デッドゾーンのレビュー・感想・評価
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Another Satisfying Cronenberg Joint
A Cronenberg film based on Stephen King material turns out to be a wildly apt combination. A series of bizarre events led underlined by a simple future-reading premise, dissentingly a potential atomic bomb. A thriller like no other really. Walken plays a role you might not be used to seeing him as. Aged like a fine wine, but quite fresh in this nightmare political climate we live under.
【”Vision of Death"今作は、自動車事故により5年間昏睡状態だった男が、目覚めた時に身に備わっていた能力を使い、身を呈して人々の不幸を防ごうとする姿が沁みるヒューマンサスペンスである。】
■高校の教師・ジョニー・スミス(ムッチャ、若きクリストファー・ウォーケン)は、恋人・サラ(ブルック・アダムス)とのデートの帰り道、車を運転中に横転したトレーラーと衝突し昏睡状態に陥る。
5年後、眠りから目覚めたジョニーは、過去や未来を見ることができる特殊な能力が備わっていることに気づく。
◆感想<Caution!内容に触れています>
・ご存じの通り、今作はスティーヴン・キングの小説「デッド・ゾーン」を可なり忠実に映画化している。
・この作品が切なくも沁みるのは、ジョニー・スミスが昏睡状態にあった5年の間に恋人のサラは結婚し、子供もいるのに彼は、足が不自由な生活をしつつも、凶悪殺人事件の犯人を、手を握っただけで彼が過去に起こした行為を当て、銃弾を浴びつつも犯人を捕らえる様や、家庭教師になった少年が所属するアイスホッケーチームが、池に張った氷が割れ水中に落ちる様を言い当て、少年の父に首になりながらも、少年の命を助けるために”ホッケーに行くな!”と言う彼の誠実さであろう。
■上院議員候補の、誠実を装うグレッグ・スティルソン(マーティン・シーン)が実は野心溢れる男で、大統領になった際に、歴史に名を残すために敵国に核爆弾を打ち込む指示を予知した彼が、身を呈して行った事は、哀しいが崇高である。
彼はその前に主治医に対し”ヒトラーが産まれる前に、あの時代に行ったら・・。”と喋るシーンがあるが、彼は自らに備わった能力を、人間の幸の為に使ったのである。
<ラストシーンは哀しいが、ジョニー・スミスがグレッグ・スティルソンが表紙に乗った雑誌のタイトルが”彼は終わりだ。”と書かれ、更に彼がピストル自殺をする姿を予知夢で観て、且つての恋人サラに対し”これで、良いんだ。”と告げるシーンは沁みるのである。
今作は、自動車事故により5年間昏睡状態だった男が目覚めた時に身に備わっていた能力を身を呈して不幸を防ぐヒューマンサスペンスなのである。>
切なくて面白い
クローネンバーグ監督の初期のヒット作。
ストーリーは「事故が原因で5年間眠っていた主人公。5年ぶりに目が覚めるとすでに婚約者は別の男と結婚していて意気消沈。しかし主人公には未来が見える能力が何故か生じており、そこから思いがけないことが起っていく…」というもの。
通常の作品では超能力は『便利な力』として登場することが多いのですがこの映画では違います。
クローネンバーグ監督は以前にも「スキャナーズ」という作品で超能力者が登場しますが、それでも超能力は必ずしも便利な能力ではなくて、能力者自身を苦しめる能力として登場してます。
具体的にはテレパシーは人の心を読める能力として便利に描かれることが多いですが、スキャナーズでは他人の心が無尽蔵に聞こえ、主人公を苦しめる能力として描かれています。
本作デッドゾーンでも主人公は未来を見ることができるのですが、必ずしもそれを良い能力として描いていません。
そこが素晴らしいと思いました。
おススメの一本。
