劇場公開日 1963年3月1日

天国と地獄のレビュー・感想・評価

全66件中、1~20件目を表示

4.5ソコから見上げたホシ

2025年4月28日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

興奮

知的

斬新

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どん・Giovanni

5.0こんな傑作観たことない

2025年4月27日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

ドキドキ

映画は社内クーデターの会議から始まる。企業ドラマだ。
主人公の息子が誘拐される。誘拐ドラマになった。
刑事がやってくる。犯人から電話がかかる。サスペンスの始まりだ。
被害者の苦悩。重厚な人間ドラマが展開する。
犯人と警察。息の詰まりそうな頭脳戦が続く。
犯人の裏の裏をかこうとする警察の必死さ。
上流階級に対する下流からの反発と憎悪。
どこからも眺め上げてしまう超豪華な邸宅。
エトセトラ、エトセトラ。
後に大物となる俳優たち。当時すでに大物だった名優たち。驚くことに、出演者全員が全員、芝居がかすこぶるうまい。
有名な桃色の煙。湾岸署の青島刑事は後年、現場でこれを見て「天国と地獄だ」と呟いたが、私はこのシーンで逆に「踊る大捜査線だ」と独り悦に入った。
エンタテインメントの要素をこれでもか、これでもかと詰め込み、後の映画に多くのモデルを供与した名作は、現実の事件の犯人にも影響を与えた問題作となる。
時間も内容も圧倒的な映画だ。

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ぶっち

5.0サスペンス以上にヒューマンドラマとしても傑出、見返すたびに新たな発見に息をのみますね。

2025年4月16日
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鑑賞方法:映画館

興奮

驚く

ドキドキ

惜しまれつつ25年7月27日(日)閉館を迎える丸の内TOEIさんにて「昭和100年映画祭 あの感動をもう一度」(3月28日(金)~5月8日(木))と題した昭和を彩った名作42本が上映中。本日は黒澤明監督『天国と地獄』(4K版)を鑑賞。

『天国と地獄』(1963年/143分)
間違いなく日本映画史上最高のサスペンス作品。
身代金受け渡しシーンに実物の特急「こだま号」を1編成チャーターした大掛かりなロケ、同車両内でわずかに開く換気窓から身代金を投げ落とす有名なトリック、身代金が入った鞄を燃やすと桃色の煙が立ち上がるパートカラーの演出、公開後誘拐事件が多発し国会でも問題視、後日刑法が一部改正されるなど後世に語り継がれるエピソードに枚挙にいとまがない本作ですが、改めて見直すと脚本の素晴らしさ、登場人物の描かれ方がとにかく秀逸ですね。

特に間違って自身の運転手の息子を誘拐され、当初は自身の野心のため身代金支払いを逡巡、拒む製靴会社の常務・権藤金吾(演:三船敏郎氏)が徐々に人間らしさに取り戻し、身代金の支払いに応じていく心変わりを丁寧に描く過程は、ありふれた清廉潔白、聖人君子ではなく人間臭く、観客が共感できる人物像として描かれている点は出色。

権藤の対置として、自身の保身や出世のために権藤と敵対する重役らに懐柔、彼を裏切るエリート秘書・河西(演:三橋達也氏)の人物設定も実に上手く、サスペンス以上にヒューマンドラマとしても傑出しています。

その他配役も犯人を追う冷静沈着だが内に熱いものを秘める戸倉警部(演:仲代達矢氏)、いかつく情に厚い田口部長刑事(演:石山健二郎氏)はじめ、ひとり一人の刑事の描かれ方も個性的で丁寧に描かれ、敵対する重役たち(演:伊藤雄之助氏、中村伸郎氏、田崎潤氏)も実に憎らしくて良いです。
なかでも誘拐犯・竹内銀次郎(演:山崎努氏)の狂乱した迫真の演技は、本作で山崎努氏が本作で一躍注目を浴びたのも納得、鮮烈なラストシーンですね。

ヘドロまみれのドブ川に映し出させる竹内のファーストカットも「これぞ黒澤明」という見事な演出、見返すたびに新たな発見に息をのみますね。

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矢萩久登

4.5丘の上とバラック街のあいだで

2025年4月13日
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怖い

興奮

1963年公開の黒澤明『天国と地獄』を、今年閉館する丸の内TOEIにて初鑑賞。この映画館は1960年開館、まさにこの作品と同時代に誕生している。僕の生まれる前の映画だが、戦後の高度経済成長期に生じた社会の分断を、鋭く、そして強烈に映像化した作品だった。心の奥に“心象風景”として、これからも深く残り続けるだろう。

