「【一人の女を愛しすぎて”心が裂けた”男の、再生と贖罪の放浪の旅。】」パリ、テキサス NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【一人の女を愛しすぎて”心が裂けた”男の、再生と贖罪の放浪の旅。】
ーこの作品は、何度観ても、鑑賞後の余韻が長く残る・・。ー
1.作品の随所の映像の”赤”の使い方が実に巧みで、脳内に各シーン毎の印象として刻み込まれるためなのか・・
・冒頭、テキサスの平原を歩くトラヴィスが被っている野球帽の汗でくすんだ”赤”であったり、
・ウォルトがトラヴィスを自らの家に2日掛けて、車で連れて行く途中、休憩するモーテルの周囲の看板の電飾の”赤”であったり、
・トラヴィスとハンターが”妻、母”の車ではないか?と追跡するシボレーの
”赤”であったり、
・トラヴィスが”覗き部屋”で鏡越しに向き合った女性(ナスターシャ・キンスキー)が着ていたセーターの”赤”であったり、
・”妻、母”を探す、トラヴィスとハンターのシャツが”赤”であったり・・
2.トラヴィスの表情の変化が微妙且つ絶妙に表現されるためなのか・・
・冒頭から暫く、トラヴィスは“黙りんぼう”と医者から言われるほど、何も言葉を発しない。表情も無機質である。
・ウォルトがトラヴィスに対し一方的に喋るうちに、トラヴィスが徐々に話し出す”テキサスのパリ”に土地を買った理由。
”僕の人生はあそこで始まった・・”
ーウォルトが兄、トラヴィスをさり気無く思い遣る気持ちが、乾いてしまった彼の心を徐々に潤していく。-
3.ウォルトの家で”身勝手にも勝手に家を出た”トラヴィスが4年振りに会った息子、ハンターと少しづつ会話を始め、学校の迎えに何度か行き、漸く一緒に二人で並んで坂道を歩いて帰って来るシーンなのか・・
ートラヴィスは徐々に服装にも気を配るようになり、表情も少しずつ豊かになって来る。-
4.妻、ジェーンの居所がウォルトの妻アンの言葉により、朧げに分かったトラヴィスがハンターに”旅に出る・・”と言った後のハンターの口から出た”僕もママに・・・”と言うシーンのためなのか・・
ーハンターが自分の幼き姿と”両親”の幸せそうな8ミリビデオを見る表情と、アンの”息子がいなくなってしまう・・”という哀しみ、心配する切ない表情の対比・・。-
5.追跡した赤いシボレーが停まっている場所の脇で働く女性の”職場”に行き、女性と鏡越しに話すシーン。
そして、ホテルに残したハンターに”メッセージ”を残して、再び女性に会いに行くシーンのためなのか・・
■”女性”に対し、トラヴィスが”二人の男女は愛し合っていた・・” ”トレーラーで暮らしていた・・”と話を始め、
”電気を消せば、俺が見えるのか・・”
”女性”は、鏡に身体を寄せ、”ハンターのいるホテルへ行くわ・・”
<ライ・クーダーが奏でる、”旅愁を誘うスライド・ギター”の音色も心に沁み入るロードムービーの傑作である。>
<1990年代 映画館で鑑賞。その後、幾度か様々な媒体で鑑賞>
NOBUさん、こんにちは。今度、午前十時の映画祭にこの映画が取り上げられるので皆さんのレビューを読んでます。NOBUさんの「赤」のご指摘で、そういう所にヴェンダースの小津安二郎監督敬愛が出てるのかなあと思いました。ロードムービーあまり見ないのですが、スケアクロウやテルマ&ルイーズを見て少し慣れてきたので、パリ、テキサス見ようかなと思いました。ステキなレビュー拝読させて頂きました、ありがとうございます!
今月の初めから、来月半ばまでの予定でやってます。確か、大阪か京都、名古屋でもあるように思います。全部で10本で、8本観た時点で、下書きしてたのを一旦まとめないと収拾がつかないなと思ってレビューを上げました。でも、ヴィムヴェンダース好きなので、なんか良かったです。