菊豆(チュイトウ)のレビュー・感想・評価
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幸福を求める人間は勝手で愚かなのか、問う。
金で妻を買う老人
老人の妻である女
染物工房で働く男の甥
そして生まれた子
小さな村と工房
狭い空間の物語
暴力と性と憎しみ
愛は意外な方向へ
受け継ぐ本性
始まりにも
終わりにも
幸福感は無い。
俯瞰で映される家の瓦
見上げた布色の素朴さ
憎しみとは無縁の風景
あの子は父から何を受け継いだのか。
※
百年前、🇨🇳、男尊女卑、奴隷制
1920年代の中国🇨🇳、🇯🇵だと大正時代。
染め物屋を営む楊金山という老人が
先に二人妻をいたぶり殺し、
三人目を買って子作りに励み当然若い妻である。菊豆。
二人も殺して罪に問われないことに驚く。
後にセリフとして出て来るが、
妻が夫を殺すと重罪となるようだ。
だが、なかなか子供ができないからと毎夜妻を拷問する。
責任は妻だけか⁉️
同居人として金山の甥天青がいる。
独身40男で金山に拾われた為働き詰めの生活。
この染め物屋、わりと注文入るのに働くのはこの三人。
合間に金山の厳しい声が飛び交う。
水浴びする菊豆を馬屋の板塀に穴を開け覗く天青。
菊豆は後にそのことを知り一旦は穴を塞ぐが、
また穴を開けたままにする。
身体中アザだらけとなり耐えきれない菊豆は、
天青に身体を委ね、逢瀬を続け懐妊する。
無事男の子を出産し、自身の子と思う金山は喜ぶ。
楊家の長老が唯一の跡取りであり、天白と名づける。
金山の留守を狙って逢瀬を重ねる菊豆と天青。
ある日山中で倒れた金山は半身不随の身体に。
以後、
菊豆と天青は家の中では寝室以外夫婦のように振る舞う。
金山は半身不随で寝床に寝たまま。
外に出て菊豆と天青が睦まじく過ごしている隙に、
連れて来た天白が家に帰ってしまう。
天白が染め物の池に藁を突っ込んで染めようと
夢中になっている後ろから這って来た金山が、
池に落とそうと手を出そうとした瞬間、
天白が金山を見つけ、 「父ちゃん❗️」と叫ぶ。
喜んだ金山は天白を連れ散歩に。
(桶の中に入り車椅子のように2本の棒で漕いで移動)
仲良くなった天白と金山だったが、
ふとした弾みで天白が引っ掛けたロープで、
金山が池に落ち‥‥。
知ってか知らずにか、うすら笑いする天白。
喪主は天白。
菊豆と天青は、50回葬列の前に立ちはだかり行手を
遮らねばならない役回りだった。
いつのまにか菊豆と天青の仲が噂になり、
天青は、染め物屋の家から出なければならなかった。
しかし、二人は、野っ原の隠れ場所を見つけては逢う。
天白と同じ年頃の青年が母菊豆の逢瀬の目撃談を
とうとうと話す様子を
見た天白は、中華包丁を持って追いかける。
天白は、金山を実の父と思っていたので、
母菊豆につきまとう天青が大嫌いで口をきかない。
案ずる菊豆は、
いつか天白に本当のことを言おうと考えていたが。
天白は、隙を見て天青を染め物の池に突き落とし、
母が実のお父さんよ、と叫ぶのも聞いてか聞かずか、
木の棒で殴りつけ溺れさす。
赤い🟥染め物の池にスルスルと落ちる🟥布。
菊豆がつけた炎🔥の🟥と相まって。🟥🟥🟥🟥🟥
封建的因襲に押し潰されていく男女
チャン・イーモウ監督が『ハイジャック 台湾海峡緊急指令』に続いて、『紅いコーリャン』では助監督を務めていたヤン・フォンリャン(楊鳳良)と共同監督した中日合作映画(今は無き東光徳間が出資に参加している)。