物語の舞台は横浜。主人公・三船敏郎は靴メーカーの重役。戦後復興の波に乗って、当時年10%を超えるような、今では考えられない経済成長の時代に、職人から出世し、横浜を見下ろす高台に建つ瀟洒な邸宅の主人となった。
彼が住む丘の下には、バラック街が広がっている。天国と地獄。この地理的な高低差がそのまま社会階層のメタファーとなっている。同じ街なのに、上から見下ろす風景と、下から見上げる風景はあまりに対照的だ。

現代なら、高層マンションの最上階とその足元のスラムをドローンで切り取るような構図になったかもしれない。だが、あの家が一軒家であるからこそ「天国の住人」としての象徴性が際立つのだ。そのリアリティが抜群だった。

僕が上京したのは昭和の最後。あの時代も、いや平成に入っても、東京にはこの映画で“地獄”として描かれたような戦後のバラックや安アパートがまだまだ残っていた。僕も最初は、風呂なし・トイレ共同・エアコンもない木造アパートに住んでいた。だからこの映画は、遠い過去の物語というより、忘れかけた自分のこれまでとも重なる現実を描いたと感じられた。

そして思う。近年のアメリカ大統領選などに見られる、経済の繁栄から取り残された人々と、“意識の高いリベラルな人々”との対立。この映画は、それを60年前の日本で、すでに描いていたのではないかと。

主人公の三船も、強烈な出世欲だ同時に、儲け主義よりも“良い製品”を作ることを大切にする倫理的ビジネスマンであり、同時に高い道徳感を持つヒューマニストとして描かれる。しかしそれでも、地獄との対話は成立しない。

この映画のもう一人の主人公である地獄の住人は、殺人に対してすら罪悪感が希薄だ。その背景は映画では何となくしか語られない。ただ、現アメリカ副大統領JD.ヴァンスの『ヒルビリー・エレジー』を読むと、貧困の中に育つことで、努力などでは超えられない認知の違いが生まれることが見えてくる。

この作品は、犯罪事件の物語だが、善と悪の対立ではない。“天国”と“地獄”という住む世界の違いがもたらす断絶を描いた物語だった。黒澤はその構造的問題を、すでにこの時代に見通していたのかもしれない。

古い映画は自宅で集中して観るのが難しい。けれど、丸の内TOEIのような場所でこそ、その時代の空気ごと体験することができる。この夏の閉館まで昭和の名作を上映してくれるようだから、できる限り足を運びたい。

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ノンタ

4.5舞台劇の重厚さと誘拐犯追跡のサスペンス映画が合体した黒澤現代劇の傑作

2025年4月11日
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泣ける

悲しい

怖い

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Gustav

5.0刑事ドラマの真髄を見た!

2025年4月2日
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知的

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ratien

4.5人間の生きる価値は、社会的地位や金銭にはないとの想いをひしひしと感じる作品の完成度の高さに…

2025年4月2日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

キネマ旬報では、
今村昌平の「にっぽん昆虫記」に
第1位の座を譲ったものの、
この年の第2位に選出された逸品。

多分、4度目位だろうが、テレビ放映を機に
「野良犬」「悪い奴らはよく眠る」
に続いて再鑑賞。

黒澤監督は“麻薬”への拒絶反応と
戦後記憶の残照が強いのか、
犯人がそのブツを求めてドヤ街を歩き回る
シーンが少し長過ぎる印象と、
犯人が特定出来ているにも関わらず、
被害者への同情的な意味合いで
犯人をより重い罪への誘導する捜査手法
なんてあり得るのだろうかとの点では
疑問を感じたものの、
この作品の完成度の高さには
感服するばかりだった。

私は、黒澤映画とは
ヒューマニズムとエンターテイメントの
見事な融合芸術と見ているが、
この作品では、格差社会に反発して
犯行に及ぶインターン医師が、
貶めるはずの靴会社重役が
運転手の子供の身代金を払ったことにより
世間から賞賛を受けるという
思惑通りとはいかない犯人が受ける
皮肉が効いたストーリー展開等々、
脚本家グループの深い洞察を感じる共に、
人間の生きる価値は、
社会的地位や金銭にはないとの
黒澤監督の想いもひしひしと感じる
鑑賞となった。

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KENZO一級建築士事務所

3.0話がなかなか進展しないからちょっと長い

2025年4月1日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

三船敏郎扮するナショナルシューズ常務権藤金吾のところへ3人重役が押しかけ、会社の女性用の靴がデザインが古すぎるとか丈夫過ぎるとかコストがかかりすぎるとか文句を言い放った。

