劇場公開日 2024年12月27日

「テーマの重さや暗さに反した染物の真紅や黄色など鮮明な原色が実に効果的で印象深い作品」菊豆(チュイトウ) 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0テーマの重さや暗さに反した染物の真紅や黄色など鮮明な原色が実に効果的で印象深い作品

2025年1月29日
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鑑賞方法:映画館

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新文芸坐さんにて『艶やかなる紅の世界』と題したチャン・イーモウ(張芸謀)監督の初期作品の特集上映(25年1月24日~29日)開催、未配信の『菊豆(チュイトウ)』(1990)、『紅夢』(1991)を鑑賞。

『菊豆(チュイトウ)』(1990)
2008年北京オリンピック開会式および閉会式の総監督も担ったチャン・イーモウ(張芸謀)監督の3作目。
サディストで前妻二人を死に至らしめた初老のもとに売られてきた若妻が、純朴な初老の甥と逢瀬を重ね、甥との間に身ごもり、そして破滅していくストーリー。
本作でも監督とコンビを組んだコン・リー(鞏俐)が嫁いだ矢先の儚げな少女から、初老の男性が脳卒中で身体不自由になると復讐の炎をたぎらせ彼を追いつめる憎々しい悪女まで振れ幅の大きな役を好演。華奢でなく肉感ある体躯と可憐さと性悪女を演じ分ける彼女は日本では京マチ子氏と重なりますね。
中国の古の因習、男女の肉欲、因果応報などをテーマに描きながら舞台を染物屋に設定。
テーマの重さや暗さに反した染物の真紅や黄色など鮮明な原色が実に効果的で印象深い作品、この色彩の豊かさは次回作以降でも継承されますね。

矢萩久登