「愛することが下手くそな人へ」パリ、テキサス ゆーさんの映画レビュー(感想・評価)
愛することが下手くそな人へ
聞き覚えのあるタイトル、ヴィムヴェンダース監督作品、カンヌパルムドール、ということからWOWOWオンデマンドで鑑賞。
観終わった時の感想は、うーん?この終わり方ってどうなんだ、トラビスは、ジェーンは、ハンターはあれでよかったのか?この後どうなっていくんだ?ともやもやしました。
が、その後、全体を通したさまざまな悲哀を感じて滋味深いなぁと。
トラビスの妻への歪んだ愛と破綻。
ジェーンの傷つきと手放した子どもへの思慕と後悔。
ウォルターの兄への献身。
アンのハンターへの愛情と自分から離れていくのではないかという不安。
まだ7歳のハンターは、いきなり父親が現れたり義父母が自分のことで言い争っている声をきいてしまったり義母を悲しませることになったり実母と2人きりで再会したりと情緒のジェットコースターで一番哀れに思われました。「左(ヒューストン)だよ、ダッド」健気すぎて一番印象に残った台詞でした。
トラビスが悪いと言ったらそれで話はお終いですが、愛する人を上手に愛することって難しいですよね。私自身、夫婦関係を健やかに育むことは本当に難しいことだと実感していて、トラビスを蔑むことはできないし、いかに自分が妻を苦しめたかを自覚してからの語りや、親子3人の再会にせずに自分は遠くから見守って去っていくという選択にトラビスの「また自分は相手を傷つけてしまうかもしれない、これ以上傷つけたくない」という気持ちが感じられました。
弟夫婦、特にアンの気持ちを考えると辛くなりますね。でもきっとハンターはアンのこともジェーンのこともどちらもママだと思って生きていくような気がしている。
誰もかれも、悲喜交々生きていくんだよなぁと人生について考えされられました。
観てよかったです。