まあ会社を思う前向きな動きだね。一部内部抗争がありそうな気配だね。しかし権藤の子供がさらわれ脅迫電話が来た。話がなかなか進展しないからちょっと長いね。捜査の細かいのはまあ良いとして、肝心な権藤には間に合わなかったようだね。

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重

4.0映画終活シリーズ

2025年3月25日
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鑑賞方法:VOD

1963年度作品
なんやろ、最後の黒澤作品の初見として、楽しみしてたけど…
前々年「用心棒」、前年の「椿三十郎」が、素晴らしい過ぎて…
黒澤作品は勿論、三船敏朗の時代劇が好きやな〜
でも、面白ろかったで

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あきちゃん

5.0衝撃のラストに頭抱えた

2025年1月7日
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難しい

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吹雪まんじゅう

4.5【”丘の上の瀟洒な二階建ての家に住んでいる男を見て、丘下の貧しきアパートに住んでいた男が思いついた凶事。”誘拐犯を追い詰める捜査陣の執念の姿を描いた社会派サスペンス映画の逸品。】

2024年8月23日
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鑑賞方法:VOD

怖い

知的

難しい

 ・戦後の混乱期の昭和を舞台にした作品であり、今作がきっかけで誘拐罪の量刑が改正された事は、学生時代の授業で知ったものである。

 ・何とも退廃的な、後半のヘロイン中毒者がたむろするヘロイン窟の重いシーンの数々や、ラスト、捕まり死刑宣告を受けた犯人を演じた若き山崎努氏の貧しさ故の鬱屈が爆発した狂的な演技と彼の強がりを憐れみの眼で見るナショナル・シューズの元重役・権藤金吾とが刑務所の金網を隔て対峙するシーンも凄い。

・更に言えば、二人の未来を暗示するような”ガシャーン!”と二人の間に降りるシャッターの金属音は重い余韻を残す作品である。

<今作を真似て、多数の誘拐事件が発生したそうであるが、この作品を観ていると”俺も出来るのかもしれない・・。”という狂的な思いを誘発するが如き、重厚な作品である。
 恐ろしい作品であるが、そういう意味では敗戦の雰囲気を色濃く漂わせるこの社会派作品は、矢張りサスペンス映画の逸品であるのだろう。>

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NOBU

4.0日本のサスペンス映画の傑作

2024年4月24日
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鑑賞方法:映画館

興奮

知的

日本映画発祥の地・京都のほぼ中心辺りにある京都文化博物館は、京都にまつわる映画フィルム原版を約800本所蔵し、テーマ企画に沿って館内のフィルムシアター(170席)で毎日上映しています。
先月、“アウトローなヒーローたち・現代劇篇”というテーマ企画で上映された、日本映画史に残る本作を観賞しました。

言わずもがなの、日本三大巨匠の一人にして世界的名匠・黒澤明監督のサスペンス映画の傑作です。2時間23分の長編であり、多種多様な登場人物が出てくるにも関わらず、巻頭からラストまで全く息を抜く間もなく一気に観終えてしまいました。
誘拐事件発生と身代金授受という、三船敏郎扮する製靴会社専務・権藤視点の一人称で進められる前半は、室内劇で恰も舞台劇のようであり、事件がひと段落した後の犯人を追及していく後半は、謎解きミステリードラマに一変し、主体が警察官たちに移行しひたすら地道に現場を辿っていきます。ここでは捜査責任者・戸倉警部を演じる仲代達矢の沈着冷静にして鋭い慧眼ぶりが、圧倒的存在感でドラマをリードしていきます。前半の主役だった権藤は気力体力を使い果たしたことにより存在感が希薄になり、もはや脇役で終始します。
この前半後半の切り替え、ドラマの焦点の移行、サスペンス性の切り口の変換は見事です。

前半は、登場人物たちの欲望と憎悪、怒りと悲しみが諸に曝け出され、裏切りと出し抜きが露見していき、舞台が権藤邸内に限定されていたこともあって、常に緊張感が漂い不安感を煽られていました。最近のように極端な寄せアップは殆どなく、ほぼミドルレンジでフィックスかスローな移動カットで、時に長回しも用いられ、観客は落ち着いて観られるので、却ってスパイラルに不安が増幅されながら先行きへの興味関心が募っていきます。
後半に、この興味関心が謎解きミステリーの渦中に放り込まれ、作者に弄ばれます。戸倉警部の切れ味鋭い捜査追及は、ぐいぐい観客を惹きつけ興味関心をどんどん掻き立てていきます。
実はこの時点で観客には、山崎努扮する犯人の正体を仄めかしているのですが、そこに辿り着き追い詰めていくプロセスの快刀乱麻の痛快さに、観客は益々酔わされていくのです。
犯人の暮らしぶりに映像が移ると、途端に彼の寄せアップの長回しが増え、この人物の閉塞感と虚無感、聡明さと暗さを顕著に漂わせます。既に観客を、犯人の動機の解明への関心に導いているのです。

