パピヨン(1973)のレビュー・感想・評価
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不思議な調和
脱獄不可能な牢からの脱獄映画と聞く。
かってに、逃げようとする囚人と、逃がすまいとする監視との攻防が描かれているのかと思った…違った。
確かに、脱獄不可能な設定。
でも、よく考えると穴もある。あれ?パピヨンたちを連れてきた船は行き来ができるの?
唐突に現れる援助者、あれ?誰?なぜ?
双方の知力合戦というわけではない。
けれども、この作品の魅力は別のところにある。
裏切り、信頼。
執念、諦観、適応。
そして、人生を生きるとはと考えさせられてしまう。
いかつい設定のわりに、ギャグか?というようなほんわかとした場面ーワニや蝶の捕獲。
昔、ジャングル大帝等で憧れたジャングルをほうふつとするシーン。
緊迫した場面なのに、どこか広々とした探検しているみたいなわくわく感。
囚人服も、おしゃれでポップ。おじさんたちが着て、重労働しているというギャップのセンスが何とも言えない。
そんな場面が、暑苦しいほど生のエネルギーがほとばしるパピヨンと、どこかのほほんとしているルイの、本来相容れぬ要素なはずなのに、微妙な間と雰囲気を作り出し、目が離せなくなる。そこに後半は、むき出しの刃物みたいな雰囲気をちらつかせながら、人のよう男が加わり、さらに一筋縄ではいかない展開が待っていて…。
映画の中盤には、これでもかというほどの悲惨な牢獄場面が出てくるかと思えば、
話がどこに行くのかと心配してしまうようなパラダイス?というような生活も見せ、そこで落ち着くかと思えば、さらなる展開があり…。
盛りだくさん…。
その間に挟み込まれる夢?幻覚?砂漠の裁判。三途の川のようなシーン。その衣装・メイクのセンス等に脱帽。
見直すたびに、いろいろな場面に唸ってしまう。
そして、誰もが絶賛する主演お二人の演技。
独房に入れられたパピヨンの細かい変化。独房の壁が取り払われ、ドアが開いた時のシーン。『ショーシャンクの空に』の独房から出されるシーンはこのシーンのオマージュか?
ドガが「初めて守ってもらった」と言う場面や、「(ばらされても)仕方ない。食事が半分では死んでしまう(思い出し引用)」と言う場面の表情。それだけで、それまでドガがどんな人生を歩んできたかが見て取れる。そんな場面があるからこそ、ラストの場面が身に染みる。
これだけ詰め込むと、話が散漫になりそうなものなのに、見せ切ってしまう映画。
主筋だけならもっと短くできるだろうが、何度も見ていると他のシーンも味わいたくなる。
微妙なバランスで成り立っている不思議な映画。
PS.かなり刺激的な場面もあるのでご注意を。
骨太反骨映画
マックィーンとホフマン。監督はフランクリン・J・シャフナーとくれば硬派な作品だと想像がつくが、その通りであった。
ザラザラとした画面にムンムンと漂う男臭さ。そして反骨精神の塊のような主人公。こういう映画は70年代はいっぱいあったが、今ではとんと見あたらない。
前半独房シーン描写の念の入り方が凄くボロボロになっていく主人公が別人の様。だが目だけはギランギランと輝いているのだ。スティーブ・マックィーンの魅力とはまさにこれ。ホフマンは相変わらず小技を効かせつつ相方を立ててたかな。
敢えて難点を言うと、後半どこに向かうの?(映画的に)という展開があり、妙な余韻を残す。このシーンをタイトにしたら普通の尺になる気もしないでもない。そこがアクセントでもあるけどね。
ガツンと主張のある男の脱獄映画でした。
前半はやっぱり陰鬱、後半ぜったい諦めない冒険映画!
ゴキブリを食べるシーンが当時話題となった
余生は自由に
その事実を知ってホッと一安心。
最後だと思った脱獄に成功したと安心して観ていたら白髪まみれのお爺ちゃんに若干のツメの甘さが玉に瑕!?
あぁ...コノ島で最期を迎えるのか....いやいや何度でも懲りないチャレンジ精神でそんなパピの姿に諦めない行動に唖然としてしまう。
あんなに穏やかで綺麗な海と無声映画になるあのシーンの長さも気が付けば気にならず!?
本作が実話って驚愕!?
あしたのジョーみたいな映画
この映画はなんなんだ。何が言いたいんだ。。。わからん。しかしなんだこの衝撃は。
ただただ、我慢、我慢、我慢!!!耐え抜け!誘惑には絶対に負けちゃいけないんだ。疲れても、疲れても、疲れても走り続けろ。死ぬまで走り続けろ。救いなどない。もがき続けろ!!
そう。自分に勝て!
