンヌの批評家には高評価だったようだ。
なんとも切ない
切ない映画でした。いや〜、なんとも切ない。
主人公トラヴィス。未熟な男です。しかしこれは非難の意味合いではない。彼はどうしても成長できない、成熟できない悲しさを抱えているように感じられます。愛を切望しても壊してしまう、そんな自分に絶望しているのでしょう。
そして、タイトルにもなった、彼の故郷パリ、テキサスに戻ろうとする姿から、原家族との関係の傷つきが、彼の成長を止めていることが推察されます。父と同じような妄想に取り付かれていると感じるトラヴィスは、息子ハンターにも、自分が体験した傷を負わせてしまうという恐怖を感じていたと思います。ハンターに自分の両親のことを語る姿は、なんか切ない。彼はクライベイビーですよ。
元妻のジェーンとトラヴィス、一見年の差カップルですが、精神的には近い2人だったんでしょうね。ジェーンもおじさんをパートナーに選ぶくらいだから、安心感を必要としていた人なのかな、と思います。しかしパートナーは体はおじさん、心はベイビーだったため、上手くいかなくなるのも宜なるかな、です。
しかし、一番切ないのは弟夫婦、とくに妻のアンだと思います。ハンターを実の子として、本当に愛して育てたことが伝わってくるが故に、辛すぎますね。
ハンターの布団がスターウォーズなんですよね。アンは宇宙好きの彼の嗜好をちゃんとキャッチして選んだのでしょう。きっとあの布団が家にやってきた日にハンターは超喜んだと思うんですよ。そういう、すごく大事な積み重ねが伝わってきたが故に、本当に胸が苦しい。
ハンターが母と別れたのが3歳。愛着対象は確かに母親でしょう。トラヴィスも問題あるけど優しい男だから子どもは見抜いて懐きますしね。
とはいえ、弟夫婦の話は残酷だと感じています。
名作と誉れ高い本作ですが、確かに素晴らしい映画でした。マジックミラー越しのトラヴィスとジェーンのやりとりなどは、すごい説得力で迫ってきました。
しかし、トラヴィスの物語にはがっつり共感できず、むしろ弟夫婦に感情移入していたため、ハマるまでには至りませんでした。
のぞき部屋のスタッフとして、伊達男ジョン・ルーリーがちょこっと顔を出しており、ジャームッシュ初期3部作好きとしては思わすニヤリとしました。
カントリーな風景と独特の恋愛観
詩を見ているような感覚を受ける映画。
感情や風景の描写はセンスが溢れているが、
世界観自体が独特なので好みが分かれそう。
「愛しすぎて別れた」とか「失意から何年も世界を放浪し続けた」
とか、そういう世界観。
個人的には一人息子の扱いが気になった。
母にも父にもポイポイ捨てられては拾われる、ということを繰り返されて、
それでも最後の最後まで無条件で親を受け入れる子ども。
そして、一目見るなり、お互いに抱き合い涙する親子…。
子どもはそんなに都合のよいものではないと思う。
育児放棄は子どもを傷つけるという自覚が足りないというか、
親のエゴに目をつぶって、綺麗にまとめようとしたところが共感できなかった。
自分探し
記憶を失ったトラヴィスが、自分を再発見し、家族の再生を試みる話。
テキサスの平原や青空の映像が美しい。DVDで観ていても息を呑むほどに。
淡々と、起伏なく物語は進んでいくが、
最後のトラヴィスと妻がミラー越しに話すシーンや、トラヴィスが息子に対したテープレコーダーの声や、妻と息子が再会するシーンはとても感情的で、感動的。
最後まで3人揃うことがなかった家族だけれど、
それぞれの、それぞれに対する愛情は確かで、
愛ゆえに、一緒にはいられないと決断した悲しさは、とても美しいと感じた。
静かに自分を見つめ、
勇気を出して前へ進む決断をしたトラヴィスに、
勇気付けられた。
全カットがポストカードのよう。
とても良かった。古い映画だし観るのきついだろうなと思ってたら、絵力というのか、惹きつけられて目が離せなかった。アクション大作の派手なシーンよりも、父親と子どもが出会うシーン、母親を見つけるシーン、父と母がマジックミラー越しに話すシーン、母と子が再会するシーンの方が見せ方次第で迫力があるのだなと感じた。どのシーンもポストカードのような美しさだったけど、特にジェーンと話す部屋のカットが目に焼き付いている。
観て良かった。
しびれる
学生時代にリアルタイムで観劇したのが最初。不気味な話、と引きました。
主人公登場のシーンや、喚き散らす人、などが痛々しくリアル過ぎと感じたから。
後に『ベルリン・天使の詩』などを観て、すっかりベンダース監督にハマり、評価が逆転。
ハリー・ディーン・スタントンや、ライ・クーダーも大好きになりました。
終わりのシーンは本当に格好いいです。
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