菊豆(チュイトウ)のレビュー・感想・評価
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ワルい子にもほどがある
1987年の紅いコーリャンに次ぐ、1990年のチャン·イーモウ監督作。
原作は農家らしいが染物屋に変更したそうだ。
目の付け所が素晴らしい。
ヤク(牛)に廻させる大きな歯車の仕掛けも実際は染物屋には必要のない創作物だそうだ。
染物屋の建築構造も天然の撮影セット。
奴隷同士の密通はノゾキ穴がきっかけ。
金で買われたとはいえ、菊豆(コン・リー)の昭和テイストがたまらない。
マダム楊は夜毎悲鳴とも絶叫ともつかぬ声をあげる。天青でなくとも気にならざるを得ないよね。
半身不全になった男には菊豆と天青のマグワイアを見せつけてやることがもっとも効くかな〜と思いましたが、それほどの描写は無理な中国映画。日中合作と言えども、お金を出しただけというのもまぁ良かった気がします。
私が幼かった頃、隣の家は染物屋で、長い反物を針のついた竹ひごを等間隔に張って干していました。とても芸術的な反物の染物。私が小学校に上がった頃には廃業してしまいましたが、隣のチャコお姉ちゃんにはいろいろ遊んでもらい、いろいろ感謝しています。
天白という名前を決めた楊一族の長老は裏目に出てしまいましたね。あそこまで因果応報でなくても良かったような気がしますが、真っ赤な反物と炎は映像作品としてインパクトありました。あの子どもはいかにも惡そうでした。怖かった。紫色の学生服でデビューした藤正樹そっくりでした😎
期待度◎鑑賞後の満足度◎ ギリシャ悲劇を思わせる濃密な人間の業と二人の運命が転んでいく先が読めないサスペンスフルな展開に圧倒される。見事な映画だ。中国映画には時々驚かされる。
①チャン・イーモウの演出は『紅いコーリャン』に比べ遥かに円熟している。
菊豆の運命を最後まで粘り強く描いて間然とするところがない。
②罪の子である“天白”が、まるで事のいきさつを知っていたかの様に、自分をこの世に生み出す元となった仮の父が血のように赤い染め桶で溺れ死ぬのを笑いながら眺め、実の父を同じく血のように赤い染め桶に放り込むんだ後に殴り殺す。その上に墜ちていく赤い布。ただ、母にだけは手を出さない。それどころか男とまぐあう母を侮蔑した男を刃物を持って何処までも追いかける。
濃密な愛憎劇に息を呑む。
③
苦界のような結婚
菊豆(コン・リー)が最初から最後まで哀れだった。貧しさゆえの結婚で金で買われてきた。求められているのは、男子を生むこと、染め物屋の仕事と家事をすること。今までの二人の妻は子どもが生まれないが故に(理由は夫)暴力振るわれ虐待され死んだんだろう。同居する夫の甥・天青も染物の仕事をする。情けないおじさんに見えたが、菊豆と心と体を交わす間柄になってから頼りになる男の顔と身体になっていった。
美しく染められた色とりどりの布が高い天井の上から何枚も吊るされて、空気の動きと共に優しく揺れる様子は言葉に表せないほど美しかった。染料を入れた溜池がある木造の工場には屋上もあって、子どもにとっては危険でありながら楽しい遊び場みたいだった。戸外の場面も多く、野原、川、里山などの自然の映像も素晴らしい。染め物屋の二階にある夫婦の寝室だけは地獄だった。
天青との間にできた息子の天白が何を思っているのかわからなかった。母を大事に思っていることは伝わる。どちらの男を息子は憎んだのだろう?そもそも息子にとって大人の男、父親なんて不要で邪魔者なのかも知れない。母が苦労し他人から後ろ指差され辛い思いをした原因はすべて男だから。
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