その先に、自由の地が待っているかもしれないのだ。しかしその自由の地はひと時の幻想でしかない。満たされることなど決してない。なぜなら、私達は人間だから。
なんか、あしたのジョーみたいな映画でした。
この映画の怖いところは、人間が生きる意味などなく、他の動物と同じようにただただもがき苦しみ死ぬだけだ、という、人間が最も認めたくない自然の道理を、極めてドライに突きつけているところだ。どんなに壁を越えようとも、同じことの繰り返し。結局満たされることなどない。人間に欲望がある限り。世の中世知辛い。人間なんて小さな存在で、無力だ。
でも、その事実を認めることができれば、強くなれる。何故なら、たとえ困難や苦しみを受けたとしても、それは普通なんだと思えるからだ。
苦しくても逃げるな。たとえその先に希望が無くても自ら立ち向かえ。
人間だけがそれができる。他の動物にはできない。神が人間に与えた唯一の宝物なんだ。
なんかようわからんが、衝撃を受けたよ。。。
マックイーン&ホフマンでしか成し得ない作品
脱獄ものの傑作
友情、裏切り、絶望、自由を求め続ける主人公の苛烈に美しい信念。
人間の生への執着心や自由を渇望する気持ちについて、これほど緻密に描いた脱獄映画って他にあるだろうか?
最後、ルイとパピヨンが再会し、パピヨンが断崖絶壁を見下ろしてここから共に逃げようと笑顔で話すシーン。ルイの瞬間的な悲しみを帯びた困惑の表情から、優しい表情で承諾する場面が印象的。
結構長い映画だけど、観る価値はある。
ラストのアレは有名なんでしょうか?
私の生き方を変えた映画
脱獄映画では1番面白い~。
脱獄系映画の名作
無罪の男の犯した本当の罪とは
総合:90点
ストーリー: 95
キャスト: 95
演出: 90
ビジュアル: 80
音楽: 85
仲間に裏切られて殺人の罪をかぶせられ、生きては戻れない南米の監獄に送り込まれてしまったフランス人の男、パピヨン。劣悪な環境の中で次々と他の囚人が命を失ったり自殺したりする。パピヨンは自分は無実だという思いに自由を求めて何度か脱獄を試みるがことごとく失敗、そのたびにさらにひどい環境での囚人生活となる。
誰とも話すことが出来ず太陽も当たらず通常の半分の食事しか与えられず、死を待つばかりの独房の中。地面を這う虫を食べてかろうじて命をつないでいるパピヨンは、ある日夢を見る。
砂漠の中をパピヨンがまっすぐと前を向いて歩いていく。地平線の向こうには裁判官たちが立って彼が近づくのを待っている。パピヨンは彼らに自分の無実を主張し立ち向かう強さを秘めて進んでいく。そのパピヨンに裁判官が言う。
「罪状は知っているな」
「俺は無罪だ。ポン引きを殺していない。無理やり有罪に仕立てて俺を非難している」
「それはそのとおり。だがお前の本当の罪はポン引きの死と関係はないのだ」
「なら俺の罪はいったい何なんだ」
「お前は人間が犯しうる最も恐ろしい犯罪を犯したのだ。私はお前を"人生を無駄にした罪"で起訴したのだ」
そのとたん、パピヨンは自分が犯した本当の罪を理解してつぶやく。
「有罪だ・・」
「そして刑は死刑とする」
「有罪だ・・、有罪だな・・」
そして罪を認めたパピヨンはうなだれて振り返り、もときた砂漠を歩いて帰っていく。彼は自分の人生を何年も壮絶に無駄に過ごし、それを二度と取り戻すことは出来ないことを悟る。
数多くの映画の名場面と言われるものの中でも、最も好きな場面の1つです。極めて悲惨な監獄ではあるものの、他の囚人達は犯罪を犯してそこへ送り込まれいわば自業自得で罪を償っている。しかし本来そうなる必要のなかったあまりに悲惨な人生を監獄の中で過ごさざる得なかったパピヨンであるからこそ、その罪の深さ・喪失感は計り知れない。
監獄生活の厳しさ・囚人への取り扱いのひどさ・自分を犠牲にしてまで貫く友情・命懸けの脱獄の試みと、この映画の見所はいくつもある。しかし私にとって一番の見所は、"人生を無駄にした罪"を犯したパピヨンの喪失感であった。それがあるからこそ、彼はその罪を償うためにも文字通り命をかけて何度も脱獄を繰り返した。彼の脱獄への強烈なまでの執念はただの刑務所からの脱出ではなく、彼自身の犯した本当の罪への贖罪であった。そこが実際に詐欺の罪を犯して監獄送りとなり、囚人生活の中にも多少の平穏を見つけたホフマン演じるドガとの違いでもある。そんな男の壮絶な人生の波乱の物語である。
絆は知らぬまにできている
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