「衝撃の「完全版」」ニュー・シネマ・パラダイス 3時間完全オリジナル版 コウチャンさんの映画レビュー(感想・評価)
衝撃の「完全版」
ぼくは50代半ばの男。今から三十数年前、大学生のとき、フジテレビのゴールデン洋画劇場で初めて劇場公開版を観た。その頃は自分自身、特に映画鑑賞が趣味ではなかったが、この映画は公開当時、単館ロードショーの日本記録を作る等、非常に話題になっていたので、世間の興味についていくために観た。なるほど、ノスタルジーを掻き立てられる、美しい感動作だということはよく分かった。が、一旦、ニュー・シネマ・パラダイスは自分の人生から離れていった。
それから数年が経ち、ニュー・シネマ・パラダイスにはロングバージョンがあるという話を、映画好きの知り合いから聞き、その後、その知り合いは、噂の完全版を観る機会に恵まれた。とんでもない内容だった!自分は2時間版の方が好きだな・・とのことだった。
それからさらに数年が経ち、中田英寿選手のペルージャでの活躍を観るためにWOWOWに加入したら、そこで、あの、伝説の3時間オリジナル完全版のテレビ放送にようやく辿り着いた。恐らく、2時間版を観てから6〜7年の時間が流れ、ぼくは30歳手前のサラリーマンになっていた。
あっという間の3時間が過ぎ、ラスト30分位泣きっ放しだったぼくは、テレビの前からしばらく動くことができなかった。映画を観て、これほどの衝撃を受けたのは人生で初めてだった。苦々しい気持ちと、リアルな悲しみと虚しさで、とにかく胸が張り裂けそうで、もう数十分前にテレビを見終わったのに、まだまだ涙が溢れて、感情の制御が難しかった。トトとアルフレードとエレナの間には、想像だにしないエピソードが隠されていた。本当にショックだった。それまで、この作品の登場人物たちは、あくまでも別の世界の架空のキャラクターだったが、完全版を観ている3時間の間に、3人はぼくの心に入り込み、気楽に観ていられる別の世界の人たちではなくなっていた。ジュゼッペ・トルナトーレ監督に脱帽すると同時に、2時間版→3時間版、それもその間に6〜7年を要したという異例の流れが、完璧にぼくの心を捉えたのだった。
以来、十数回は完全版を観ている。人生で、これ以上の創作物には出逢わないのではないかと感じた、最初のWOWOWでの視聴から、もう25年位経つ。あれから1,500本以上の映画を観たはずだけれど、完全だ、と確信した映画は、未だ、人生でこれ一本である。