個性的な名優たちが、刑事や新聞記者、街中の一般人という端役で短い時間のみで、次々と登場しますが、彼ら彼女たちが強く印象に残る演技を披露していくことで、本作にドラマの重みと厚みを備えさせてくれました。その結果、息苦しいまでの緊迫感と重苦しい空気感を、最初から最後まで観客に与え続けたのだと思います。

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keithKH

5.0天国と地獄がまさに黒沢天皇の手の中!

2024年1月4日
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鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

知的

確か一度ノーカットで衛星放送で観てるのですが
覚えていなかったシーンがたくさんあって
やはり映画館で見ると集中力が違うよなあ〜と改めて感じました。

前半舞台劇の様な犯人のとのやりとりシーンでは
何よりも三船敏郎の圧倒的な存在感!
他人の命と我が身の成功を秤にかけて苦悩するところは
室内のシーンが続くのにまったく飽きずグイグイ引っ張って行かれる。
で、後半は仲代達矢のスマートで淡々としながらも
結構えぐい捜査手法を選ぶ警部と地道な刑事たちの捜査のシーンが
徐々に犯人に迫って行く姿もハラハラして目が離せない。

で、同じ様な警察捜査物の名作「砂の器」の犯人の動機に
ぼろ泣きした身としては、
どんな動機なのか?とドキドキしたのだけど〜〜

これは、一種の不条理映画なのかな〜〜

でも、自身の成功より命の重みを選んだ権藤さん(三船敏郎)と
自身の満足のために命を軽んじた犯人との対比は
やっぱり心にグッとくるし、
時代が変わっても普遍的なものに落ち着いたことが
やはりこの映画を名作にしてるんだろうな〜〜。

撮影過程でよく言われる、
身代金の受け渡しの鉄橋のそばの家の
二階が邪魔だからと、二階を外して撮影したとか
まあ、天皇と言われた頃の
黒沢パワーが映画全面に溢れかえってます。

とにかく面白い!!見ものです!!

あと、余談ですが冒頭の靴の話〜。
あんな簡単に手で引っ張って壊れる様な靴、
絶対売って欲しく無いわ。(by靴屋)

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星のナターシャnova

5.0後世に誘拐事件模倣が実際に行われた恐るべき映画 魅力が列車と現金を...

2023年12月9日
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鑑賞方法:映画館

知的

後世に誘拐事件模倣が実際に行われた恐るべき映画
魅力が列車と現金を渡すシーン、推理のシーン、尾行のシーンと見どころ満載
最後に犯人の山崎努が三船相手に震えながら告白するところ良かった
三船の背中で終。犯人が存在があやふやになって三船のことが羨ましくて悔やんでる自覚してるかどうかわからないが全身のすごい震えからよく伝わってきた

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チャン・パー

4.0タイトルなし

2023年9月12日
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ouosou

5.0面白い!