悲しきサイキッカーの物語。
勧められアマゾンプライムビデオで鑑賞。
クローネンバーグ作品を見るのはフライ、ビデオドローム、スキャナーズに続いて4作目。
一見すると地味な印象ながら、一本の映画として無駄なく纏まっていて面白かった。
まず何と言っても目に留まるのは、そのオープニングのクールさだ。
印象的なタイトルロゴの表示。
若きクリストファー・ウォーケンの登場。
今後の展望を予感させる恋人とのデート。
彼の人生を大きく変える事故の発生。
昏睡状態からの目覚め。
…とここまでを僅か10分で描き切る。
怒涛の展開にあっという間に惹きつけられた。
クローネンバーグ映画というとバイオレンス描写が衝撃だが、本作はそういった表層的要素を超えた深い魅力に溢れていた。
人間ドラマ、SFとして実に硬派な内容であり。原作がスティーブン・キングというのも頷ける。しかしこれをビデオドロームと同時並行で作ってたというのだから驚きだ。
主人公を取り巻く環境の変化。
彼自身の精神の変化。
これらがストーリーの中核となるわけだが、これは"肉体の変容"を描いてきたクローネンバーグだからこそ丁寧な描写に成功したのだと思う。
彼にとって肉体の変容も精神の変容も同一のテーマなのかもしれない。
主人公役はクリストファー・ウォーケン。
彼の若く悲しげな佇まい、どこか不健康そうな中にも見える信念。物言わぬ彼の存在感が、本作の切ないストーリーをより印象的なものにしているのは確かだろう。
本作が残酷なのは、未来に起こる惨劇を見通す事が出来ながらも、それを阻止するには自分自身が行動を起こすしかない点にある。
そしてその行動にはリスクが常に付き纏う。
もし自分にそんな能力が備わっていたら…そんな事を想像せずにはいられない。
監督と原作者と主演と悪玉の役者二人の強い癖
クリストファー・ウォーケンの魔力✨
誰にも見えず抗えない未来という死角(デッドゾーン)
勝手にキング原作映画特集その6。
今回は『デッドゾーン』。
ドラマにもなってたし、タイトルをご存知の方も多いのでは。
交通事故で5年もの間昏睡状態だった男、ジョニー・スミス。
彼が眠りから覚めた時、結婚を約束していた恋人は
彼の元を去り、両親は年老い、そして彼自身は……
『触れたものの過去や未来が見える』という
人間離れした能力を身に付けていた。
5年の歳月で失ったものの重さと、自分を
化け物扱いする周囲の視線に苦悩するジョニー。
ある日、スティルソンという議員候補の政治集会に
偶然居合わせたジョニーは、彼の手に触れた瞬間、
その男がもたらす恐ろしい未来を目撃してしまう——
主演は『ディア・ハンター』の名(怪)優C・ウォーケン、
監督は『スキャナーズ』の鬼才D・クローネンバーグ。
なぁんかひとクセありそうな組合せ。
だが本作、監督の個性が良く出た映画とは言い難い。
まず、監督特有の人体損傷描写(人間をひとつの
物体として捉えるような冷たい観察眼)は殆ど無い。
原作がメロドラマ的要素が強い事もあり、いつもの
低体温な雰囲気も控え目。また、原作の内容を
そつなくまとめあげてはいるものの、そのぶん
各エピソードや人物の掘り下げは淡白で情感に乏しい。
彼もまた原作再現で精一杯になってしまった感じなのかなあ。
しかし、それら不満点を払拭するほど
素晴らしいのが主演ウォーケンのナイーヴな演技。
理不尽な運命へのやり場のない怒りを他人にぶつける弱さ、
自身の力に怯えながらも、それを人の為に活かそうとする優しさ、
とうの昔に失った恋人と再会した後で見せる涙。
彼は高潔なヒーローではなく、あくまで僕らと同じ小市民だ。
主人公の元恋人を演じたブルック・アダムスの可憐さ、
スティルソン議員候補を演じたマーティン・シーンの
狂犬の如き演技など、脇を固める役者も見応え十分。
あくまでいち原作ファンとしての意見ですが、
この配役はほぼ完璧に近いかと。
演技・演出は手堅く、先にも述べた人物描写と展開の
淡白ささえ無ければ、傑作に成り得た惜しい映画かな。
切ないラストも忘れ難いサスペンスドラマです。
ところで劇中、ウォーケンが本作の16年後に
出演する映画『スリーピー・ホロウ』の原典
について言及するのはただの偶然かしら。
<了> ※2012.05初投稿
レトロな質感のB級ホラー
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