劇場公開日 2024年12月27日

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「封建的因襲に押し潰されていく男女」菊豆(チュイトウ) バラージさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5封建的因襲に押し潰されていく男女

2025年5月24日
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鑑賞方法:映画館

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チャン・イーモウ監督が『ハイジャック 台湾海峡緊急指令』に続いて、『紅いコーリャン』では助監督を務めていたヤン・フォンリャン(楊鳳良)と共同監督した中日合作映画(今は無き東光徳間が出資に参加している)。

初公開時に観たが、封建的な因襲に押し潰されていく男女を描いた、とにかく陰々滅々とした気の滅入るような映画で、陽性の爆発力にあふれていた『紅いコーリャン』に比べるとかなり落ちる出来だと感じた。それは今観直しても変わらない。チャン・イーモウによると『紅いコーリャン』は中国の理想を描いたのに対して、本作は中国の現実を描いた映画とのこと。

ただ『紅いコーリャン』では構成要素の一部という印象だったコン・リーの存在感がぐっと前面に出てきたのは印象的で、そういう意味ではコン・リーを初めて「女優」として認識した作品だった。ただ、それはそれとして今になって観直すと主人公はむしろリー・パオティエン(李保田)のほうで、コン・リーはトップクレジットながらヒロイン役という印象。李保田は確かコン・リーの中央戯劇学院時代の担当教官だったんじゃなかったかな。

また原作では農家だった舞台を映像的に映えるために染物屋に変更し、また実際には存在しない大型染色道具が創造されているとのこと。このあたりはいかにもチャン・イーモウ。さらに『紅いコーリャン』に続き、当時の中国ではギリギリのエロティシズム描写も試みられている(日本人から見ればずいぶんおとなしいもんだが)。しかしと言うべきか、それゆえにと言うべきか、中国国内で賛否両論の大論争となった『紅いコーリャン』に続いて、本作はとうとう国内上映禁止になってしまったらしい。

バラージ
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