2023年8月14日
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鑑賞方法:VOD

 自宅で動画配信サービスを利用して視聴しました。

 踊る大捜査線の中で青島刑事が「天国と地獄?」というセリフがあり、そんな映画があるんだなぁと思い続けて20年近く、やっと本作を見ました。

 最初の30分はほぼ権藤邸でのやり取りですが、刑事たちと同じ顔になってしまうような心苦しい時間が続きます。そこから特急こだま号での身代金の受け渡しでの緊迫感からの少年の解放、犯人の登場、捜査シーンへの移行、ここまでの流れがとても綺麗で、完璧だと思いました。
 捜査シーンに入ってからも、随時、権藤の描写を入れることで刑事たちの事件解決への執念が強化されているように見えました。また、捜査本部での刑事たちの報告や、情報を足で集めていく様子も不思議と見ている側を映画の中に没入させていくように感じました。煙突からの色の付いた煙のシーンは、やはり印象に残りますね。
 罪を重くさせるために警察は犯人を泳がせるわけですが、ここからの描写がまた秀逸ですね。警察からの嘘の手紙を受け取った直後、薬を入手するために行ったクラブ、薬が効くかどうか黄金町で試すシーン、実験後タバコの火を権藤からもらうシーン、腰越のシーンと、犯人の感情と性格が見て取れるようになっている構成、素晴らしいですね。自分としては、犯人が歩きながらクラブを見渡すシーンのカメラワーク、黄金町の皆がゾンビのようになっている状況、そこで実験する人間を選んでいる様子、腰越の別荘で犯人が花壇から姿を現すシーンが印象に残っています。どのシーンもサングラスがとてもいい味出してますよね。
 自分としては、警察が報道陣に1,000円札の偽情報を流すように相談しているシーンの記者の「それじゃ空いたところで、ナショナル・シューズを叩くか」というセリフも結構印象に残ってます。
 また、見終わってから自分でも少し驚きましたが、見ている間、犯人の犯行動機をほとんど気にせずに見ていました。普通、犯行動機は重要な要素になってきますし、そういう描写を入れざるを得ないと思いますが、ほとんどない気がします。あえて言えば身代金要求時の電話で小出しにされていたぐらいでしょうか。不思議です。

 面白かったです。

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kame-pukupuku

5.0おもしろい!

2023年7月26日
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どんどん捜査が進んでいくのがとても面白かった。
古さもなく、とても見やすいです。

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ムーン

5.0天国から地獄へ!! 製作から60年、いまだにこれを超える刑事ドラマを見た事がない。

2023年6月11日
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横浜の高台の一軒家に住む社長宅。

最初から約60分間、ほぼ一度も屋外に出ず誘拐事件のドラマは進行する。そこにあるのは、恐ろしい緊張感と犯人に関する謎。密室での時間経過ではあるが、被害者の地位と周囲の思惑が見える。舞台的であり、飽きない。信じられないくらい上手いと思う。
続いて刑事の捜査が始まる。文字通り足で犯人の姿を追い詰めてゆく。その執念は軽くは感じない。

犯人の姿が初めて映しだれた乗り替わりの上手さにゾクっとした。

衛生状態の良くない場所に住む犯人は、高台に住む社長というだけで憎む。動機はそれだけだ。ただ犯人は苦労して這い上がった社長だとは知らない。天国の生活をしている社長と、うだるような地獄に居る犯人。社長は地獄に堕ちようが犯人の要求をのんだ。

観る人を飽きさせない黒澤明監督の妙が散りばめられていて、自身も映画の制作を楽しんでいる。こちらは、その手に乗せられて時間を忘れて物語に入り込む。

三船敏郎の抑えた演技。
睨みを効かせた演技をする仲代達也。
新人、山崎努の意外な貫禄。
その他、虎視眈々と社長と重役の座を狙う社員。
汗と埃にまみれ捜査をする刑事たち。

驚きの現金受け渡し。
身代金は特注の吉田カバンを使った。
撮影の邪魔になると、家の一部を解体。
様々なきっかけとなる音楽の使い方。
有名な煙突の煙のシーン。
犯人のサングラスに映る風景。

1960年頃の横浜市内、酒匂川あたり、茅ヶ崎海岸、江ノ島、腰越漁港、今も昔も高級住宅地!!開発の始まった頃の腰越住宅、極楽寺あたり、江ノ電などのロケ地を楽しめる。

結果を知っていても何十回も観た。
これからも何十回も観るだろう。

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星組

5.0格差のサスペンス

2023年5月21日
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鑑賞方法:DVD/BD

高度経済成長期に、日本で格差が生まれて、営利目的に子供を誘拐
する事件が起き始めた時代。
金の無い者が、金持ちの子供を誘拐するのならば、話が単純だが、
そこは「世界の黒澤」であって、別の切り口で描く。
詳しくはネタバレになるので、書かない。
完全にサスペンス作品で、映画を見終わった時に、心に「ズンッ!」
とした重みのある物を残す。
後に、人間群像のサスペンスより、犯人捜しの
2時間ミステリー・テレビドラマが流行ったのは、心に重荷を置いて
終わるサスペンスより、犯人が逮捕されたのでハッピーエンドな
ミステリーの方が、大衆に受け入れられ、日本人が重さより軽さを
持って終わる作品を求めたから。
格差が、より広がる現代こそ、こういったサスペンス作品が必要だと
思われるが…

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777

5.0忘れじの黒澤作品

2023年5月12日
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黒澤の現代劇では、やはりこれがトップの代物かと思います。実際、本作を観たことをキッカケに、私はクロサワ・ワールドに没入することとなりました。

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Bluesboy
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