「人物像の一面に焦点が当たりすぎて、物語としての盛り上がりに欠ける」パットン大戦車軍団 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
人物像の一面に焦点が当たりすぎて、物語としての盛り上がりに欠ける
総合:60点
ストーリー: 60
キャスト: 70
演出: 70
ビジュアル: 80
音楽: 60
パットン将軍といえばもう骨の髄まで軍人であり、好きなことを言い好きなことをする直情的な人物。「戦争が好きでたまらない」と公言し、停止命令を無視して前進を続ける。暴言を吐き問題ばかりを起こす、近代における軍隊の将軍としては異例な人物である。小学生か中学生の時に彼についての本を読んだときには、その強烈な性格と生き方に強い印象を受けた。
そのパットン将軍の映画であるが、彼のそのような異端児としての目立つ言動に焦点が当たり、北アフリカから始まってベルリンまでの、彼のたどった戦時中の経歴を繋ぎ合わせて映画が成立している。だから例えば彼の戦術司令官としての有能さが具体的に描かれていなくて、一人の異端な軍人としての人物像ばかりを追いかけすぎている。これだけの問題児なのに、それでもなお軍団司令官として任命され活躍出来たのかといえば、将軍として彼が優秀であったからである。それがこの作品ではそれほど伝わってこない。彼が兵士を殴ったとか暴言を吐いたとか、そんな醜聞ばかりが印象に残る。
実際彼はそのような部分で有名なのは間違いないのだが、そればかりがパットンという将軍ではないだろう。どうやって状況を分析しどう作戦を組み立てどう部下を鼓舞し組織をまとめどう戦ったか、そのようなことがあまり描かれていない。戦場の部分部分を抜き出してきて、ここでは勝ったとか言っているだけ。何をどうやって戦ったかもわからないまま、いつのまにか戦争すら終わっていて、今度はベルリンの祝賀会でソ連の将軍を侮辱する場面が描かれる。
このように彼の問題行動ばかりがまるで週刊誌のごとく大きく取り上げられて、優秀な将軍として描くという視点が少ない。そのあたりが理由で、どうも一連の物語として盛り上がりに欠ける。
登場するドイツ戦車が実はアメリカ戦車をドイツ風に塗装しなおしただけなのは仕方ないとして、全体としてセットと映像は頑張っていた。戦場となった町で破壊されている建物や転がっている死体などは本当の戦場のようであった。
『ブラスターゲット』というなかなか面白い映画がある。その劇中でなぜパットンは命を狙われたのか、この映画を観て彼の性格を知っておけば予習になる。