初公開時に観たが、封建的な因襲に押し潰されていく男女を描いた、とにかく陰々滅々とした気の滅入るような映画で、陽性の爆発力にあふれていた『紅いコーリャン』に比べるとかなり落ちる出来だと感じた。それは今観直しても変わらない。チャン・イーモウによると『紅いコーリャン』は中国の理想を描いたのに対して、本作は中国の現実を描いた映画とのこと。
ただ『紅いコーリャン』では構成要素の一部という印象だったコン・リーの存在感がぐっと前面に出てきたのは印象的で、そういう意味ではコン・リーを初めて「女優」として認識した作品だった。ただ、それはそれとして今になって観直すと主人公はむしろリー・パオティエン(李保田)のほうで、コン・リーはトップクレジットながらヒロイン役という印象。李保田は確かコン・リーの中央戯劇学院時代の担当教官だったんじゃなかったかな。
また原作では農家だった舞台を映像的に映えるために染物屋に変更し、また実際には存在しない大型染色道具が創造されているとのこと。このあたりはいかにもチャン・イーモウ。さらに『紅いコーリャン』に続き、当時の中国ではギリギリのエロティシズム描写も試みられている(日本人から見ればずいぶんおとなしいもんだが)。しかしと言うべきか、それゆえにと言うべきか、中国国内で賛否両論の大論争となった『紅いコーリャン』に続いて、本作はとうとう国内上映禁止になってしまったらしい。
禁断の恋と子供の心境
ドロドロと美しさ
テーマの重さや暗さに反した染物の真紅や黄色など鮮明な原色が実に効果的で印象深い作品
新文芸坐さんにて『艶やかなる紅の世界』と題したチャン・イーモウ(張芸謀)監督の初期作品の特集上映(25年1月24日~29日)開催、未配信の『菊豆(チュイトウ)』(1990)、『紅夢』(1991)を鑑賞。
『菊豆(チュイトウ)』(1990)
2008年北京オリンピック開会式および閉会式の総監督も担ったチャン・イーモウ(張芸謀)監督の3作目。
サディストで前妻二人を死に至らしめた初老のもとに売られてきた若妻が、純朴な初老の甥と逢瀬を重ね、甥との間に身ごもり、そして破滅していくストーリー。
本作でも監督とコンビを組んだコン・リー(鞏俐)が嫁いだ矢先の儚げな少女から、初老の男性が脳卒中で身体不自由になると復讐の炎をたぎらせ彼を追いつめる憎々しい悪女まで振れ幅の大きな役を好演。華奢でなく肉感ある体躯と可憐さと性悪女を演じ分ける彼女は日本では京マチ子氏と重なりますね。
中国の古の因習、男女の肉欲、因果応報などをテーマに描きながら舞台を染物屋に設定。
テーマの重さや暗さに反した染物の真紅や黄色など鮮明な原色が実に効果的で印象深い作品、この色彩の豊かさは次回作以降でも継承されますね。
何はともあれ美しい映画
色めくも厳しい悲劇だった
シネマスコーレの特集上映「張芸諜 チャン・イーモウ 艶やかなる紅の世界」から2本目。
鮮烈な色彩と妖艶なエロティシズム。チャン・イーモウの世界にどっぷり浸かってしまった。
1920年代の中国、金で買われるかたちで染物屋に嫁いだ菊豆(コン・リー💕)。主人は前妻ふたりを虐待し殺した。菊豆も毎晩の折檻でアザだらけになった。
そう、主人は変態ドS野郎だった。
同居している主人の甥・天青に救いを求め不倫関係に落ちた菊豆。天青の子を身ごもり主人の子として出産。
主人が脳卒中で倒れて形勢逆転。
主人をいたぶりセックスに明け暮れる日々。
しかし二人目を身籠り地獄に落ちた。
不倫が許される時代ではなかった。
最後は親たちの修羅場を見てきた我が子の手で、、、
これは厳しい悲劇だった。
救いのない悲劇だった。
紅シリーズ第二弾
この作品でも、コン リーの見せ方が上手いです。
画面を垂直方向に動く紅い布が、
不気味なムードを感じさせていました。菊豆と天青が結ばれて時に、スルスルと落ちる布が二人の運命を予見させ、天青の死の場面でも紅い布が落ちていました。
