ネットワークのレビュー・感想・評価
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テレビ報道の熾烈な視聴率競争に巻き込まれる人々の波乱、業界の内幕 ピーター・フィンチ、フェイ・ダナウェイの演技が見事!
テレビ報道の熾烈な視聴率競争に巻き込まれる人々の波乱の内幕を描く。
出演が、フェイ・ダナウェイ、ウィリアム・ホールデン、ロバート・デュヴァル、監督が、シドニー・ルメットという豪華な布陣。
低視聴率から降板が決まったニュース・キャスターが、放映中にカメラの前で自殺予告を発表。
その様子はそのまま生放送される。
てっきり、自殺を敢行するかと思いきや、今度はある夜に聞いた「声」のメッセージを視聴者にテレビで訴える。
今すぐ、窓を開けて叫ぼう!
「私は怒ってる!もう耐えられない!」と!
すると、近所の窓から多くの人々が次々に叫び出す。
このシーンが凄い!
感動した!
確かに演じるピーター・フィンチが、アカデミー主演男優賞をとったのもわかる。
アカデミーの主演男女優賞って、わかりやすい熱演がとりがち。
また、ラブ・シーンですらテレビの話しかしない、主演女優賞のフェイ・ダナウェイも見事。
視聴率のためには殺人すら辞さない、誰一人止めようとしない結末が、衝撃的だ。
「これは試聴率の低下のために死んだ「最初の男」の物語」という皮肉なナレーションが効いている。
余談ですが、今回は町山さんの解説付き上映。
町山さんは好きですし、解説は面白くてためになるんですけれど、今回は解説が上映の前後にあって、なるべく情報無しで観たい私としては、上映前にあらすじ(ネットにもある、ほんのさわり程度ではあるんですが、)は聞きたくなかった。
上映前では逃げようがなくて困った。
次回からは耳をふさぐようにします。
『TV業界の今日を予言した一作』
自宅にて鑑賞。TV業界作り手の裏側や恥部を告発、昨今の醜態を予言した様な一作。ボテッとしたフォントのオープニングロールとタイトルコール。狂える男の一言は低迷する報道部や製作部、果てはテレビ局にとって、降って湧いた様な千載一遇のチャンスとなる。そこから始まる狂乱とも呼べる局内外の権力争いと影響される視聴者に世論。唯一の良識と思える男は派閥(権力)争いに巻き込まれ馘になってしまう。全篇に亘り、BGMはTVから流れるCMや番組テーマ曲のみで構成されている。かなりイカレた内容だが、マスメディアに興味がある人にはマストな一作。80/100点。
・アチラを見てもコチラを見ても始終、写し出されるのはおじさん達ばかりで、地味目の画面が殆どではあるが、'76年と云う時期に、コンプライアンスを声高に唱える反面、数字に取り憑かれ狂騒を繰り返すメディア業界の今日を連想させる本作を作った意義は大きい。ぜんざいの甘さを引き立てるのは添えられた一片の塩昆布であり、現実離れしたのが数多く描かれる映画(エンタメ)界にも、派手さには欠けるものの本作の様な渋めの一作は貴重なビター・スパイスである。
・余り乗り気でなかったが、観始めると描かれている内容にグイグイ惹き込まれた。明確な善人や悪人は登場せず、各々がそれぞれの立場で奔走ずる姿は、部外者からは滑稽で狂気にも通ずる感覚を憶える。テンポも悪くなく、ほぼ無駄が無い引き締まった展開は、観ている者を飽きさせない。人気者が出る甘いばかりのラブストーリーやお伽噺にしか思えない青いアニメ、超人達が翔び交うヒロイックものも悪くはないが、たまには武骨で骨太な本作の様な渋い一作も観ておくべきである。自称“バリスタ”が淹れる中途半端なコーヒーよりもウンッと目醒めが佳い事は保証する。
・求心力が人一倍強く、上昇志向の塊の様な女。そんな女に惹かれ、25年築き上げた家族を顧みない哀しい初老の男。顛末に救いらしきモノは存在しないが、鑑賞後の後味も悪くない。ただともすれば古臭く感じてしまう画面をどう感じるかによる。よく見ると、何度か登場する「ハワード・ビール・ショー」内の観客席には毎回、複数の同じ客(長髪に髭を伸ばした男性や白地に赤い縦縞のカーディガンを羽織る女性等)が見受けられる。
・本作はP.チャイエフスキーのオリジナル脚本が基となっているが、'74年7月15日、米国のABCテレビの関連会社WXLTテレビ(現WWSB)のトーク番組「サンコースト・ダイジェスト」の生放送中に女性キャスターC.チュバックが拳銃自殺を遂げた(彼女を題材にドキュメンタリー『Kate Plays Christine('16・R.グリーン監督)』と『Christine('16・A.カンポス監督)』の二本が映画化されている)。当初、P.チャイエフスキーは否定していたが、後にこの事件に触発され、本作の脚本を書き始めたと認めた。
・F.ダナウェイの“ダイアナ・クリステンセン”は、伝説のTVプロデューサー、リン・ボーレンがモデルになっているとされている。亦、M.ワーフィールドが演じている“ローレーン・ホッブズ”は、共産主義者としてメディアに迎合し、取り込まれた感のある実在した政治活動家アンジェラ・デービスがモデルとなっている。
・犯罪者自らが撮影したフィルムを鑑賞する際、話題に出ていたパトリシア・ハーストは実在の女性(身代目的で誘拐された後、誘拐犯側の一員になったストックホルム症候群の富豪令嬢)である。K.クロンカイトが演じている“メアリー・アン・ギフォード”はパトリシア・ハーストがモデルと思われる。亦、彼女の実父ウォルター・クロンカイトは“ハワード・ビール”役をオファーされたが、興味が持てず断ったとされている。
・P.フィンチが演じた“ハワード・ビール”はH.フォンダにオファーされたが、余りにもヒステリック過ぎるとの理由で断られたと云う。J.スチュワートも言葉が汚いとの理由で断ったとされる。この役は、(上述の)W.クロンカイト、(脚本も読まず辞退したとされる)G.C.スコット、G.フォード、G.ハックマン、J.チャンセラーにオファーされたらしいが、脚本執筆時のP.チャイエフスキーは、H.フォンダ、J.スチュワート、P.ニューマン、C.グラントを思い描いていたと後にインタビューで答えている。
・“マックス・シューマッカー”には、W.マッソー、G.ハックマンがオファーされたと云う。最終的にG.フォードとW.ホールデンが最終候補として残され、W.ホールデンがこの役を得た。
・第49回(1976年度)アカデミー賞主演男優賞 にノミネート直後、“ハワード・ビール”役のP.フィンチは心不全で急死したが、その後受賞し、アカデミー賞史上初の死後受賞となった(後に死後受賞したのは『ダークナイト('08)』のH.レジャーが二人目)。亦、W.ホールデンの“マックス・シューマッカー”の女房“ルイーズ”役そしてB.ストレイトが同年同賞の助演女優賞を受賞したが、アカデミー賞史上最も短い出演時間(約五分半)での受賞となっており、'19年8月現在、この記録は破らていない。
・'07年に千五百人以上による投票により決定されたAFI(American Film Institute)が定める「AFIアメリカ映画100年」の64位にランクインしている。米国を代表する映画評論家R.エバートの「最も素晴らしい映画ベスト100(Great Movies:The 100 by Roger Ebert)」にもランクインしている。亦、映画プロデューサーのS.ジェイシュナイダーによる「死ぬまでに観たい映画1001本(101 Gangster Movies You Must See Before You Die by Steven Schneider)」にもランクインしている。
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