ワルい子にもほどがある
1987年の紅いコーリャンに次ぐ、1990年のチャン·イーモウ監督作。
原作は農家らしいが染物屋に変更したそうだ。
目の付け所が素晴らしい。
ヤク(牛)に廻させる大きな歯車の仕掛けも実際は染物屋には必要のない創作物だそうだ。
染物屋の建築構造も天然の撮影セット。
奴隷同士の密通はノゾキ穴がきっかけ。
金で買われたとはいえ、菊豆(コン・リー)の昭和テイストがたまらない。
マダム楊は夜毎悲鳴とも絶叫ともつかぬ声をあげる。天青でなくとも気にならざるを得ないよね。
半身不全になった男には菊豆と天青のマグワイアを見せつけてやることがもっとも効くかな〜と思いましたが、それほどの描写は無理な中国映画。日中合作と言えども、お金を出しただけというのもまぁ良かった気がします。
私が幼かった頃、隣の家は染物屋で、長い反物を針のついた竹ひごを等間隔に張って干していました。とても芸術的な反物の染物。私が小学校に上がった頃には廃業してしまいましたが、隣のチャコお姉ちゃんにはいろいろ遊んでもらい、いろいろ感謝しています。
天白という名前を決めた楊一族の長老は裏目に出てしまいましたね。あそこまで因果応報でなくても良かったような気がしますが、真っ赤な反物と炎は映像作品としてインパクトありました。あの子どもはいかにも惡そうでした。怖かった。紫色の学生服でデビューした藤正樹そっくりでした😎
期待度◎鑑賞後の満足度◎ ギリシャ悲劇を思わせる濃密な人間の業と二人の運命が転んでいく先が読めないサスペンスフルな展開に圧倒される。見事な映画だ。中国映画には時々驚かされる。
①チャン・イーモウの演出は『紅いコーリャン』に比べ遥かに円熟している。
菊豆の運命を最後まで粘り強く描いて間然とするところがない。
②罪の子である“天白”が、まるで事のいきさつを知っていたかの様に、自分をこの世に生み出す元となった仮の父が血のように赤い染め桶で溺れ死ぬのを笑いながら眺め、実の父を同じく血のように赤い染め桶に放り込むんだ後に殴り殺す。その上に墜ちていく赤い布。ただ、母にだけは手を出さない。それどころか男とまぐあう母を侮蔑した男を刃物を持って何処までも追いかける。
濃密な愛憎劇に息を呑む。
③
苦界のような結婚
菊豆(コン・リー)が最初から最後まで哀れだった。貧しさゆえの結婚で金で買われてきた。求められているのは、男子を生むこと、染め物屋の仕事と家事をすること。今までの二人の妻は子どもが生まれないが故に(理由は夫)暴力振るわれ虐待され死んだんだろう。同居する夫の甥・天青も染物の仕事をする。情けないおじさんに見えたが、菊豆と心と体を交わす間柄になってから頼りになる男の顔と身体になっていった。
美しく染められた色とりどりの布が高い天井の上から何枚も吊るされて、空気の動きと共に優しく揺れる様子は言葉に表せないほど美しかった。染料を入れた溜池がある木造の工場には屋上もあって、子どもにとっては危険でありながら楽しい遊び場みたいだった。戸外の場面も多く、野原、川、里山などの自然の映像も素晴らしい。染め物屋の二階にある夫婦の寝室だけは地獄だった。
天青との間にできた息子の天白が何を思っているのかわからなかった。母を大事に思っていることは伝わる。どちらの男を息子は憎んだのだろう?そもそも息子にとって大人の男、父親なんて不要で邪魔者なのかも知れない。母が苦労し他人から後ろ指差され辛い思いをした原因はすべて男だから。
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